52.勝敗
《アート視点》
何が起きたかはわからない。
気づいたら地面に転がっていた。
(雷光を使った後の記憶がない。
まさか魔法が暴発した?いやでも魔法が成功した感触は確かにあったし……)
とりあえず身体を起こそうとすると、目の前に僕よりずっと小さい手が差し伸べられた。
「お兄ちゃん、僕の勝ちだよ!これで認めてくれるんでしょ?」
「……そうだね、僕の負けだ。もうその事には口は出さないよ。」
「やったー!」
何が起きたのかはわからないが、僕が倒れてレクトが立っている。
これが今回の決闘の勝敗だと言うのなら、これ以上約束を破ってまで口を出すことはないだろう。
(手加減してたとはいえ……強くなったね、レクト。)
これまで守るだけの存在だった可愛い弟がこうして強くなっているのを見ると、何処か遠くに行ってしまいそうな、そんな気がした。
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《レクト視点》
(なんとか勝てたね……)
[レクト、お疲れ様でした。]
最後の瞬間は正直賭けだった。
あの時、僕が使った魔法は反射鏡。
結果的には賭けに勝てたわけだが……
(それにしてもよくこんな作戦思いついたね?)
[ありがとうございます。レクトも見事な機転でした。]
決闘前、メモから聞いた作戦はこうだ。
まずは数の有利を活かしてアートを追い詰める。
アートはこちらに怪我をさせないように弱めでしか攻撃出来ないというのを逆手に取るのだ。
そしてアートに隙が出来たところに魔法を叩き込む、と言うのがメモが立てた作戦だ。
最後の瞬間、僕は直前まで弾速の速い風球を放とうとしていた。
だがお兄ちゃんと目が合った瞬間、何かがあると思って咄嗟に反射鏡に変えた。
そして予想通りお兄ちゃんは必殺の魔法を放ち、それが反射された、と言うわけだ。
(本当に、本当に手加減されていたとはいえお兄ちゃんに勝てた!)
心の中で歓喜していると、カイトさんが手を振って歩いて来た。
「すごかったのレクト、最後は何したんだ?」
「それは僕も知りたいな、かなりタイミングも完璧だったと思うんだけど……」
「最後のは反射鏡って言って……」
説明が終わるとお兄ちゃん達は深刻そうな顔で言った。
「少し、2人で話してくる。レクトはここで待っててくれ。」
「う、うん。」
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「おい、攻撃反射って何だよ!?しかも物理攻撃も反射出来るとか……」
「少なくともぶっ壊れなんて言葉で済ませていい域はとっくに越えたね。」
「やっぱり学院に通わせるべきかもな。
あんな魔法を使えて、自分が異常だと分かってないのは、正直危険だ。」
「そうだね、でも行かせるとしたら信用できるところを探さないと……」
「別に貴族学院でいいだろ?」
「あのなぁカイト、一応僕とレクトは平民なんだが?」
「別に貴族学院とみんなが呼んでいるだけで、試験に合格すれば誰でも入れるぞ?」
「それでも平民が1人もいないのは、それだけ平民が入ることが難しいからだろ?」
「まあ平民でも記述までは突破できるだろうが、貴族学院が重視しているのが魔力操作と魔力量だからな。
でも、レクトはどちらも持っているじゃないか。」
「確かに……一度レクトに相談してみるよ。」




