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26話 襲った奴は市中引き回しの刑なのじゃ!

 「そうとは言い切れない? どういう事なのじゃ?」


 私は疑問に思う。


 側室とはいえ、天下の皇家に手を出したのである。


 「この件の関係者は一族郎党、知人や近所住人までひっ捕らえて、拷問の後市中引き回しの末に張りつけ処刑が相場であるとされていたが……?」


 「ご近所さん大変過ぎませんかお姉さま」


 「いや、これぐらいはせねばならんじゃろう。なにせ馬車に弓でもって襲撃したのであるから……」


 「まぁ襲撃された連中と命令した奴は確実に処刑されるのは確実だがな」


 私がそう言ってる間にマウテリッツ伯が割って入る。


 「確かにこいつは大事件だ。それこそ皇家側室の娘が襲われたんだ。近衛騎士団および諜報部は総力を挙げて潰しにいくさ。それは間違いはないんだがな。『時間』が掛かるんだ」


 マウテリッツは頭を掻きながらそう言って見せる。


 「時間が掛かる? どういう事じゃ」


 「まず、襲った連中のアジトが分かってない事。これはまぁ諜報部の連中が何か知ってるとは思うがな。ただ、諜報部と近衛騎士団は仲が悪いんだ」


 マウテリッツはそう残念そうに言う。


 さて、先ほどから近衛騎士だの諜報部等、前世せんごくのよでは聞きなれぬ単語ではあるが、要するに近衛騎士団は馬廻衆であり、諜報部は忍びの者の事である。


 馬廻衆が嫌なら禁軍・錦衣衛きんいえいとも好きに呼べばいいだろう。とにかく近衛騎士団とは生まれの良い家や武勇に長ける者を己の護衛として就かせてる組織である。


 忍びの者に関しても乱破らっぱ素破すっぱ・歩き巫女等様々な名称がある。ちなみに我家いまがわけ素破すっぱ派。だがここでは忍びの者として一括りにする。


 確かに、成り立ちからして生まれの良い馬廻衆と出自すら不明な忍びの者では仲良くできる理由はあまり少ないであろう。ましてや前世せんごくのよとは違って身分の差が決定的であるからして、尚更であろう。


 「情報伝達があまり上手く行かずに時間が掛かる。という事かの」


 「そうだ。特に育ちのいい近衛騎士団はこういう一斉摘発には向いてねぇ。そうこうしている内に連中はトカゲのしっぽ切りで襲った連中を切り捨てて悠々と逃れるだろうよ」


 「そんな……」


 ヴィヴィアーヌがそのような絶望に似た声を出す。


 天下のエルディバ皇家の側室が白昼堂々襲われたのである。前代未聞の事件であろう。全てが総力を挙げてこれを懲らしめるべく動くのであろうが、それでは遅いという事であろう。


 そうこうしている内に治安大臣が部下たちを引き連れて血相を変えてやってくる。


 これからヴィヴィアーヌらは事情聴取を受ける事となるらしい。それと治療である。


 ヴィヴィアーヌらは無傷であるが、ロジータが少なからず手傷を負っている。痺れ薬が塗られているといっておるが、それにしてもそれで笑顔を見せているのは軽く超人であると思う。


 さて、これからどうするべきであろうか。私としては妹が世話になったので襲撃の一つでもしてやりたいが、事が事なので大人しくすべきであろう。アジトも分かっていないし。


 マウテリッツ伯もそう言っておるし。


 「……まぁ。アテがない訳じゃねぇんだがな……」


 「それはアレかの? お主の屋敷を出入りしているあのドワエルフの男絡みの線かの?」


 「……おい、オドレイ、嬢。言っとくが……」


 一瞬、呼び捨てになりかけた。恐らく私が独断で何かをしようと心配で釘をさすつもりであろう。


 「わかっておる。ただ『もし』お前様に『悪党組織アウトローに知り合い』がおるならば、お前様が今進めている『例の計画』を利用して手伝わせることができるのでは。と考えておったのじゃよ」


 芝居めいてお前様呼ばわりしてみる。案の定、その言葉に伯は表情を変えている。ぽかんとした顔である。


 「お主とヨハンが何やら儲け話をしているのは五年前から分かっておる。大方『便所の土』を集めて一儲けしようという話であろう?」


 「は~……こいつはまいったぜ。まさかもう知ってるとはなぁオイ。まぁ、ヨハンの事だ。当たり前と言えば当たり前か……」


 流石の伯も、私が伯の進める計画を知っている事に驚いている。


 「それで伯殿。この手の事に詳しい『知人』はおるのか?」


 「居るには居るんだがな。というか、今回の『相手』を日ごろから気にくわないっていう奴がいるんだがな」


 「おお、それではそ奴に頼んで早期に決着を付けれるではないか」


 「まぁそれはそうなんだがな……」


 マウテリッツ伯はそう言って話をつづける。


 「だが、妹君いもうとぎみのミシェルって奴の居場所までは分からねぇ。いや、それ以前にミシェルが銀仮面って事になると不味いんだよなぁ。悪党組織アウトローだし」


 「そもそもその銀仮面ことミシェル氏のやった事は自業自得。助ける義理もなかろう?」


 私の問いに、伯は申し訳なさそうに言う。


 「モンテクッコロは俺のダチ公……友人でな。友人の娘見殺しには、ちょっとな……」


 なるほど、確かにそれは見殺しにはできん。


 しかしではある。


 「友人の娘をミシェルって奴と呼ぶのは良くないと思うのじゃ」


 「ああ、流石に急な話過ぎて名称が出てこなかった」


 等と会話している間にも時は過ぎていく。



 このまま何もできずにただ手をこまねいているだけであろうかと思った矢先、状況が動く出来事が起こるのであった。



 「ンンッ!!! 皆さま、お元気でございますかな!」


 つづく

大分掛かりましたが、なんとか出せました。


次回は27日です。今度こそ早めに書きます。

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