44.決別(アート視点)
貴族学院は冬の長期休暇に入った。
大体の貴族はお茶会や魔術の鍛錬、帰省するなどをして過ごしているころ、僕はというと……
「え!?なんでこんな面倒な魔術式を作らなきゃいけないんだ!?」
必死に冬の長期休暇の課題に励んでいた。
こんなことになった理由は数日前に遡る。
数日前、僕は友人であるカイトと一緒に帰省の予定を立てていた。
「そうえばアート、帰省を1週間だけ遅らせることってできるか?」
「無理、と言いたいところだが、とりあえず理由を聞こうじゃないか。」
「なんでそんな上から目線……いつものことか。
その日に絶対に外せない予定な入っちまったんだ。」
「絶対に外せない用事?」
「ああ、実は……」
聞けば貴族の食事会的なものに招待されたらしい。
ただの招待なら断ってもよかったが、送り主がカイトの家とかなり親密な関係にあるらしく、出席が決まってしまったとのことだった。
「それならしかたないな……」
「お、わかってくれたか。
なら出発を1週間だけ遅らせて……」
「僕1人で先に行っているから終わったらきてくれ。
僕は一刻も早くレクトを補給しなくちゃいけないんだ!」
「な、今の流れは遅らせてくれる流れだったろ!?」
「僕がその程度で出発を遅らせるとでも?
そもそも勝手についていきたいと言ったのはお前だろう。」
(くっ、どうすれば……そうだ!)
「アート、お前はレクトと一緒に過ごしたいんだろ?」
「そうだが?」
「ならば先に課題を全て終わらせて仕舞えば、残りの休暇は気兼ねなく過ごせるんじゃないか?」
「確かに!
……まあいいだろう。
その代わり1週間だけだからな!」
「よっしゃ!」
そんなわけで僕は冬の休暇に入っての課題地獄を、気合いで1週間で終わせた。
**
次の日。
「雲ひとつない快晴!
絶好の帰省日和だ!」
「はいはい。
早く出発するぞー。」
それから僕は3日かけて我が家がある、カリフの街に辿り着いた。
「いやー、この無駄に高い感じの家も久しぶりだなぁ」
「わからなくもないが、仮にもそれが久しぶりに見た我が家に対する反応か?」
軽口を叩きながら、無駄に高く作られたドアの呼び鈴を鳴らす。
すると家から両親が出てきた。
「おー!アートよ、帰ってきてくれたか!」
「心配したわよ!」
「アリガトウゴザイマス、オトウサマ、オカアサマ。」
(とんでもない棒読みだな……)
「アート、そちらの方は?」
「それは……」
「私から名乗らせていただきます。
学友のカイト・レトイックと申します。」
(僕の前ではあんなにガサツなのに、こう見ると立派な貴族なんだよなぁ。)
「レトイック?どこかで聞いたような……
あ、失礼しました。家をご案内しましょうか?」
「いえ、彼からはよく弟の話を聞かされておりまして、先に会ってみたいのですが。」
カイトがそれとなくレクトのことを聞く。
しかし両親は焦ったような反応をみせた。
「そ、それが次男は今外に出かけておりまして……」
「そうですか?
なら帰ってきてから……」
そうカイトが言うのを小声で遮る。
「……カイト、移動するぞ。」
「は?いきなりどうしたんだ?」
「移動しながら話す、これ以上ここにいる必要はない。」
そう言いながら両親に背を向け歩き出す。
「おいアート!どこにいくんだ!?」
「……お前らがレクトを外に出すわけないだろ!
僕はレクトを探しにいく、もう二度と会うことはないと思うから一応。
今までありがとうございました!」
そう言って僕は、カイトの手を引いて走り出した。
**
「で、どういうことだ?」
カイトは未だ状況がのみ込めていない様子だ。
「あいつらはレクトのマナーがなってないとか言って、レクトを頑なに外に出さなかったんだ。
本当は外に出して反抗されるのを恐れているだけなのに。」
「つまり家にいないってことは、何か弟に起きている可能性があるってことか?
でも決めつけるには早いような……」
「あいつらはそういうことを平然とやる奴らだ。
それにレクトの身に何かあったら、僕は……」
「わかった、わかったって!
だけどもう遅い時間だし、今日はうちに泊ろうぜ。」
「それができるなら助かるが……
まずお前の家に辿り着けるか?馬車はもうないんだぞ?」
「それはお前が呼べばいいんだよ!」
「?」
カイトはニヤッと笑った。




