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31話 そこまでなのじゃ!

 

 「くふふふ。銀仮面もこうなってしまっては最早発情したメスではないか……」


 「くっ……!まだ薬の作用が……!」


 ガストビ商会の奴隷調教施設である館の奥に、場違いな装飾が派手な大部屋があった。


 そこに、青髪のポニーテールと黒を強調した女性貴族の運動用の服装に身を包む少女、ミシェル・テリエ=モンテクッコロが居た。


 だが様子がおかしい。彼女の目の前には彼女の剣と思われる剣が落ちているが、彼女は既に息が上がっており、剣を落としている様子であった。


 既に昨日から怪しげな薬を服用され、正直立っているのがやっと状態であった。


 「くふふふふ……こうやってクスリで動けぬ小娘を踊り食うのが私の生きがいでな……!」


 男はそう笑って彼女に近づく。


 男は肥満体であり、下品な笑みを浮かべている。


 「くっ……!バイラス……!お前さえ……!お前さえ倒せばガストビ商会は……!」


 ミシェルはそうやって睨みつける。


 「くふふふ。そうだ。だがお前に何ができる? 何もできんだろうなぁ……」


 そう言ってさらに近づく、バイラス。


 来るなと言おうにもクスリの影響で最早喋る事すらできなくなってしまったミシェル。


 ガストビ商会の主、バイラスは上機嫌であった。


 なにせ、今まで幾度となく苦汁を舐めさせられてきた『銀仮面』ことミシェル・テリエ=モンテクッコロが眼前で自分に屈しようとしているからである。


 捕まえる際に、皇国始まって以来の大事件が起こってしまったが、こんな事もあろうかと南方植民地ウエストフェールから本土在住を餌に呼び寄せたゴロツキ達を使っていたのが功を奏し、ガストビ商会まで波及しないので安心である。


 そのゴロツキ達が喋るだろうが大丈夫である。既に隷下の貴族を使用して有力貴族を数人買収済みで、相応の圧力は既に掛かっている。


 そして、今、モンテクッコロ家の令嬢であるミシェルおよびライノーラとかいう姉を捕まえている。芝居の上手い腹心が今頃調教を始めている頃であろう。


 むしろ今回の事件で皇家すら射程の範囲内に入ったのではないか。と自賛すらしていた。


 いずれにしても今彼は下半身の怒りを彼女にぶつける事で忙しかった。



 「くっ……殺せ……!!」


 「くふふ。誰が殺すかっ。さあ私のものになるがいいっ!」


 そうやって手を伸ばすバイラス。


 だが……


 「て、敵襲!!うわあああ!」

 「な、なんだこいつはぁ!!? とんでもない怪力女だぁ!!」


 突如として起こった悲鳴。


 「なんだ!? 騒がしいぞ!!」


 バイラスは伸ばした手を止め、そう叫ぶ。


 「バイラス様!エドワードフの連中が攻めてきました!」


 部下がそう言って飛び込んでくる。


 「何!? こんな時にかっ!とにかく戦え!地下にいる魔物を放せ!とにかく殺せ!」


 バイラスがそう言って指示を飛ばす。


 「承知!」


 そう言って部下は出ていく。


 「くそ……まさかこのタイミングでエドワードフの馬鹿が仕掛けてくるとはな……」


 そう言って苦虫を噛みしめるかのような顔をするバイラス。


 「悪いがお前とは遊べん……な……?」


 翻ってミシェルの方を振り向くが、そこには薄いピンクのツインテールの髪に赤い外嚢を着込んで、何故か白い狐の仮面をかぶった謎めいた少女が、ミシェルの襟首をつかんでずるずると引きずっているのを目撃してしまう。


 なお彼は知る由もないが、その狐の仮面は、長安大陸の造形らしかった。正確には蠣崎幕府国からの輸出品であるのだが、彼は知る由もない。


 少女もバレた事に気づき、あっ。と言いたげに引きずるのを止める。


 一瞬、お互いの時間が止まる。気まずい空気ともいえる。


 「誰だ貴様は!?」


 その空気を破ったのはバイラスである。正気に戻ったともいえる。


 「白狐。という事にしておいてほしいのじゃ」


 少女はそう言って肩に回していた刀を抜いて対峙する。


 「銀仮面の仲間か? それともエドワードフの連中に雇われたのか?」


 ちいぃ。と舌打ちをして剣を抜くバイラス。


 「答えるとおもっておるのか」


 そう言って斬りつける白狐。


 「ちい!!」


 舌打ちをしながら迎え撃つバイラス。


 激しい剣戟に、分が悪いと瞬時に悟ったバイラスは、どうにか距離をとる。


 「覚悟するのじゃ。下郎」


 息を整える白狐。チャキリ、と刀も構え直す。


 「くふふふ……残念だが、遊びはこれまでだ」


 そう言って不敵に笑うバイラス。

 

 「ふん。死ねい!!」


 そう叫んで切りかかる白狐。


 「掛ったな!馬鹿め!!」


 そう言って、バイラスは懐に忍ばせていた遺物アーティファクトを彼女の目の前に掲げた!


 「!?」


 白狐は、その遺物アーティファクトの怪しげな光に驚く。


 「こいつは『ガラケ』という遺物アーティファクトでなぁ!様々な機能をもつ同種があるそうだが、こいつはこの光を見た奴は自我を失い、操り人形になってしまうシロモノなんですぞぉ!!!」


 「なっ!?」


 その事実に驚愕したのはミシェルであった。


 『ガラケ』それは世界神により召喚された勇者によりもたらされた道具の一つとされている。


 魔王征伐後、世界王となった勇者はガラケを大量に作らせたという神話が残っている。


 本来なら神勇教の管理下になければならない遺物アーティファクトに、ミシェルは驚愕するしかなかった。


 「ぐっ……」


 力なくうなだれる白狐。


 「くふふっ。どこの馬鹿だか知らないが、顔を見せるがいいっ。仮面をとれ」


 「……」


 何も言わず、仮面をとる白狐。


 「変な眉毛してるな。お前。名前はなんだ?言え」


 バイラスの言う通り、彼女はエルディバでは見慣れない不思議な丸い眉をしていた。


 なおどこかで見た事がある気がするミシェルだが、大変な危機的状況に絶望と驚愕が抑えられない。



 このままでは自分はおろか、この白い狐の仮面をかぶって助けに入った謎の少女までもが、この巨悪の毒牙に掛かってしまう。


 しかし、自分ではどうする事もできない。


 彼女はそのような驚愕と絶望に押しつぶされていたのであった。


 

 そして、白狐と名乗っていた少女は、俯むきながら、たしかにこう言うのであった。








 「『のぶなが』。とでも名乗りましょうか」


 つづく

次回は7月の1日になります

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