23.間話 化け物(レミー視点)
投稿予定だった間話を圧縮したらとんでもない文字数になりました。
無茶苦茶長いです!
レミー間話はこれで終わり。
私は最善の準備をし、試験が行われる森の前で待っていた。
周りは知り合いが多いのか、雑談を楽しんでいる。
その中で1人の少年がこちらに話しかけてきた。
「こんにちは!この前はありがとう。」
「誰?」
私は新手のナンパか、なんて思いながら話を聞く。
「覚えてない?1ヶ月ぐらい前に依頼掲示板前で依頼を紹介してもらったんだけど……」
「1ヶ月前……ああ、あの時ね。」
私はそうえばアドバイスをした少年がいたな、なんで思い出す。
「思い出してくれた?」
「ええ、あれからもうDランクに上がったのね。」
「少し実力を証明する機会があってね。」
(少しで上がれるようなもんでもないと思うんだけど……)
そんな会話をしていると、試験官と思われる女性が、試験の集合場所に近づいてきた。
「これより、Cランク昇格試験を始める!」
この言葉を合図に、私達は気を引き締めた。
「試験内容は簡単、この森で目的の薬草を獲ってくるだけよ。」
私は少し嫌な予感がした。
「獲ってくる薬草は、ドラゴンハーブ。森の最奥に群生する、上級混乱解除薬の原料よ。」
(上級混乱解除薬の原料の依頼って、何故かCランクに設定されているのよね……)
私はより一層警戒を高めたが、周りは簡単とでも思っているようで、少しざわついていた。
隣で少年がころころ表情を変えながら話を聞いていたのは気にしないでおく。
そんなことを考えていると、試験官の女性が叫んだ。
「話は最後まで聞け!今回は1人じゃ厳しい難易度だから、ペアを組んでもらう!」
周りがさらにざわつくと、試験官が続ける。
「舐めるのは勝手だが、助けはない。よく考えて行動するように!」
(ドラゴンハーブが見つからないのか、ドラゴンハーブに危険があるか、ドラゴンハーブが入手困難な場所にあるかの3択でしょうね。仲間選びが大切そうだわ。)
私は優秀な仲間を探そうと声をかけてみるが、全員が見た目で判断するような輩ばかりで話にならない。
結局私が組めそうなのは、さっき近くにいた少年だけだった。
(あの子なぁ、貴族の坊ちゃんかなんかだと思うんだよなぁ。)
あの少年は強いとは思えなかった。
近接武器すら持っていなさそうだったし、魔法師だとしても魔力制御の基礎すらなっていなかった。
(魔力だけは無駄に多かったけど、強力な魔法が使える人間を冒険者にする訳がないから、強力な魔法が使えずにDランクまで権力の力で上がったお坊ちゃまの可能性があるのよね……)
それでも他に組めるような人もいなく、私は少年に声をかける。
「一緒にペア組まない?あなたが一番強そうだし、周りは子供と組むつもりはないって断られちゃった。」
「いいよ!僕もちょうど声をかけようとしてたんだ!」
お世辞に誉めてながら誘うと、嬉しそうに了承してもらえた。
「ペアは決まったな……それでは、試験開始!」
その合図と共に各々の森に駆け出した。
森をしばらく進むと、少年が話しかけてきた。
「僕はレクト!よろしくね!」
「レミーよ。この試験の間だけよろしくね。」
私はレクトと必要なこと意外関わるつもりはなかった。
「ねえ、レミーはどんな戦い方をするの?」
だが戦闘スタイルは必要かと答える。
「風属性魔法を中心とした剣を使っての戦闘よ。」
「へえ〜。ちなみに僕は魔法中心の戦い方だよ。」
私はやっぱり魔法か、と思いながらも答えておく。
「いいじゃない。私、魔力量は多いけど、風属性魔法があまり伸びなくてね。」
「それにしては強いみたいだけど?」
流石にそれくらいはわかったようだ。
「そうね、風属性魔法があまり伸びなかったから、魔法の精密さを極めているのよ。」
「へえ〜、僕も魔力は多い方だけど魔法の精密さとかは気にしてないな。」
じゃあどうやって戦うの?と心の中でツッコミを入れながら、私は1つアドバイスをしておく。
「それでもいいけどこの先ランクをあげたいなら、魔法の精密さはあって困ることはないわよ。」
「それもそうだよね〜。」
レクトは真剣になやんでいるようで、やる気はあることに対して安堵した。
それから魔物に一回も出会っていない私達は、順調に森を進んでいた。
「魔物、でないね?」
「他の受験者が狩り尽くしているんでしょう。」
(あのくだらない噂のせいでしょうね。)
そうこうしていると、本当に一回も戦闘せずに森の中心あたりまできてしまった。
「それで、どれを獲って帰ればいいの?」
「わからないわよ、そんなの。」
「え、つまりどうすれば?」
「中心にある植物全部持っていけばいいでしょ。」
「えー。」
私は見た目がわからないならしょうがないでしょと、心の中で言いながら、手当たり次第植物を採取し始める。
するとレクトがドラゴンハーブは魔物を引き寄せるから、植物を抜くたびに周囲を警戒すれば、ドラゴンハーブがどれかわかるんじゃない?と言ってきた。
「なんでそんな情報持っているのよ……まあいいわ、その作戦でいきましょう。」
(本当になんで?)
