表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/42

白薔薇はかく語りき5

 うーむ。


 俺は頭を悩ませていた。

 ……。

 俺の魔法は、致命傷を与えられない。


 けれど、うかうかすると、俺が焼け死んでしまう。


 ……。

 ま、イメージはあまりよくないが。


「水魔法・『御鏡の盾!』」

 俺が魔法を唱えると、生み出された水が幾重にも重なり合い、亀の甲羅のように盾を形成する。「アーク」の力によって、自己修復機能もついているスグレモノだ。


 ……むこうの攻撃力は分からないが、これで互いに致命打を与えることはできなくなった、はずーー。


「竜よ、往け!」

 ヴァネッタの合図で、炎竜が俺の生み出した縦にぶつかりあう。

 ……その衝撃ごとに、水が蒸発してーー、まさかと思うが、せり負けたりなんかしてーー 。




 ばりばりばりばり!


 と、竜は俺の生み出した盾を「食い破った」。


 ……。


 そうか、こいつは。

 魔法で作られた存在だから。

 「相手の魔法を食べる」という特性を持っているのか。


 魔法の基本は思うこと、とはいえ。

 これはあまりにめちゃくちゃすぎるーんじゃありませんかい。




「ふふ、どうだイヅルよ。

 うちの愛弟子もなかなかだろう」

 エアリアルで浮いている俺のうしろに、いつのまにか師匠が立っていた。

「めちゃめちゃ強いじゃないですか。卑怯ですよ、あんなん」

「そういうな。幼いがゆえの想像力、ゆえの拙さもある。

 これがただの魔力比べなら、あいつの勝ちかもしれないが……。

 勝負はそう簡単にもいかない」

「俺が天才ってこと?」

「それはーー、まあいい、勝って証明してみせろ」





「水の精霊よ、助けてくれ!」


 俺は両手を合わせ、一心に念ずる。


 すると現れた。


 上半身裸、下半身は魚という人魚のようなグラマラスな美女が。


「……、人の技を盗むなんて!

 卑怯者!」


 ま、否定はできないが。


「行け!」


 俺の合図で人魚は飛び出し、竜と組み合う。

 ……力は拮抗しているように見える、が。


 おそらく、練度不足でこちらが不利。


 ただし、こちらは陽動。


 俺はエアリアルを何倍にも重複して自分にかけ、移動速度をアップさせる。

 これぞ「竜が倒せないなら、その召喚者を倒しちゃえばいいじゃん」作戦である。


 俺が風に乗り、かく乱して。

 ひと思いにヴァネッタを倒す。


 ……。

 どくん。


できる。

 俺は自分に言い聞かせて。


 できるはずだ。

 イメージトレーニングをして。


 できる!


 確信をもって、魔法アークを放つ!



「『エアリアル(連)・多重加速』!」


 瞬間。

 俺の魔法は、全身から空気抵抗を奪い。

 ……そして同時に、宙へと体を押し上げて。

 摩擦のない空間の中を、加速させていく!



 俺の視界から、全ての光が消える。


 すべての動きがスローモーションになる。


 ……。


 俺は、知っている。

 この世界の生き方を。

 この世界の行き方を!

 視界で捉えるのではない。

 耳から入る聴覚を。

 頬にふれる触覚を。

 ……、目には見えない「第六感」をすべてふるに活用し。




「ディアボロス!」


 俺は一瞬にして、ヴァネッタの後ろに舞い降りると、うしろから魔法を放った。



 ヴァネッタの目が、驚愕に開かれる。






「……、どんだけ丈夫なんだよ」


 俺はディアボロスを受けてもなおかつ、地に伏さない少女を見て、ため息をついた。


 俺の放った炎のレーザーは確かに直撃したはずなのに。

 ダメージは見えるものの、なんとか地面に立っている。


「……召喚のほかに、自動操縦か?

 さすがに次に打つ手が思い浮かばない」

 という俺の感嘆を、

「私の負けね」

 いやにあっさり、否定する。


「もう、魔力は尽きたわ。

 それにそっちには隠し玉がまだあるみたいだし」



 ……。

 ばれてたか。



「メアリィさまを泣かせたら、承知しないから」

「任せろ」


 と、俺は倒れゆくヴァネッタの体を支えた。


 審判が俺の名前をうたいあげた。







「ずるいですよ、師匠。召喚獣なんて」

 俺は苦笑しながら、師匠に抗議する。

「俺の時には、何も教えてくれなかった」

「うん。怠惰なお前のことだ、楽して戦うようになったらと思ってな。

 ……それに召喚というよりは、「想像術」だ。発想と実現性はヴァネッタのオリジナルだ。

 そこだけは認めてやって欲しい」


 ま、確かに。

 才能と魔力だけは一流だった。

 わずかに経験――、かすかな応用力の差で勝ったに過ぎない。



「むこうの試合も、カタがついたようだぞ。

 おそらくお前の相手は、水の魔術師――、ヴェルモットになるだろうが……」


 師匠が隣の会場に目をやる。釣られて俺もそちらを向くが……。



 ……しかし、そこに繰り広げられているのは、予想に反した光景。

 水色の魔術師は地面に手をつき、頭を下げてふるえている。たいする紫色の男は、悠然とそれを見下ろしていた。


「勝者、パスツール!」


 そして審判は。


 ……意外にも、紫色の魔術師の名前を叫んだのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