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どうせ選ばれることはないので自由に生きようと思います。  作者: @SsRay


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第2話 自宅

 家に着くと早速彼女を椅子に腰かけさせ浴槽のある風呂場へと向かった。風呂はお湯を沸かす為の装置の部分だけ石で出来ているがほとんどがヒノキで作られている。水のはってある巨大な浴槽を見て、俺は薪をとり、湯を沸かし始めた。

 お湯の沸かし方は異世界の手順がある。まず、大理石の厨房で火を付け、石を熱し、浴槽に沈める。浴槽にはられた水がボコボコと音を立て、水が徐々にお湯に変わろうとしている。そんな中、風呂の端の方に束ねていた独特の草を浴槽にいれる。沸騰してきたお湯により綺麗な緑色の浴槽へと変わった。

「風呂沸いたよ!」

 彼女は掛け声に反応し、風呂場へと駆け寄ってきた。

「わぁ!これがお風呂ですか! これは、気持ちよく生き返れそうですね」

 パーカーを脱ぎ全裸となる彼女。カイトは彼女の裸よりもパーカーを気にしている。パーカーを脱ぎ、彼女からパーカーを受けとると、カイトは脱衣所の棚へパーカーをさっと投げた。

「はぁ、私も前世は装備品がよいからと外側だけを気にして効率よく下着は薄い安いものを装備して全財産を使いきり、魔物の素材で次の宿代と食費を稼ごうと魔王城の前まで、何故か魔物が一体も出ず、門の前でやっと出くわした一体の魔物に装備を壊され全裸で死体となる悲劇がありましたが、このお湯で生き返れるのですね」

 彼女の声は、カイトの耳には聞こえていなかった。

「あー、えっと、この世界の人って風呂の入り方わかる?」

「このような豪勢な甦りのお風呂は初めてです。手取り足取り教えてください」

 湯気のこもる風呂場で、全裸の彼女と、Tシャツにジャージに素足のカイトの二人きり。彼女はもはや、死んでいると認識している為、甦る方法について聞いているようだった。

「じゃあ、傷の手当てしてあげるよ。この椅子に座って」

「……はい」

 彼女は木の椅子に腰かけた。

「まずは、体をお湯で流して外で付いた汚れを先に落とす。今回は擦り傷とかあるから、この薬湯をこのオケでかけると」

  熱い湯が白い肌を叩いた瞬間、劇的な変化が起きた。

 サイクロプスとの死闘で刻まれていた無数の擦り傷が、まるで魔法の消しゴムで消されたかのように、一瞬で消え去っていく。泥にまみれていたはずの肌は、湯を弾くほどに白く、滑らかな輝きを取り戻した。

「あっ、ぁ……」

「すごい……痛みが完全に消えました。傷跡ひとつ残っていません……」

 彼女の肌はローションを全身に塗っているような感じに光輝いている。ふと彼女は目の前に水に姿が映るように、自分の姿が映っていることに気がついた。

「これは!私の前世を映しているのですね!」

「あーそれ! 石磨いたら鏡になったんだよ。この世界に鏡ないみたいだったし」

「鏡ですか!」

「このお湯、その辺に生えてた薬草を煮詰めただけなんだけどね 匂いも独特でしょ。そもそも、そんなに綺麗な体してんだからタオルで隠した方いいと思うんだけどね まあ、綺麗になったから大丈夫そうだな」

 俺は158センチの猫背のまま、死んだ魚のような目で淡々と問いかけた。そもそも、彼女に風呂に入るときに体を隠す用のタオルを渡したはずなのだが、彼女は脱衣所の棚へタオルを置き、全裸で風呂場へと入ってしまったのだ。

「……いい匂い。ありがとうございます、カイト様」

「で、体の汚れを取ってから浴槽に入るんだ。あ、シャンプーもあるよ」

「シャンプーとは?」

「やっぱないのかこの世界。マジで最悪なとこ来ちまったなぁ。髪に付けると髪の汚れが取れるんだ。匂いもシナモンとか適当にその辺の草混ぜたら出来たから最初だけ使い方教えてあげるよ」

 そういうと、彼女の長いロングヘアーに、シナモンの香りのする泡のでる液体を付け、薬湯をオケにくみ、彼女の頭を泡で一杯にする。

「こ、これは!」

 カイトは床屋でシャンプーをするような手付きで彼女の頭皮と髪を綺麗に洗う。

「痒いところはないですか?」

 床屋の定番の掛け声をついついかけてしまう。

「いえ、気持ちいいです」

 彼女の髪を綺麗に洗うと彼女の髪に艶が生まれ、シナモンのいい香りがする。

「はぁっ」

「はい、終わり。体を洗ったら、浴槽に入るんだけど、君の髪長いね。確かこの辺に」

 カイトは草でリングを作り束ねる為の紐代わりにし、彼女の長い髪をポニーテールにしてあげる。鏡には傷が消え、髪はツヤツヤ、体はローションを塗ったように光輝いている彼女と、カイトが映っていた。

