「ありがとうございます」
「お祝いメールありがうございます。
こちらも、早咲きの桜が少しだけ咲き始めています。
仕事は、入社式は3日だけど、卒業式の翌日から研修で緊張の毎日です。
特に、ヒールに慣れなくて足元がガクガクだよ(T_T)
ワタルさんの優しいメールで元気出たので頑張るね!」
研修で、自分で思ったよりも緊張していたのか、休日の今日、何もせずにゴロゴロして一日を終えようとしていた時に届いたメールに、アカリは直ぐに返信を送った。
おめでとう、って言ってくれるんだ。
年明けから、卒業旅行や、卒業式の準備、バイト先での送別会と、色々な行事に背中を押せれて流されるように今日を迎えたアカリだったが、卒業式の日、ワタルからのメールが届かなかったことが、心の片隅で小さな棘を刺していた。
いつも、アカリを気遣うような優しいメールをくれるワタルからのメールがなかったことで少しガッカリしたけれど、よく考えてみれば家庭の事情で、4年生で中退したワタルにお祝いして欲しいと思うことは恥ずかしい、と思い直して心に蓋をしていた。
ワタルさんは、優しい。そして、大人だ。
勿論、年齢だけならば、アカリも成人している。
しかし、先に社会人になったワタルの方が、精神的に大人に感じた。
私も、頑張らなくっちゃ!
アカリは、一日を取り戻すように、部屋の掃除を始めた。