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第一話 遭遇と出会い

 「えっ?あれっ?どこだ、ここ?」

 「たしか、俺は部屋の中にいたはずだ。まちがいない!」

 そう自分に問いかけ、少し考える。

 そして一つの結論に至る。


  「もしかして ここって、異世界?」

 それしか思いつかなかった。

 このありえない状況を説明するには、それしか考えられなかった。

 そう考えると、自然と納得が出来た。


 俺は眠ってる間に、異世界に来てしまったのだと。


 現状を把握すると、少し落ち着いてきた。

 そして、俺は紙切れのようなものを握りしめているのに気づいた。

 そこにはこう書かれていた。


 ―あなたはこの世界に来た13278人目の転移者(てんいしゃ)です。この世界であなたは自由に行動することが出来ます。転移者(てんいしゃ)の皆様には特殊な能力が授けられます。あなたには、「決意(ユルガヌモノ)」をさずけました。能力の詳細はこの紙の裏に書かれています。それでは、よい異世界ライフを―



  なんだそりゃ

 また頭がこんがらがってきた。

 とりあえず、この紙に書かれている事をまとめてみよう。

 一、俺のほかにも転移者として俺のような奴が一万人以上来ている事。


 二、転移者ってのは全員何かしらの能力を持っている事。


 三、俺にも決意(ユルガヌモノ)という能力が授けられている事。


 まとめるとこうだ。


 まず俺以外にもこの世界に来た人がいる。

 それも、結構な大人数。

 そして、その全員が特殊能力を持っているらしい。

 大体こんな感じかな。


 そして一番大事なこと、それは俺の能力について。

 この紙の裏面に書かれているらしいが、いったいどんな能力だろう。

 もしかして、とんでもないくらい強い能力だったりして、想像するとワクワクしてきた。やっぱ異世界ものの主人公と言えばチート能力!!高速演算、全ステータスカンスト、時間停止、物理反射、etx、、どんな能力か楽しみだ。

 まあ、俺は13278人目なので、少なくとも主人公とはほど遠い立場だけど、まあ、強ければ何でもいいや。

 

 まてよ、俺は勝手に期待してるが、決して強い能力とは限らない。

 下手すると、俺は転移者な中で一番弱い能力かもしれない。

 そう思うと急に不安が押し寄せてきた。

 

 (お願いします。たとえ弱くても、生活に不自由しない程度の能力でありますように。)


 当初の予定を大幅に下方修正し、期待と不安のなか裏面をのぞいてみた。


 ―能力名「決意(ユルガヌモノ)」 

 能力[強い意志持ち続けている限り、自身の身体能力が大幅に強化され続ける。]

 

 それだけだった、、

 正直これがどんな能力なのか俺にはさっぱりわからなかった。

 強い意志を持ち続けるって、具体的にどうゆうことだよ?

 身体能力が強化され続けるって大雑把すぎるだろ!!

 もっとこう、分かりやすく「頑丈になる」とか、「パンチ力が上がる」とか「足が速くなる」とかさぁ、分かりやすく書いてくれなきゃわかんねーよ。

 

 心の中でねちねちと文句を言いつつ能力について考えていた。

 すると突然、後ろから獣のうなり声のような音が聞こえてきた。

 振り向くと、そこには自分の身長と同じくらいの体高のオオカミの様な化け物がいた。あごの下まで伸びた牙を剥き出しにし、今にも飛び掛かってきそうな位興奮していることが伝わってきた。 

 グルルルゥゥとうねりながら品定めするようにこちらの様子を見ている。

 

 俺は、正直に言うとちょっと漏らしていた、だってしょうがないだろ!!

 後ろを振り返ったらこんな化け物がいるなんて、想像できないだろ!??

 そんなことより、どうする?、いやどうすれば助かる??

 いや、それより助かるのか?この状況で!

 どう考えても、いま目の前にいるこいつから逃げる方法がない。

 俺は今、武器も何も持ってない、たとえ武器を持っていたとしてこんな化け物にかなうわけがない。


 俺は死を悟った、心の奥からどす黒いものが湧いてくるような感覚に陥る。

 不安、恐怖、絶望、人間の負の感情が一斉に襲いかかる。

 俺は動けないでいた、まるで金縛りにあったように体が硬直して動かない。

 そして、目の前にいた化け物はゆっくりとこちらに近づき、目の前から消えた。


   次の瞬間

 バキィ! ゴリィ!

 右腕が力強く引っ張られ、灼熱のような激痛が襲う。 

 「ぎゃあああああああああああ」

 右腕に奴が噛みついていた。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い頭の中がその言葉で覆いつくされた。


 俺は無意識に奴の頭にしがみついた。

 おそらく、このままだと腕を食いちぎられるって思ったからだ。

 奴は首を振り俺を振り落とそうとする。

 俺は振り落とされまいと、今まで出したこともないぐらい全身に力を込めた。

 それも限界を迎えようとしていた。

 しがみついていた足が緩み、今まさに振り落とされそうになった瞬間。


 (いやだ助けて、死にたくない、死にたくない、まだ生きていたい、死にたくない、死にたくない、ま だ 死 に た く な い。)


  「うわあああああああ」

 足がほどけ、俺の体は空中に放り出された。

 そして化け物は首をひねり、腕を食いちぎろうとした。 

 だが、おれの腕はちぎれなかった。

 

 空中で振り回されたおれは、何度も地面にたたきつけられながら縦横無尽に振り回されているにもかかわらず、右腕はまだつながったままだった。

 おれは、訳が分からなかった。

 なぜおれは生きてる?

 なんでまだ死んでない?

 それになぜ、まだ意識が残っているんだ?