「はい。終わり。後は着替え用意するから、その間に風呂であったまっててよ。……ご飯作るからゆっくり入っていいよ。あ、浴槽のこの部分はお湯沸かすための装置だから触らないで!熱いからやけどするよ」

 俺はそう言い残して、だるそうに風呂場を後にした。

 脱衣所に戻ると、俺は自分の予備のジャージを引っ張り出し、脱衣所の棚へ置いた。

 大理石の台所のテーブルに向かい、俺は朝拾ってきたばかりの、妙にツヤのある木の実を口に放り込んだ。

「……ん、酸っぱ。これは、疲れた時に良さそうだな。あーでもレモンの代わりになるかも」

 次に、朝に川で素手で掴み取りした岩魚イワナを取り出す。

 大理石の台所で、イワナを蒸し焼きにし、先ほどの木の実を絞りイワナにかけた。

「カイト様、お待たせいたしました……」

 しばらくして、俺が置いたジャージに着替えたエルナが風呂から上がってきた。

 彼女のナイスバディな体をジャージがここでもかと強調している。

「はい、これ。その辺の魚」

 俺は焼き上がった魚を、皿に並べた彼女分の食事を見せ、大理石のテーブルの椅子を指差した。

「ありがとうございます」

 彼女はさっと座るとパクッと魚に食らいついた。

「お、美味しい……」

 彼女は、風呂に入り、生き返ったと思っていた。

「あのところで、私はこの後。どうすればいいのでしょうか?」

「どうするって? 取り敢えず全裸にジャージはスースーして気になるでしょ。村で下着を買いに行こう!」

 カイトは気の抜けた感じで右手をあげた。

「生まれ変わるのに下着が必要なのですね」

 カイトには聞こえておらず、カイトもパクパクとイワナに食らいついている。

「ところで、あなたの職業は? 死神様でしょうか? 天使様ですか?」

「ん? 職業? あーあ。それ!」

 俺は理解したといわんばかりに目を見開き人差し指を立てた。

「それな。どうせ俺、大したことねぁだろうから教えてやるから付いてこいって言われたときにさ、めんどくせぇから城出て、近くだとなんか連れ戻されそうでさ。嫌だったから。思いっきりダッシュして、ここ見つけてさ、人こなそうなここに家建てたんだわ」

「え、えーっと……」

「あ、俺さ、召喚されたんだってさ。ダリィよな、よくわかんねぇし」

 カイトは立ち上がり胸を張った。

「はぁ。召喚ということは……」

 彼女はなんとなく、お湯に浸かり体が癒え、血の巡りがよくなり、食事もしたことで意識がはっきりとしてきた。

「お茶いれるよ」

 綺麗な石の湯のみ茶碗を彼女に石造りのポットからお茶を注ぎ彼女に渡した。

「温度少しぬるめだからすぐに飲めるよ。お風呂の後だから水分補給した方いいからさ」

「あの。召喚ということは、あなたは勇者一行の世界を救う外からの選ばれしもの達の一人でしょうか? いえ、あの強さ、そういうことですね」

 彼女は状況を理解し、自分が死んでおらず彼に助けられたことを悟り、今まで全裸で彼に大事な部分をさらけ出していたことを段々恥ずかしくなり、顔を赤くし始めた。

「とりあえず村いこっか、全裸にジャージってさ気になるじゃん。早めに下着と、服揃えた方いいよね」

「服ですか、確かにお借りしたままでは悪いですね」

 彼女は、下着がなく全裸でしかないことに気がついた。

「あ! 大変言いにくいのですが、私。魔王城のモンスターの素材を売ればいいと考えてそれなりの装備を買い、魔王城の前に行ったので、一文無しなんです。回復薬なども、使いきりMPもゼロになってしまいました。何故かわかりませんが、魔王城の前まで敵が一体も現れず、城の前でやっと一体と出くわしたのですが……」

「え! あーあ。そうだったのか! 魔王城ってのはよくわからないけどさ。そのへん魔物とかそんなでないよ」

「そうなのですか!?」

「そう。女性用の下着は流石に無いから、俺が買ってあげるよ。なんかさその辺の素材を適当に持ってくと結構高く買い取ってくれるんだよね」

「はぁ」

 部屋の片隅にあるそれに気がついた。

「こ、これは! オリハルコン!」

「そんな大したもんじゃないからさ 善意で高く買ってくれるんだと思うよ。取り敢えず復帰できるまで居ていいよ。部屋はあるからさ」

「ありがとうございます。槍も鎧も失ってしまい。お金もなく。一文無しの私を助けていただきありがとうございます」

「いいって、部屋あるからさ。好きなだけ居ていいよ ここはさ、ほんと魔物とか居ないからさ。安・全・地・帯」

 彼女の髪はまだポニーテールのままだった。食事が終わると、カイトは彼女を脱衣所へ手招きをしてドライヤー代わりの扇風機風の木で作られた謎の装置の前へ案内した。

「このボタンを押すと、押した勢いで風が出るんだ。これで髪かわかして」

 風が吹き、彼女が、ポニーテールをほどくと綺麗なロングヘアーが風で揺れ、シナモンの香りが部屋へと広がる。

「やはり、ここは天国かもしれませんね」




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