祭り
「ごめん光輝。今日は部活で行けないわ…」
「うん、部活がんば!!」
「あ、あのさ…光輝。今日、おばあちゃんが家に来るから行けなくなった。」
「あーそりゃ残念。」
今日は夏祭り。
リア充は彼女と一緒に。
彼女なしでも友人と一緒に。
後輩、先輩と一緒に。
でも、俺には先輩も後輩も彼女もいない。
だから、友人である健二と宮國を誘った。
でも、結果はダメだった。
だろうな。
2人には大事な人がいる。
「どうしよ…」
俺は家にこもるか悩んだ。
でも、家にこもるのはなんか負けた感があるから一応祭りには行くことにした。
ボッチだけど。
会場に到着してすぐに後悔した。
ボッチが見当たらない。
「ボッチ、俺だけなのか…」
なんか、悲しくなってきた。
悲しくなって帰りたいと思ったのに、体は勝手に会場の中へと進む。
今の俺は体と心が一致しないことがよく起きる。
最初のころは戸惑ったりもしたが最近は慣れた。
右も左も前も後ろもリア充。
ボッチは見当たらない。
だんだんと恥ずかしくなる。
「うわぁ…ここにボッチとかキモッ…」
どこかの方向から声が聞こえた。
俺はすぐに分かった。
そこには、健也の姿があった。
横には健也の彼女がいた。
俺は無視…せずに健也のもとへ足をすすめる。
そして、健也の耳元で「ついてこい。」って言って路地裏へと誘導する。
そこは誰も居ない。
痛い目に合わせるいい場所だ。
「お前の彼女が俺のことをバカにしたんだけど。」
「ごめんって。」
健也が軽く返す。
「は?ごめんだって?そんなんで誰が許すか。」
そう言うと俺は躊躇なく健也の頬を殴る。
健也は俺のことを舐めていたのか油断していたためおもいっきり吹っ飛ぶ。
「私の彼になにすんだよ!!」
キーンと耳に来るような声で叫ぶ。
「あ?原因は誰が作った?お前だろ?違うか?」
俺は最大の睨みを炸裂させる。
彼女は俯いた。
何も言い返せないっぽい。
「堀内くん。本当にすまなかった。俺の彼女は言いたいことをはっきりと言ってしまうタイプで…」
「んなこと知るか。」
俺は健也の言ってる途中で腹をおもいっきり蹴る。
「ぐっ…」
健也が悲痛のあまり声をだす。
しかし、俺はやめない。
何発も何発も…
周りは祭りなのに誰も来ない。
だって、路地裏だ。
普通のリア充は恐怖で入っても来ない。
健也をボコボコにした後、俺は何食わぬ顔で祭りへと戻った。
時間はどんどん過ぎていく。
いつもは2日ほど持つスマホもいじり過ぎたせいでバッテリーが30%を切ってしまった。
そんだけ暇だった。
祭りの屋台は無駄に高い。
だから、晩飯はコンビニで済ましたし行きつけのブックオフにも行ってしまい何もすることがない。
とりあえず祭りの高台へと行き周りを見渡してみた。
「うわぁ…」
人がゴミのように群がっていた。
「こんなところに俺はいたのか…」
なんか気持ち悪くなってきた。
人酔いだ。
それにくわえてリア充だらけでまた違う意味で気分が悪くなってきた。
しばらく見渡していると見覚えがある顔があった。
…宮國だ。
宮國が彼女と一緒にいる。
しかも、前に見た彼女とは違う。
あいつはまさかのタラシだった。
確か宮國は部活があるはず…
「ま、そういうことだと思ったけどな。」
俺は泣く気も苛立ちもない。
もう、どうでもいいや。
今度はさっき健也を殴りまくった場所を見てみた。
そこには健也と彼女の姿はない。
「健也には悪いことしたな…」
俺は少し反省した。
また、違う方向を見た。
すると、今度は健二の姿が。
健二の横にも彼女が。
彼女は前見た彼女と一緒だった。
「健二は純情だな。」
俺は少し笑った。
俺はそのまま帰路についた。
もう、このリア充の空気は限界だった。
家に帰り着いた。
今、俺は1人で暮らしている。
俺の暴走ぶりに家族が愛想つかして俺向けに家を借りてくれた。
俺もこっちのほうがいい。
ただ、自炊は大変だが…
風呂に入り、ひと息入れ、メールを送った。
「部活乙。」と宮國へ。
「おばあちゃん元気?」と健二へ。
健二からはすぐに返事が来た。
宮國からは翌朝帰ってきた。
「リア充め…」




