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第三話 俺のしたいこと

 説得を終えたセシリアが俺に話しかけてきた。

 「じゃあ、ここが今からタケシが住む部屋になるから、欲しい物があったら何でも行ってね♪」

 「えっちょっと待っ」

 「そ~れ~か~ら~、明日の朝にしてほしい事があるから、早めに起きてね。」

 「じゃおやすみ」

 そういってセシリアは部屋を出てしまった。

 「・・・人の話ぐらい聞けよ・・」

 俺はそう言って布団に入ろうとするが、そこには狼が寝そべったまま放置されていた。

 (おいおい、ちゃんと連れて行ってよセシリアちゃん)

 そう思いながら、狼を地面に下ろし

 余ってる布団を掛けておいてやった。

 そうしてやっと俺は眠りにつくことができる。

 俺の長かったようで短い一日がようやく終わりを告げた。


 次の日


 「おっきろーーーーーーー」

 俺はやかましい声に反応して飛び起きた

 そこにはやけにうきうきしているセシリアと、俺の様に叩き起こされたのか、眠そうな顔して立っている狼がいた。

 「もうっ、起きるの遅っそいんだから、まったく」

 そんなこと思っていると寝ぼけた俺の手をセシリアが掴む。 

 「ほら早くぅーーはやく行きましょ」

 狼と俺を部屋から引っ張り出すと、どこかに連れて行こうとする。

 その足取りは軽く、寝起きの俺は付いて行くのが少々きつかった。

 「ちょっと待ってよ、セシリアちゃん!こんな時間にどこに連れて行くの?」

 外に出ると、外はまだ真っ暗だった。

 うっすらと日が差してる程度でまだかなり寒かった。

 一体何を考えているのか、そんな不安をよそに

 セシリアはニコニコしながら

 「それは~~着いてからのひ・み・つ」

 そう言いながら、俺と狼を引っ張りながら森の奥へ進んでいく。

 

 しばらくすると、水の流れる音が聞こえてきた。

 それは、セシリアの行こうとしてる方向から聞こえる。

 ここで初めて狼が口を開いた。

 「まったく、こんな朝っぱらから川で何するんじゃセシリア?」

 髭を引っ張られ、痛そうな顔をしながら問いただす。

 セシリアは答えない。

 そしてなぜか急に走り始めた。

 俺は急に手を引っ張られ危うく転びそうになる。

 「ちょっと、セシリアちゃん?」

 「おっおい、セシリア?」

 そのままスピードを上げ、水の音のする方へと突き進む。

 ま、まさか川に飛び込むつもりじゃ

 そう思った俺は止まろうとブレーキを掛ける。

 狼のほうも気づいたのか、足を止めブレーキを掛け始める。

 が、セシリアはとまらなかった。

 勢いに任せ、そのまま川に飛び出す。

 セシリアによって引きずり込まれるように川に投げ出される俺と狼。


 「いやっほぉーーーーーー!!」 

 

 ざっばーーーーーん


 「あははは、気持ちいいーー」

 川の中で楽しそうにはしゃぐ。

そんなセシリアとは裏腹に、

 川に落とされた俺と狼は真っ先に岸に上がろうとしていた。 

 (寒すぎる、、、早く出ないと凍え死んでしまう)

 そんな風に慌てているおれたちを見て、

 「えーー、もう上がっちゃうのぉー一緒に泳ごうよぉ」

 そういって俺の背中を引っ張る。

 その隙に、狼は陸に上がり、そそくさと帰っていってしまった。

 あの野郎、一人で逃げやがった。

 ここで俺まで逃げてしまったら、セシリアが、独りぼっちになってしまう。

 もちろん、俺にそんな残酷こと出来る訳がない。

 (仕方ない・・覚悟を決めよう)

 「はぁ・・・わかったよ、少しだけだぞ?」

 「本当!?わーい やったぁーー」

 

 そうしておれは、朝から、くっそ寒い川で泳ぐことになってしまった。 何でこんな目に(涙目)

 最初は辛かったのが、潜ったり、泳いだりしてるうちに体が暖まったのか、体の震えが止まっていた。

それどころか、寒さを感じないのだ。

これは明らかにおかしい、 もしかして能力が発動してるのか?

