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殺人鬼2  作者: ityou
8/8

その後

俺が逃亡を始めてからもう3ヶ月が過ぎた。


事件が起きた直後は、どこのメディアもこの事件のことを報道していた。

さすがに、未成年である俺の本名とかは表では出まわらなかったが2chとかでは晒されていた。

もちろん、顔写真も。


俺も始めの頃は街を平気にうろつき、ネットカフェなんかに寝泊まりしていた。

しかし、時間が過ぎると共に警察との遭遇率が上がり何度も追われた。

俺はバスで遠くの田舎へと向かった。


田舎でも警察はいる。

だから派手な行動はしない。

もう、誰も住んでいないような家に住み込んだ。

もちろん、無許可で。

不法侵入ってやつかな?

ま、元々から死刑が決まっている身としてはどんだけ罪が重なろうと変わらない。

俺は、久々の布団に感激した。

長らく使われていなかったのか埃とカビがすごかったけどそれでもいい。

とにかく、ゆっくりと寝れる…

それだけで満足だった。


「うわぁぁ!!!」

深夜3時頃。

俺は夢を見た。

そして、飛び起きた。

俺は俺自身が犯した過ちを夢で見た。

俺が犯したというか、黒いほうがやった。

最近は白い方しか表には出てきていない。

もう、黒い方はいなくなったと思っている。

でも、たとえ黒いほうがやったとはいえ俺がやったことに変わりはない。

お陰で、記憶に根強く残っている。

しかも人を刺した時の感触が嫌というほど思い出す。

生暖かい血が顔に掛かる感触…

その血の匂い…

その飛散る血の音…

赤い液体…

もう、嫌というほど思い出す。

そして、親友とも呼べる非リア充同盟だった宮國と健二を失った。

いや、俺が破壊した。

このことも俺の精神に大ダメージを与えている。


俺はどちらかと言えば周りに頼るタイプだった。

誰かの指揮に乗っかっていくタイプだ。

その指揮を担っていたのは宮國だった。

宮國のいうことに健二と俺がついていく…

これが、非リア充同盟のいつもの流れだった。


ところが、その宮國がいなくなってしまい俺は1人で指揮をとることになった。

逃亡のアドバイスを受けたくても、俺と話をしてくれる奴はもういない。

「あの2人なら俺が犯罪者であっても助けてくれたかもな…」

俺は泣いた。

泣いてもどうにもならないことはわかってる。

でも、泣いた。

泣かずにはいられなかった。

悪いのは全部俺なのに。



俺は昼間は山を歩いた。

食料を探すために。

俺の口座は凍結され、逃亡資金として用意していた現金も底をついてしまった。

さすがに食わずには生きていけない。

だから、山菜なんかを探す。

しかし、何も見つからない。

歩くだけ無駄だった。


その夜も夢を見た。

昨日みたいに飛び起きることはなかった。

しかし、昨日よりも泣いた。


俺は思い出した。


俺がクラスの花澤さんを殺ろうとした時…


クラスで一番可愛くて、性格も良くて、俺の好きだったあの花澤さんが…


ナイフを突きつけていた俺に向かって…


「好きだったのに…」


って言ったことを…



この時俺に「後悔先に立たず」という言葉が重くのしかかった。

あの時、花澤さんだけ殺さなかったら?

そう思ったが結果はバッドエンドだっただろう。

殺人を犯した奴と付き合うとかありえない。

俺は、どうすればいいんだろう…


逃亡初期は人を殺し続ければなんとかなると思っていた。

しかし、俺の中から黒い方がいなくなってからは不安しか残らない。

警察に捕まると死刑…

人と話すと取り押さえられ警察に突出される…

「俺は1人ぼっち…」


俺の精神状況は危険だ。

ちょっとでも衝撃を与えると爆発する危険物みたいに。


「堀内光輝、中にいるな?」

警察が来た。

ついに来た。

これが俺の精神に衝撃を与えた。


俺は護身用に持っていたナイフで頸動脈を切った。

意外と痛かった。

「ごめんなさい…」

これが俺の最期だった。



嫉妬から生まれた殺人鬼は淡く死んでいった。

しかし、今日も新たに殺人鬼は生まれる。

そして、散っていく。


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