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27話 怪しさ満点じゃが、大丈夫なんじゃろうな、主様?


 「ヨハン・ベットリヒ!? お主、病な筈では!?」


 久しく聞いていなかったあの咳払いなのかなんなのかよくわからない独特の始まり方をもって、ヨハン・ベットリヒは談話室へと入ってくる。


 「んんっ。流石に3・4か月も治療に専念すれば治りますぞっ」

 

 にかり。と白い歯を見せて言う。


 いや、普通3・4か月も治療をせねばならん病って重病では。


 「とはいえ、3・4か月の闘病を強いられるとは流石に死を覚悟致しましたがね!」


 事もなげにヨハンは言う。


 「まぁ。まだお前に死なれても困るからな。薬の方を用意させたからな。良くならないと困る」


 そこにネタ晴らしとばかりにマウテリッツ伯が言う。


 そういう訳で今までヨハンが出てこなかったのは病の為であったが、それも今日までである。いや、実をいうと数か月前から回復しているという話は聞いていたから驚く事もないのだが、時が時であった。


 「して、ヨハン。おぬしはこの中々のっぴきならない時になんの用じゃ?」


 「んんっ。忘れる所でしたぞっ。オレイユ殿宛てに何故かソレガシの部屋に手紙が届いておりましたぞっ」


 私の問いに思い出したように懐から手紙を出すヨハン。お主、私が言わなければ忘れておったのか……。


 「? 何故ヨハン様の部屋にオレイユさんの手紙が?」


 疑問に思っていたのは私だけではない。クラリエルも疑問に思っていた。


 「こう、大きい声では言えませんがねっ。側室付きメイドは手紙のやり取りは検閲で時間が掛かりますが、ソレガシのような宮廷医兼錬金学者の場合は弟子などを経由すれば案外早く渡せるのですぞぉ」


 ヨハンがそう言って手紙をオレイユに手渡して告げる。


 「しかし、側室付きメイドなんぞにこんな裏技使ってまで知らせに来るなど、何やら怪しい予感がするので、ソレガシはこの辺でおいとましときますぞぉ」


 そう言ってヨハンは出ていく。奴めは妹の襲撃事件で宮中がのっぴきならぬ状況になりつつあることを肌で分かっている様子であった。


 「それにしても久しぶりに会ったが、相変わらずじゃのう」


 「ああ、そうだな」


 私の言葉にそう頷くマウテリッツ伯。


 「して、オレイユ。手紙にはなんと? というか送り主はわかるのかの?」


 「……」


 答えないオレイユに私は不信に思って再び尋ねようとするも、その際にオレイユの表情を見たが、大変難しい顔をしていた。


 「……何故これが……」


 静かに、だが深刻そうな声でそう呟くオレイユ。


 「……マウテリッツ様。いえ、オドレイお嬢様。手紙の全容としては宛先人は不明ですが、今回の事件の実行者が潜伏しているアジトと思われる地図でございます」


 そういってオレイユは手紙を見せる。


 それは、帝都の地図が描かれた手紙であった。


 いくつもの建物が描かれている中、赤い丸が付けられた建物がある。否、赤の他に青い丸も数個つけられている。


 「この地図……スラム街の地図じゃねぇか。なるほどな。確かにスラム街のここの位置なら十分あり得るが……」


 その地図をのぞき込むマウテリッツ伯は顎に手を当てて思考を巡らす。


 「だが、肝心なのは『送って来た奴』は何者なんだ? いきなりこれだけ送りつけて来るなんざ……」


 そこまで伯の言葉が止まる。


 「……なるほどな。そういう事か……」


 どういう事なのだ。なにやら伯とオレイユだけが理解しあって目だけで会話しているように見えるがなんなのだ。


 「どういう事なのじゃマウテリッツ。オレイユ。説明せい」


 その言葉に場の空気が緩和したように感じられる。


 その証拠に間のあった二人はふうと息をつく。


 「あーオドレイ嬢。オレイユが腕の立つアサシンって事は、本人から聞かされてるだろ?」


 マウテリッツ伯がそう確認を入れる。


 「うむ、聞いておる」


 私はこともなげに答える。


 アサシン。前世せんごくのよでは聞きなれぬ単語ではあるが、既にオレイユから聞かされている。


 要は暗殺特化の忍びの者である。


 暗殺特化と言えば聞こえは悪いが、要は暗殺に対しての対策も万全という事でもある。


 オレイユ(とロジータ)はその術を習得している。と本人から打ち明けられた際には流石に肝が冷えた。


 え? 何? 私、暗殺されちゃうの? と思ったのは内緒である。


 しかしそんな手の内を曝け出す馬鹿はいないので、一種の誓いの儀であると理解もした。事実誓いの儀であったし。


 「要するに、その師匠からのタレコミ。らしい」


 「なんじゃと? なら、なぜ」


 「何故、師匠が知っているかは分かりません。しかし、師匠がこれを私に送って来たと言う事は何かしらの意味があるという事です。 信じるに値する物です」


 何故、その師匠という者が今回襲った者のアジトを知っているのか? という謎を口に出す前に、オレイユはそう宣言する。


 「……お嬢、お嬢の疑問は分かるが、こいつは信じていいタレコミだ。少なくとも俺は信じるぜ……!」


 そう言って伯はいつになく自信に満ちた顔をする。


 「おい、俺の屋敷に行って兵隊集めとけ。それから馬の用意だ」


 そしてすぐに伯の手下に指示を飛ばす。


 「どこへ行く気じゃ?」


 私の質問に伯は笑顔で答える。


 「さっき言っていた悪党組織アウトローの知り合いの所へだ。行くか?」



 つづく。


次回は6月の3日を予定しております

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