だとしたら丁度いい、寒さを感じ無くなって助かった。

それにしても、案外、簡単に発動するんだな、この能力。

後でいろいろ試してみようか。

そんなことを考えながら、しばらく一緒になって遊んでいると、ふと、気がつく。

 「ところでさぁ、着替えはあるの?」

 「あっ、忘れてた」

 「えっ、じゃあ、どうやって帰るの?」

 「ええっと、こ、このまま歩いて帰ろう!」

 「そんなことして大丈夫? かなり寒そうだけど」

 「わ、私は、平気よ・・・・・ックシュ!」

 なんて無責任なんだ、もし能力が無かったら確実に風邪をひいてたな。

それにしても、ちょっとセシリアの様子がおかしい様な気がする。


 よく見ると、小刻みに震えている。

顔色も良くないみたいだ、とにかく、川から早く上がらせよう。

 「無理すんなよ、早く上がろう」

 「う、うん。そうするよ、、ックシュ!!」

 川から出るため、おれはセシリアを持ち上げた。

触れてみて気付いたが、凄く冷たかった。

本人は平気だと言ってるが

ずいぶんと前から無理をしていたみたいだ。

俺たちは陸に上がった

しかし、服は濡れてしまって着替えも持って来て無い。

どうやって家に帰ろうか?

川から上がったのは良いが濡れた服がどんどん体温を奪っていく。

 俺は平気なのだが、セシリアはまずい。

 このままだと、確実に風邪をひく。

 

とりあえず、濡れた服を早く脱がないとまずい。 

あれこれ考えてると、後ろから声が聞こえてきた。

「おーいセシリア~、着替えを持ってきてやったぞ~何処にいるんじゃ~」

そこには、先ほど真っ先に逃げ出していた狼が口に服をくわえてセシリアを探していた。

「こっちだよー」

そう言って、狼のもとへ駆け寄っていった。

「やれやれ、お主は世話がやけるのぅ」

服を渡されたセシリアはその場で着替え初めた。

俺は思わず目を閉じる。そこへ

「おい小僧、お前にこれをやる」

声をかけられ、俺は目を開ける。

「セシリアと仲良く遊んでいてくれたんじゃろ?」

「こいつは、そのお礼じゃ」

狼の足元に魚が一匹と木の実が少し入れてある小さな袋が落ちていた。


「それは道具袋じゃ、そこに入っとる食糧は、好きにしてかまわん」

「あ、ありがとうございます。」

俺は戸惑いながら、袋を手に取る。

「さあ、そろそろ帰るとするか」

ずぶ濡れの俺に一切触れず、着替えを終えたセシリアを背中に乗せて歩き出す。

いろいろ突っ込みたい事があったけどひとまず置いといて、二人を見失わない様に急いでその場を後にした。



家に着くと、ようやく明るくなってきた。

日の光が差し込み、ほんのりと温かくなってきた。

俺は自分の部屋に戻り、濡れた服を脱ぎ捨て日光のあたる場所に干した。


そして、ベッドに飛び込み寝ようとした。

昨日の疲れが取れないままセシリアの遊びに付き合ったのだ、疲労は限界を迎えていた。

俺は目を閉じる。


それから数時間後


「ふぁーあ、やっとゆっくり寝むれたぁ」

俺は独り言を言いながら干していた服を取り、着替える。

そういえば、二人が見当たらない。

何処に行ったのだろう?

