51.音速を超えた一撃
「映鏡」
「火槍」
僕は飛んでくる火の槍を風纏を使って避けながら、映した火球で反撃する。
だがアートは素早くステップを踏み、攻撃を簡単に躱しきった。
「なかなかやるね、でもこれは避けられないよ。」
そう言うとアートは距離をとり、魔法を使う。
「火魂」
(火球?それなら避ければ……っ!?)
飛んできたのは火球と変わらない火の玉だったが、風纏で避けようとすると、火の玉は曲がり僕に直撃した。
「痛っ!」
(何!?球が球に曲がった!?)
「火魂っていう、僕の複合魔法だよ。
これがある限りレクトは絶対に攻撃は避けられない。大人しく降参した方が身のためだよ。」
そう言ってアートは手を掲げ、宙に数百もの火の玉を浮かばせる。
(すごい量。これが少し前なら焦ってただろうけど……メモ、写せた?)
[問題なく写せました。]
よし、ここからは僕のターンだ。
「お兄ちゃんこそ、怪我しても知らないよ?」
「……降参はしないってことでいいんだね?」
僕の無言を肯定と見たのか、アートは掲げていた手を僕に向かって振り下ろし、その瞬間宙に浮いていた数百の火の玉が全てこちらに飛んでくる。
だがメモの予想通りなら……
「映鏡。」
「っ、鏡魔法か!」
映し出したのは数千の火魂。
火魂は真っ直ぐにアートに向かっていき、アートとレクトの火魂がぶつかり合い、周囲に衝撃波が発生する。
そして数で優っているレクトの火魂はアートの火魂の間を通り抜け、アートに襲いかかる。
最初はアートは魔力で自分の周りを透明なシールドで固めたり、土魔法で壁を作ったりと防戦一方だった。
だが時間が経つに連れて、アートではなくレクトにダメージが溜まり始めた。
[レクト、これは……]
(うん、本気になってきてるね。)
最初お兄ちゃんは、僕を怪我させないために魔法を手加減して使っていたはずだ。
だが常に捌かなければならない火魂の数は増え、それに比例して消耗する魔力は増えていく。
そのことに対し無意識に焦りを感じ、早く決闘を終わらせようと威力とコントロールが上がった火魂を僕に向き放ってきているのだ。
だが相手の威力が上がればこちらの威力が上がるのも必然で、相手が攻撃の威力を上げればこちらも上がっていくという平行線に突入しているのだ。
尚且つ僕はお兄ちゃんの攻撃を捌く必要はない。
なぜならお兄ちゃんは僕が致命傷を負わないような場所にしか攻撃して来ていないため、多少弾幕を抜けて来ても、僕にとって致命的な攻撃にはなり得ないからだ。
(メモの予想通り、お兄ちゃんは僕に対して攻撃するのを躊躇ってる。
その優しさが、今回の敗因だよ!)
そしてついに、アートに威力の上がった火魂が直撃し、アートを囲っていた透明なシールドが砕け、アートがよろめいた。
[今ですレクト!]
「おりゃぁぁ!」
それは完全に勝ちを確信した叫びだった。
だがそれと同時にアートが呟いた。
「だからこそ、ここの魔法は避けられない。
四属性合成魔法、雷光!」
それは、アートの正真正銘の切り札。
光の速度でのその攻撃は、レクトが瞬きするまもなくレクトに迫る。
そしてレクトの正面に来た瞬間、光の速度で走る稲妻は、魔法を放った姿勢のままのアートに直撃した。




