表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/115

24話 勝てるように精々頑張るのじゃ!

 

 「このままでは奴には勝てぬ」


 なにやら不可思議な夢を見たその日、とりあえず皆が集まっている談話室にてそう告げる。


 皆、手元に茶やコーフィ。茶菓子などがあるが、まっすぐ私を見てくれている。


 「今から1か月後、斉国の大使館にて毎年恒例の初夏の将棋大会が行われる。そこにかのフリードル・

ブランデル・ライネーリ=ヴェルヘールが参加するというのもわかっておる。

 そこで奴と再び相まみえなければならない。だが、今のままでは奴には勝てぬ」


 私がそこまで言って見せるとクラリエルが手を挙げる。


 「先日頼まれていた帝都中の将棋ができる喫茶店でフリードル伯……じゃなくてまだ男爵でしたね。が来ているかどうか、来ているならどのように勝っているかを調べた書類がこれとなっています」


 そう言ってクラリエルから紙の書類をもらい受ける。


 前世せんごくのよでの再利用された紙ではなく真っ白な紙に書かれていたソレは、フリードル男爵(まだヴェルヘルム家の当主は健在でありその息子であるフリードルは男爵である)が帝都中のあらゆる将棋ができる喫茶店で強者を求めて、あるいは、マウテリッツ伯の言うような初心者狩りと言われる行為を繰り返しているのが分かった。


 「それには可能な限りどのような勝ち方をしたかの詳細が記されていますが、如何せん将棋がある喫茶店自体が少なく、対戦記録……じゃなくて対局記録を残している喫茶店は数件くらいしかないのでお役に立つか……なので店の記録以外にも常連客の話も多数盛り込んでいます」


 そう控えめに言うが、実にわかりやすくまとめられている。聞けば使いの者と手分けして制作したというが、それでもただただ凄い。


 しかし、それとは別に驚くべき事に、なんとこの世では酒場もどきのような公共な場所でも対局記録を付ける風習がある!!という事である。


 対局記録は基本、前世せんごくのよでも御前試合くらいしかつけない。なにせそのほとんどが友人との私的な対局な訳だからである。

 

 だからこそ、喫茶店という不特定多数の人間が行き交う場において対局できること自体が、私としては珍しく、驚愕に値するのである。しかし喫茶店は煙臭くはある……。


 「でかしたクラリエル!!」

 

 私はある程度読んで、これが奴の将棋の癖を知る手がかりになると理解し、クラリエルを褒める。


 「いえ、お役に立てて光栄です」


 照れるクラリエル。可愛い。


 「姉上、わたくしも姉上と共に盤上で戦えるよう、尽力いたしますわ」


 「うむ、ヴィヴィアーヌも精々(せいぜい)頑張るが良い」


 妹のヴィヴィアーヌ(今日は発音がうまく言えた)は馬の速度で私と張り合う位威勢が良いが、実はこういう将棋等の卓上遊戯も中々筋がいい。文武両道は良い事である。


 「精々(せいぜい)……?」


 いかん、ビビアーヌが精々(せいぜい)の真の意味を理解しかねている!


 それというのも、この国での精々という意味は、あまりよくない。


 説明すると長くなるが、前に皆で劇を観に行ったが、その際に悪役が「フハハハハ!せいぜい頑張るがいい!!」と高らかに言っていた事から、あまりよくない使い方らしい。


 精々という意味には『たかだか』等の意味と共に『できるだけ』『精いっぱい』『力のかぎり』という意味があるのである。この国の辞書にも書かれていたから間違いない。


 その旨をビビアーヌに伝えると大層驚かれた。それどころかマウテリッツ伯もよく知ってるなと舌を巻く程であった。やはり精々という言葉はよくない意味であるらしい。


 「ええい、そんなに驚くでないっ褒めるでないっっ」


 流石オドレイ様と皆が褒めるが、中々どうしてこそばゆい。



 「ヴィヴィアーヌ様。そろそろお時間です」


 「あら、もうそんな時間?」


 そんな中、ビビアーヌのメイドのロジータが時間を知らせる。


 ビビアーヌは最近、最近できた年上の貴族の娘とよく遊んでいる。否、名目上は剣術の手ほどきを受けている。


 14歳の娘で、名前はミシェル。 ミシェル・テリエ=モンテクッコロと言ったか。土地名はあるんだろうが分からぬ。ミシェル氏は類まれな剣術の才を持ち学園一だとされている。


 そう、14歳なので学園の授業があるのだが本日は休みであり、手ほどきを受ける為にミシェル氏はこの城の鍛錬場へ来るのである。


 ……共に訓練するのは1時間程度であり、さぼって街中に遊びに行ったり、ミシェル氏の屋敷へ遊びに行ったりしているのをよく見受けられる。今日もそうなるであろう。


 余談であるが、そのミシェルには姉がライノーラという眼鏡の冷淡そうな女であるとビビアーヌが言っていた。そちらはテリエ家を継ぐ為、ライノーラ・モンテクッコロ=テリエという事になる。


 このライノーラがミシェル氏に似ている。というか眼鏡かけて大人びた感じであるとビビアーヌは興奮しながら言っていたから名前は覚えている。


 そんな訳でビビアーヌはロジータと共に退席する。


 その後、マウテリッツ伯と将棋の話やロセロの話、およびどうすれば囲碁が流行るのだろうか、そういやこの王宮から出される大量の残飯があるから勿体ないよね。捨てる前になんかこういい感じにして売れないかな等の話で盛り上がった。やっぱりこのマウテリッツという男、金目の話はイけるクチであった。



 そんな時であった。



 ヴィヴィアーヌが誘拐されたという話が飛び込んできたのは。



 「姉上っっ誘拐されたのはわたくしではないです!」


つづく。

続きはちょっと再編する必要性が出たので未定。『次回』は5月1日あるいは6日になる予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=82310962&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