『暑中お見舞い申し上げます』【添付画像あり】
『少し気が早いかな、と思うけど
関西の夏は暑いよね(・・;)
社会人になってはじめての夏、無理せず元気で頑張って下さい』
昼に、母親と買い物に出かけた先で食べたかき氷の写真を添えて送信ボタンを押した。
田舎のショッピングセンターの素朴なかき氷は、在学中に大阪や京都で見かけた物のような華やかさはないけれど、どこからみても、かき氷とわかるので涼しげな写真になった。
サークルの集まりで女性陣が喜んで写真を撮ってSNSへアップロードするような凝った趣向の物よりは、こうした地味で昔ながらのかき氷の方がワタルは好きだった。
もうすぐ一年か。
夏休み入って直ぐに家庭の事情で大学を中退することになり、慌しく引越しをしたのはお盆のすぐ後だった。
送別会で、メールアドレスを教えてもらってから、アカリとしたやり取りは数える程しかない。
元々、サークル内でも親しくしていた訳でもない、顔見知り程度の関係だった。
だからこそ、暑中見舞いという理由をつけてメールを送った。
相手からのメールを待っているだけでは、彼女と自分を繋ぐ、この眼に見えない電波が途切れてしまいそうな気がしたからだ。