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25話 ええい!妹よ!訳を話せ訳を!!


 「ええいっ!一体何が起こったというのじゃ!」


 私は最初、妹ヴィヴィアーヌが誘拐されたと聞いたが、即座にヴィヴィアーヌが否定してきたという事態に思わずそう叫んでしまう。


 「正確には私は『ついで』に誘拐されかけた。というのが正しいみたいですわっ姉上」


 ヴィヴィアーヌが慌てた口調で言う。


 見れば髪こそ乱れているが、特に異常はないようである。


 ヴィヴィアーヌの御付きの者も涙目でクラリエルにあれこれ話をしているようである。


 「ついで? ええい、訳が分からぬ。天下のエルディバ皇家側室の次女が『ついで』とは一体どういう事なのじゃ!」


 側室とはいえ大陸随一の国。エルディバ皇家の人間に手を出すとは一体敵は何者なのか、というか『ついで』とは一体どういう事なのか。


 「オドレイ様。話はロジータより伺いました。状況を1から話しますが、話が長くなりますがご了承ください」


 そう言ってオレイユがいつもの涼しい顔で割って入る。


 「うむ、オレイユ、説明を頼むのじゃ」


 「はい。では……。……時にオドレイ様。今帝都で貴族や商人や裕福な家を狙った人さらいが横行している事をご存知でございましょうか?」


 うむ、聞いた事はある。なんでも当初は貧困層で横行していたが、近日は富裕層にも飛び火していると聞いた事はある。


 「クラリエルやマウテリッツ殿から聞いた事はあるが……それが?」


 「では、その人さらいを防ぐ為に『銀仮面』という者が出没しているという話は?」


 「よくヴィヴィアーヌが得意げに話をしているから分かるのじゃ。人さらいの賊を懲らしめるとかいう奇怪な輩なのじゃろう?」


 「姉上、銀仮面様は奇怪な輩ではありませんですわ!銀仮面様は悪を懲らしめる義賊ですわ!」


 私の言葉に即座に否定してみせるヴィヴィアーヌ。襲われたというのに元気そうでなりよりである。


 しかしその銀仮面なる奇怪な輩、他の狼藉を懲らしめる為に横合いから殴りつけているだけにしか見えない為、あまり信用ができない輩であるが、見ての通りヴィヴィアーヌはファンになってしまっている。


 「その人さらいと銀仮面と今回の妹の誘拐未遂。一体どういう事なのじゃ? ヴィヴィアーヌが銀仮面ではないのは確実じゃが、まさかミシェル・T=モンテクッコロ殿がその銀仮面なる奇怪な輩とかいうのか?」


 その言葉にオレイユは表情を変える。



 「流石オドレイ様。まさにその通りです。ヴィヴィアーヌ様の剣の師範の一人たるミシェル・T=モンテクッコロ様こそが、今巷を騒がしている銀仮面なる義賊なのです」


 「な、なんですってえ!!!」


 その言葉に一番驚いたのは他ならぬヴィヴィアーヌであった。


 何かにつけて銀仮面銀仮面と言っていただけに、まさか自分の剣の師範の一人であるミシェル氏が慕っている銀仮面であるとは思ってなかったようである。


 「それは本当ですの!? オレイユ!」


 「はい、ロジータが襲っていた賊の言葉に不信を抱いて即座に尋問した所、そのような事が分かったようです」


 「ロジータが!? あの戦闘の時によくそんな暇がありましたの! 矢が何本か刺さってたというのに!」


 ヴィヴィアーヌがそう驚愕して叫ぶ。



 いわく、襲撃時の際、ヴィヴィアーヌとミシェル一行は馬車に乗ってミシェル邸へと向かっていた。


 そして突如、賊に矢を放たれ、煙玉を撒かれて襲撃をされてしまった。


 ロジータはヴィヴィアーヌだけは逃がそうと必死に戦い、こうして逃げおうせた訳である。


 ヴィヴィアーヌの私にとってのクラリエル的な御付きの者が助かったのは完全に本人の運である。ロジータにとってヴィヴィアーヌこそが命に代えてまで守る存在であるからである。


 「やー。とっさに御者を盾に矢を防げてよかったです。矢には痺れ薬が塗られてて、家畜用ではないとしてもあれ程の量は流石に危なかったですからねー」


 ハハハと無邪気に笑うロジータ。


 「でもどう考えても側室とはいえエルディバ皇家の人間がいる馬車狙うとかありえないから、不思議に思って無理してでも事情を聞こうと頑張った甲斐がありましたよ。そしたら連中、最近巷を騒がしている人攫い集団のガストビ商会で、銀仮面がヴィヴィアーヌ様のご友人であり剣の師範であるミシェル様らしいって事がわかりました」


 「ガストビ商会? そりゃ南方植民地ウエストフェールから来たレグザック商会の裏の顔じゃねぇか」


 ロジータの供述にマウテリッツが反応する。


 「それは誠なのか?」


 その反応に私はマウテリッツの方を向く。


 「ああ、レグザッグ商会は表向きは南方植民地ウエストフェールの輸入品を扱って裁いてるんだが、それは表向きの話で、裏社会じゃあガストビ商会という名前で南方植民地ウエストフェール産のヤバイ物を捌いてるっていうのが本業なんだとよ」


 「ふうむ。なるほどの……。その銀仮面ことミシェル氏は、そのヤバイ物を売りさばくガストビ商会を懲らしめていた為にガストビ商会に目を付けられていたという訳か……」


 マウテリッツの言葉に私が考察を続ける。


 「しかし、襲撃とは大胆だな。どっから湧きやがったんだ?」


 「賊はどうやら地下大下水道を通って来たようです。丁度襲われた場所が大下水道の出入り口付近でしたし」


 「あー。なるほど。大下水道は貧困街にも伸びてるからすぐにズらかれるっていう寸法か。こりゃ厄介だな」


 マウテリッツ伯が渋い顔をして頭を掻いてみせる。


 「厄介? どういう事じゃ? 敵が分かったのだから今すぐにでも妹が世話になったとお礼しに行けるのではないのか?」


 私としてはすぐにでもそうしてやりたいのだが……。


 「残念ながらレグザッグ商会の商館は分かってもガストビ商会のアジトと支部は分かってねぇんだ。レグザッグ商会自体はしっかりと法に則ったまっとうな商売をしているだけに乗り込む訳にもいかねぇしな」


 そうマウテリッツ伯が言う。


 「しかし!このままでは確実にミシェル様の身に危険が及んでしまいます!」


 ヴィヴィアーヌが懸命に発言を行う。


 「まぁ話題の正義の銀仮面様なんだから、ひどい目にあうだろうな……ミシェルって奴……」


 「自業自得ではあるが、しかしかと言って捨て置く訳にはいくまい」


 なにせ妹の友人なのであるからして、このままにしておくのは目覚めが悪い。


 「いや、しかし。そもそも天下のエルディバ皇家に手を出したのじゃぞ? 近衛騎士団が黙っている筈がない筈じゃぞ?」


 知らなかったとはいえ、知らなかったでは許されぬ相手に手を出した訳である。もうガストビだかレグザッグとか知らぬが、運命は決まったようなものではないか? という旨を話す。


 「まぁー……それはそうなんだがな。それがそうとも言い切れねぇみてぇでなぁ……」


 マウテリッツはそう申し訳なさそうに言う。




つづく

次回は五月の20日を予定しております。

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