 何度も地面にたたきつけられ、普通の人間ならとっくに死んでるはずなのに!

 考えていると、不思議なことに気付く。

 (あれっそういえば、右腕の痛みがなくなっているような、)

 (それに地面にぶつけられても全く痛くないぞ?どうなってるんだ?)


 ためしに少しだけ、右腕に力を入れてみた。

 「ふん」

 地面にたたきつけられた拍子に起き上がり、振り払うように力を入れた。

 すると、見た目からして2~300キロはありそうな化け物が、空高くに放り出された。 

 噛みついていた牙はへし折れ、右腕に深く刺さったままであるにもかかわらず、一切血が出ていなかった。牙を抜き取ると、大した痛みもなく、即座に傷口は塞がってしまった。 


 俺の体に何が起きたのか、心当たりは一つしかない。

「これが、おれの能力なのか?」

そう呟きながら現状を確認する。 

 さっきまでおれに噛みついていた奴は、もう問題じゃない。

 そう思いながら、空に浮かんだ化け物を見ていた。

 そして、落ちてくる寸前にそいつは消えた。


 「なっ!?」

 目を離していたわけじゃない、目の前で突然消えたのだ。

 一瞬、何が起きたのかわからなかった。

 直後、すさまじい殺気を感じた。

 なぜ化け物が消えたのか、原因はすぐに分かった。


 目の前に現れた“そいつ”の口の中にいた。 


 “そいつ”は見せつけるように口の中の化け物を貪った。 

 そして食事が終わると、こちらに振り向き、咆哮した。

 その声は、声というにはあまりにも出鱈目なものだった。 

 おれはその咆哮を至近距離で聞いたせいで意識が飛んでいた。

 意識が戻ると“そいつ”は目の前に立っていた。

 俺が身構えると同時に“そいつ”は前足でおれを吹き飛ばす。 


 すさまじい勢いで吹き飛ばされ、壁にたたきつけられる。

 「がはっ・・ぐっ・・・あぁ・・」

 体に力が入らない。

 全身が悲鳴を上げるように激痛が走る。

 しばらくすると、痛みも治まり壁から這い出る。

 「ここは・・どこだ・・」

 さっきまでいた大草原はどこにも見当たらず、あたり一面岩肌が露出した山岳地帯になっていた。

 

 「アイツの仕業かぁ・・ったくどんな馬鹿力だよ」

 「こんな所まで吹き飛ばしやがって・・・でもまあ、ここまで逃げれたし、よしとするか」

 「あんなの勝てる気がしねぇできれば二度と会いたくねぇな」


 独り言を言いながら、移動しようとする。が 

 目の前にそいつはいた。


 その大きさは高さ十メートルを優に超え、先ほどのオオカミに似た化け物の姿をそのまま巨大化した様な姿をしており、その禍々しさは比べ物にならない。まるで、大災害を目の前にしたような威圧感を放ちながらゆっくりとこちらに歩み寄る。


 「ははっ・・・・おれ死んだかも」

 心の底からそう思いかけたがギリギリで踏みとどまった。 

 “生き残る”という意志を持ち続けなければおれの能力、決意(ユルガヌモノ)の効果がなくなってしまうと思ったからだ。能力が発動している今の状態でさえ、瀕死のダメージを負ったんだ。能力の効果がなくなれば確実に死ぬ。勝てないにしても意志を持ち続けていれば、生き残れるかもしれない。

 それに賭けた。

 

 怪物はおれに向かい、再度攻撃を仕掛けた。

 先ほどと同じ攻撃を、しかし威力は桁違いだった。

 おれは来た道を帰るように再度、吹き飛ばされ、もともといた大草原を軽く超え、そのさきの森の中に突っ込み、数多の木々をなぎ倒し、ようやくそこでおれの体が静止した。

 

 俺は生きていた。

 だが、今までで最大のダメージを受けた俺はその場で気絶した。

 


















 「ふう、よいっしょっと」

 

 「これだけあればだいじょうぶだよね」

 背中にしょった袋を見つめながら少女はつぶやく。

 袋の中にはさまざまな種類の薬草と沢山の果物が詰められていた。

 「あとは、お水をくんでかっえるっだけー♪」

 鼻歌を歌いながら帰路につく。そこに


 バキィ!!バキィバキィ!バキィ!ドゴォ!!!


 「ななな、なにぃ、何の音!?」

 突然、森の奥の方から大きな音とともに強い衝撃が走った。 

 「も、もしかして、“魔物”が現れたんじゃ!?」

 「もしそうなら、どうしよ~~ 早く“精霊”さんを呼ばなきゃ」

 「でも本当に魔物なのかな~・・・ちょっと確かめに行こうかな~」

 「でも本当に魔物がいたらあぶないしぃ~・・・でも気になる」


 「ええい、迷ってたってしかたない!とりあえず確かめに行こう!!」


 こうして音のした場所へ向かうと。

   「なによこれ・・・」

 そこには、巨大なものを引きずった跡のように木々がなぎ倒されており、明らかに異常な光景が広がっていた。

 「いったい何が起きたの?」

 驚きながらも音のした方向へ進む。そこには・・・ 


 見たこともない服を着た人間が倒れていた。

 「もしかしてこの人・・・転移者(てんいしゃ)?」

 「だとしたらどうしよう~~精霊さんに転移者には絶対に近づくな!!ってきつく教えられてるんだよねぇ・・・でもこの人怪我してるみたいだし、ほおっておいたら死んじゃうかもしれない!」

 「幸い、手持ちの薬草で応急処置できそうだし、助けなきゃ!」

 「でも、どうやって家までこの人を運ぼうかな~」

 「まあ、応急処置が終わってから考えればいっか♪」












読んでいただき、ありがとうございます。

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