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33話 オウガはでかいのじゃ!

 「オドレイお嬢様!!危ないですよ!!」


 そう聞こえるや否や、目の前の『オウガ』なる化け物に数本のナイフが突き刺さる。


 「ガアアッッ!!??」


 さしもの『オウガ』も胴や腕に10cmのナイフが刺さり、もがき苦しんでいる。


 はて、それにしても私は今まで何をしていたのか。先ほど下衆がかざした光を見た後、しばらくの記憶があいまいであるが、とりあえず危機的な状況であると理解できた。


 「ロジータか! 助かったぞ!」


 周囲を見回し、入り口のドア付近に完全武装のロジータを見つけると礼を言っておく。


 ロジータはオレイユと同じく黒いローブのようなものを纏い、20cm程の大型ナイフ……もとい短剣を利き手に、もう片方の手にはどこで拾ったのか、恐らく館の警備の者と思われるごろつきの男の襟首をつかんでいる。引きずってきたのだろうか。


 「くっ、やはり投げナイフでは……!!お嬢様っ。そいつから離れて下さいっ!!」


 しかしオウガもその図体通りに豪奢な魔物であり、数本の投げナイフごときでは倒す事はできない。怯みから回復したオウガはすぐに行動を始める。


 動きを見せたオウガに対し、ロジータは手に持っていたナイフを一旦収めて両手で、引きずっていたごろつきの男をオウガに投げ飛ばす。


 「し、しにたくなああああああ!!」


 それが恐らくその者の最期の言葉であろう。宙を飛ぶ男はオウガの目の前まで飛ぶと払いのけられ、すごい勢いで壁に叩きつけられる。


 思わず目をそらしてしまう程のむごさではあるが、これでどうにかミシェルを引きずって後方へ下がる事ができた。


 このミシェルなる者、どうやら手籠め用に薬を使われて足腰が立たぬようであった。


 そうこうしている内に、投擲を終えたロジータがオウガとの距離を詰めて格闘戦を挑んでいる。


 短剣であの巨体と戦うとか無謀か!? と叫びたくなるが、そこは異界の格闘術。既に手負いのオウガの攻撃を舞うかのように避けて、攻撃を行っている。


 「ぐがああああ!!?」


 攻撃の毎にオウガの傷が増えている。しかし腕が中心で、肝心の胴や頭にはオウガの攻撃が激しくてまだ到達できていないが、戦いの流れは明らかにロジータに分があると言える。


 「傷が浅いなぁ……もう少し出血させて弱らせないとか」


 ロジータがそうボヤく。その口調と様子からも、普段と変わりないロジータであった。



 「あ、あのっ……」


 後方へ下がり、その様子を見ていたが、妹の剣の師範であり今回の騒動の張本人であるミシェルが弱弱しく訪ねてくる。


 「なんじゃ?」


 「た、戦わなくて、いいの……?」


 ふむ、確かに最もな問ではある。


 「そうなるとお主に何かあった時に困るのじゃ。あ奴としてもむしろ一人で戦った方がやり易かろう」


 「あ、貴方達は一体……?」


 事もなげに答えた事に、ミシェルは驚く。


 「私か? 私は……」


 「おい、ロジータ。ちょっと下がれ!」


 名乗りを上げようとした所、出入り口のドアが開かれ、そこには弩を持ったマウテリッツ殿と数人の護衛が現れる。どうやら粗方片付いたようであった。


 ロジータは瞬時にオウガより飛びのくと、伯の号令の下、矢が放たれる。


 「ぐがああぁぁあ!!?」


 今度は頭や足等に矢が深々と突き刺さる。


 「よし、殺れ!」


 「了解!!」


 そう伯が言うや否や、ロジータは跳躍し、短剣をオウガの脳天へ振り落とす!


 既に矢が突き刺さり、かねてからの腕などの傷からの出血等で、反応が鈍くなったオウガは、これを対応する事も出来ずに、頭に突き刺さるのを見ているだけであった。


 「流石ロジータだ。ほぼ一人でオーガを殺るとはなぁ」


 次矢を装填させている伯は、そう呆れつつも笑ってみせる。


 「ミシェル!? 大丈夫!?」


 そう言って駆け寄る銀の髪の少女。服装がミシェルの色違いであったり、顔つきが似ている事から、こやつが姉のライノーラらしかった。


 「お姉ちゃん!? なんでここに!?」


 案の定、ミシェルは今の状況をうまく呑み込めていないようであった。


 かくいう私も、何故姉のライノーラがいるのかが分からなかった。否、大方助けに来た所罠に掛かって囚われていたのだろうと察しはつくが。


 「ようオドレイ嬢。無事だったみてぇだな」


 そう言ってこちらに近づく伯。


 「お主も息災で何よりなのじゃ。その分だと大方片付いたかの?」


 「まぁな。それより、見た処一人斬ったみたいだが」


 「ぬっ、しまった。ここのボスを取り逃がしてしまったのじゃ!」


 今思い出した。確か私はバイラスと対峙し、気が付いたらオウガが出て来てその間にバイラスが逃げたのであった。


 その旨を伯に伝えると


 「そうか、なら今頃オレイユが捕捉してる頃だな。こんな事もあろうかと、オレイユは逃げる幹部クラスを捕らえるか殺すように言っておいたからな」


 と伯は言ってみせた。


 「そういう事なのじゃ。ミシェルにライノーラ殿。ここを一旦出て安全な所で沙汰を下す」


 かくして私、オドレイの初陣……と呼ぶにはいささか違和感のある戦いはこうして終わった。


 とりあえず、ライノーラはともかく、ミシェルの?の顔が印象的であるが、二人とも無事で何よりであった。


 つづく。

次回は15日を予定しています


最近1週間たつのが速い(素朴

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