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今川転生伝 〜41歳のおっさんだけど異界に転生したので、れっつ☆えんじょい。なのじゃ〜  作者: テト式
第1章 え!?この状態からでも入れる保険があるんですか!?から始まる異世界転生★
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12話 力が欲しいのじゃ…!弓を引くだけの力が…!欲しいのじゃ…!

 さて、あれから時は進んだ。


 現世こちらでの夏も前世あちらと同じように夏は暑い。


 ただ、前世あちらと違く、急な雨もなく、視界がなくなる程の豪雨もない。


 雨は嫌いである。古傷が痛む。

 ってなにまだ現世では受けてない傷が痛まねばならんのだ。


 そもそも、この世では梅雨自体がないようである。何日か雨が降るときが多い時期があったが1時間も経たずにやんでしまい、あれが梅雨なのかと今にしても思う事ができない程であった。


 そこから夏を迎え、暑かった。だが、蒸さなかったので、過ごしやすかった。


 枕草子にも書かれているように、こちらでも『夏は夜』であった。月はこちらでもよいものだが、前々から気付いていたが、こちらでは()()()()()()()()()()のだ。なんでも創造神が月を造りたもうた際にできた残骸の石で、夜に望遠鏡なる大きな眼鏡をくっつけた筒で覗くと、本当に石なのだ。


 望遠鏡の存在は、書庫での本で図式で知っていたが、本には筒の底の部分についてる覗き穴から覗く物と書かれていたが、不思議な事に私が覗いた物には底の方に覗き穴は付いておらず、先っぽの筒部分に覗き穴が取り付けられている物であった。なんでも最新式の望遠鏡らしい。


 話は逸れたが、昼間でも見える天の川なのだがら夜になれば、なおさらである。昼間は白い筋だか尾が引いている程度だが、夜になると輝きをもって非常に美しかった。この世ではその天の川を『星屑の尾』だの『月屑の帯』だの言われており、屑が付くのがいささかアレではあるが、月の残骸なのだから仕方ないとは思う。


 が、話を聞いてるとやはりあんな美しいのに屑を付けるのは良くないとして『きらめきの尾』ともいわれているが、ご当地名称に留まっているそうな。


 話が逸れたが、とにかく今は夏本番である。


 そう、ウナギの脂身の実験を本格的に行っているのである。


 結論から言うと『クソ暑い』と言う奴である。


 無理もない。ほぼ締め切った部屋でウナギを切っては煮ているのだから仕方ない。


 マウテリッツ伯にウナギの桶をもってもらいほぼ毎日ヨハンの研究室で実験を行っている。


 本当は母上にでも頼んで空いてる部屋を丸々私専用実験室にした方が早いのであるが「んんw流石にこちらとしては安全性からして、その案は却下しますぞ」と反対された。


 マウテリッツ伯にも反対された。5歳児が火を扱うのは良くない。との事である。(そういう訳なので毎日付き添ってもらっているとも言える)


 それにしてもこのマウテリッツ伯はよくもまぁ歳幾ばくも無いこんな童の私の意地で始めたこんな事に付き添ってくれるものである。正直自分でも引く位の情熱だと思っている。


 実験自体は案外単純である。要するに部位を決めて煮て、そして出た脂を掬ってまたその脂を煮詰めて残った脂を計るのである。


 初夏の時点で既に手順を覚えたので容易ではある。1日中やれば10匹は軽くできる。しかし残念ながらそればかりは行えないので3・4匹が限度である。実験に使ったウナギは厨房へ運ばれて料理となる。


