58.天才の中の天才(アート視点)
全力で街を走りながら俺はアートに話しかける。
「で、結局なんなんだ!」
「レクトのいる部屋で魔法が使われた。
もしかしたはレクトが危険な目にあっているかもしれない。」
その言葉に驚く暇もなく教会に着き、レクトがいる部屋のドアを開けると……驚いたように固まる3人がいた。
(レクトと……ケントとエミー?)
何か危険があると言われて身構えていたのに、そこにいたのはいつもの3人で、少し拍子抜けしてしまう。
その後レクトが使った魔法が原因だったことがわかり、これでこの件は終わりかと思ったのだが……
「映鏡!」
「「は!?」」
その後のレクトに見せてもらった魔法で、そんな甘い考えは吹き飛んだ。
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「つまりその鏡魔法っていうのは、自分がなんとなく想像できる範囲であれば、無制限で何でも映して使えるってことか?」
「そうですよ?」
自分で言っていて馬鹿馬鹿しくなるようなその魔法に俺は頭を抱える。
(この魔法、滅ぼそうと思ったら国を一瞬で滅ぼせるレベルの魔法だぞ!?
兄弟揃って化け物かよ!?)
勿論そんな俺の心の声は誰にも届くはずはなく、依然レクトは首を傾げている。
(まぁ、とりあえずアートと話してだな。)
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それから2週間が経ち、教会を出る日になった。
そして予想はなんとなくしていたが、やはりレクトとアートの間で意見の食い違いが起きたようだ。
『レクトを危険な目に遭わせるわけには……』
『ならどうすれば……』
このままでは永遠に終わらなさそうなので、少し話に介入する。
「アートに勝てたら、とかはどうだ?」
「……お兄ちゃんに勝てたらいいの?」
「いやそんな条件は認められな……」
「ああ、そうだぞ!そうだよなアート?」
こうしてうまく話をまとめ、後はアートが決闘に勝てば一件落着だろうと思っていたのだが……
(はぁ!?アートが負けた!?)
決着の瞬間。
アートは確かに雷光を発動させていた。
いくら鏡魔法が優秀でもあの速度の一撃を防ぐ術はないと思うのだが。
「すごかったなレクト、最後は何したんだ?」
「それは僕も知りたいな、かなりタイミングも完璧だったと思うんだけど……」
「最後のは反射鏡リフレクトって言って……」
こうして軽い気持ちで聞いた話で、またしてもアートと2人で頭を抱えることになるのだった。
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そして現在。
もうこれ以上レクトに頭を抱えることはないと思っていたのに……
「母上、今なんとおっしゃいました?」
「……レクトが貴族学院の過去問で、満点を取ったのだ。」
「嘘、ですよね?」
「「……」」
母上はこんなところで嘘をつくような人ではないとわかっていても、簡単には受け入れられない話だ。
(俺は60点、アートですら80点台だったはずだ。
……それを、満点?)
もうなんでもいいか、と諦めてしまう自分がいるのであった。