まあ、そのうち帰ってくるだろう。

俺は部屋に戻りこれからこっちで何しようか考えていた。

するとそこへ狼が入って来た。

「お!起きたのか、よく眠れたか?」

「ああ、おかげさまでな」

「セシリアは今出かけていてここにはおらんよ」

「あの子には料理の材料を採ってきて貰っておる」

「そうか、遊んだ後だって言うのに元気だな」

「今日は済まんかったなセシリアの我が儘に付き合わせてしまって」

「あれくらいで良いなら何時でも付き合ってやるよ」

「・・実は、お主に頼みがある、セシリアの事でな」

「大事な話も交えて一緒に話す、聞いてくれ」

真剣な眼差しでこっちを見てくる。

よほど大事な話らしい、黙って聞こう

そのまま狼は、語り始める。

「あの子はこの森を東に抜けて少し先にあるエルフ達の作った村に住んでいたんじゃが」

「ある日突然、一人の人間によって占領されたんじゃ」

「そいつは転移者じゃった、炎を自在に操れる能力をもっておって、村の中から奇襲してきたらしい」

「戦える者は武器を持ち、その村にいた何十人という兵士が立ち向かって行った」

「その時わしは、この森の中で村の方角から煙が上がっているのが見えた」

「わしはなにが起きたのか気になり様子を見に行った」


「そこには地獄が広がっていた」

「村中が炎に包まれ、そこに住んでいた者はほとんと皆殺しにされていた」

「槍や弓矢が転移者に向かって幾つも放たれたが」

「全ての攻撃は転移者の手前で燃え尽き、傷ひとつ与える事すら出来ないでいた」

「逆らった者、抵抗した者の全ては全身を焼かれ、転移者のまわりには死体の山が出来ていた」

「わしが悲惨な光景を目の当たりにして呆然としていたところへ村の入り口から一人逃げて来た者がおった」

「村の近くにいたわしは、助けようと近づいていった」

「そこに居たのは三歳くらいの女の子を抱えたエルフ族の女性だった」

「その女性はわしを見つけると、抱えていた女の子を地面に下ろし、わしに 、この子を安全な所にと、言い残すと力尽きてしまった」

「そして、わしはその女の子を連れ森へ逃げ出した」

「それからわしは、その子、セシリアの親代わりとしてこの森で育ててきた」

「この森で生きる術を教え、森から出ない様に教えてきた」

「けど、それは間違いだった」

「そのせいで、あの子はずっと独りぼっちでな、わし以外と会話をしたことがなかった」

「そんなセシリアの前に、お前さんが現れたんじゃ」

「あの子のあんなに楽しそうな表情をわしは初めてみた」

「お主は奴と同じ転移者だが、良いやつじゃ、わしが保証する」

「お主さえ良ければ、セシリアの友達になってもらえないか?」

「いつの日か、セシリアが森を離れたがる時が来るかもしれん、その時が来たとき、お主がついて行ってくれんか?」

「同じ転移者ならば村を襲った奴にも抵抗できるやもしれん、転移者がお供してくれるならわしも安心してセシリアを送り出す事が出来る」

「図々しいのは承知してる、だが、これを頼めるのはお主しかおらんのだ!」

「頼む、どうかわしの頼み聞いてほしい。」

俺は少し考えたあとこう答えた。

「わかった、ただし条件がある」

「わしに出来ることなら何でもするぞ」

「なあに簡単な事さ、俺の質問に答えてもらうだけだ」

「そんな事で良いのか?なら、何でも聞くがよい」

「答えられる事なら何でも答えよう」

「よし、なら交渉成立だ」

「質問は明日にするよ」

「セシリアが帰って来た、今は飯を作って貰うほうが重要だ」

「そういうわけで、続きはまた明日ってことで」

「うむ、分かった、約束じゃぞ!」

そう言って狼は、嬉しそうに笑いながら部屋を出た。

(とりあえず明日までに質問をまとめておくか)

そう思いながら俺は部屋を出てセシリアと狼のいる台所の部屋に向かった。




(エルフの村を襲った奴、こいつは放って置けないな、転移者であるのをいいことに悪事を働くなんて最低だ、なにより、そんなのと一緒にされるなんて心外だ、明日にでも此方から出向いて懲らしめてやるか)










読んでいただき、ありがとうございます。

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