 残った時間は勉強や遊び、後は鍛錬である。


 そう、鍛錬である。


 この体になって気が付いた事は色々とあるが、最大……とも言えなくはないが、とにかく割と重要な事に気が付いた。


 『弓が引けない』のだ。宗教上、風習上の意味ではなく、力的に。である。


 ロングボウと言われる弓を引こうとしても駄目だったのである。


 そもそも、今更言う事ではないが、弓は腕力が必要である。


 弓を引けない者は武士ではない。と鎌倉の時代では言われていた程である。


 弓馬の道、弓馬の家とあるように、弓と馬は武士の心なのである。


 いや、幼子、しかも女の身であるなら弓を引く必要性は皆無と言っていいのだが、引きたいのである。


 やはり心は男なのである。


 そういう事で私は弓を引くために日々鍛錬を行っている。


 いや、鍛錬をするのはそれだけではない。


 マウテリッツ伯がほぼ毎日、会いに来る時は菓子や菓子のようなパンを持参してくれるのだ。


 美味である。ただ砂糖を使われているだけかと思えば果実の汁や卵を使った物等多彩で、非常に美味なのである。


 食べたと思ったら、気が付いたらなくなっているのである。なにそれこわい。


 前世では甘味に全くもって無縁であったから私は気づかなかったのだ。『甘味は太る』という事に。


 ちょっとその、うん。五歳の童なのに、いささか肉が付いてきた。気がする。


 中華の魏・蜀・呉の三国の時代。になる前の話であるが、劉備が流浪の果てに劉表のところへ身を寄せている際に劉備が「昔馬に乗っていたからももの肉がなかったけど、今は乗ってないからももに肉が付きまくって悲しいです」という髀肉之嘆ひにくのたんの逸話があるが、まさにそれである。


 そんな訳で鍛錬を行っている。また、暇な時は隙を見て自主鍛錬を欠かさない。幸い、丁度いい大きさや重さの調度品があるので、それを持ったりして筋肉を鍛えたり、腕立てをしたりしている。


 子供用弓でもって弓の訓練をしたが、この世での矢筒は前世でいう土俵空穂どひょううつぼのように下方に口がない事に驚いた。また大人用の大弓も前世の大弓のように反りがないのである。


 というかそもそも弓関係で一番驚いたのは『弩』が存在し、多用されているのだ。


 弩は前世の日ノ本においては遥か昔の源頼義みなもと よりよしの陸奥守赴任に伴う奥州の乱の際までは使われていたが、朝廷による軍団のみがその製法を知るのみであり、源平の戦いの頃には既に廃れていたので、私も実物を見るのは初めてであった。


 これも中々矢を装填するのに力がいるが、一度装填してしまえば農民も容易に扱えるもので普及率で言えばこちらの方が主流であるとマウテリッツ伯は言う。


 まぁそうであろう。むしろ弓をポンポンと扱えるのではこちらが困るというもの。


 扱いにくい弓を扱ってこその武士と言える。


 とはいえ、弩の威力もバカにできない。いやむしろ下手な弓よりも弩の方が均一な威力なので中々の脅威である。農村でも十台前後はあるという。そうなると一揆の際、手こずる事になる。地方の豪族達も中々大変である。


 と、思いきや現世においては魔法なる術があるので、鎮圧は容易いとの事であるという。


 流石異界というべきか。なんでもありである。


 そもそも現世においては全てにおいて前世とは格が違いすぎるのである。


 夜、寝る前に窓から見える街の景色であるが、灯が灯っていて明るいのだ。街の輪郭が見えるのだ。これは本当に驚いた。最初蛍の光だと思っていた。動かないので蛍ではないと気づいたが、本当に驚いた。


 いや、そもそも蝋燭使いたい放題な時点で気が付くべきであった。


 駿河は当然として京の街も夜は闇である。駿河に至っては一軒でも灯が灯るようならばすぐさま番兵が駆けつける有様ともいえる。


 なので、魔法なる術がある事は驚きは少なかった。うん、少なかった。


 鍛錬場にいる教官いわく姉上達が時々魔法の練習にくるそうなので、見たければ見てよいとの事である。


 そんな訳で、私はその日に備えて休むのであった。


 つづく。


次回は2月3日に更新します


弓に関してはプリンセスなモノノケの映画を見れば分かるように、中々高等技術であり力が必要であり、訓練期間的に弩、つまりボウガンの方が有利な場合はあります。


なお作中出てきた源頼義みなもと よりよしの陸奥守の就任は1051年。源平の戦いは1180年頃なので、130年程の間に廃れたというより、多分1051年の時点で武士の台頭ないし朝廷の中央軍の時代ではなくなっていると考えるべきだと思います。

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