知識が豊富なのだと勝手に納得して、植物を探し始めた。
しばらく探したがドラゴンハーブは見つからず、私は焦っていた。
(方法を変える?でも今更かしらね。)
「とりあえず続けましょう。ここまできたら見つかるまでやるわよ……」
私がそう言うとレクトは若干怯えた表情をし、また植物を探しにいった。
そしてその時は訪れた。
「レミ〜、新しい植物見つけたよ〜。」
「今行くわ。」
私な合流したのを確認すると、レクトは植物を引っこ抜くが、何も起こらない。
(またハズレね。)
そう思った瞬間だった。
周囲からどんどん魔物が集まってきて、私達を取り囲んだ。
「レミー、これって……」
「ええ、囲まれたわね。」
私はカイにプレゼントしてもらった、鉄製の刀を構えて考える。
(百匹はいるわね……レクトを守りながら戦えるかしら?)
レクトがある程度戦えることを祈り、私が魔物に対して踏み出そうとした瞬間だった。
横でレクトが魔法を唱え、魔物に火の玉が激突する。
(そうえば魔法師だって……って威力高!?)
さらにレクトが魔法を唱えると、風が吹き荒れる。
(風属性魔法?いや、複合魔法!?)
私はレクトが魔法を放っているのを呆然と眺めていたが、魔物の鳴き声で我に帰る。
(レクトに任せてないで戦わないと!)
私は刀を構え、魔法を使い、相手に切り掛かった。
「ふぁ〜、終わったね。」
本人はあくびをしているが、私の心の中には混乱が渦巻いていた。
「レクト、あの魔法は!?」
私が問い詰めると本人は一瞬ビクッとなったが、すぐに聞き返してきた。
「あの魔法って?」
「さっきの複合魔法のことよ!あんなのAランクの魔法師でも使えるかどうか……」
(もしかしたらAランクよりも威力は高かったかも……)
私は心の中でタントさんの言葉を思い出す。
『世の中には魔族と言われる、生まれながらに身体能力や魔力量が人間よりも数段優っている者達がいる。
魔族はプライドが高く、人間に敵対的だ。
魔力制御も人間よりも雑だが、無駄に魔力だけが高いから、雑な魔力制御でも私達よりも高い威力の魔法が放てる。』
タントは言う。
『もしそんな魔法を使う者に出会ったら、そのときは……』
(魔族の可能性を考えて最大限の警戒を。)
私はいつでもレクトを切り伏せられるように刀に手をかけながら、レクトの返事を待つ。
「成り行きで見れる機会があってね。」
「見れる?……まさか、見ただけであの魔法を覚えたの!?」
(ありえない!そんなこと、できるはずが……)
するとレクトは自分の魔法について私に説明してきた。
「……つまりその写鏡っていう魔法で写した魔法は、好きなタイミングで使い放題ってこと!?」
「ついでに魔力消費も無視してね〜。」
それが本当なら、1人で戦争を終わらせられるような力だ。
私は背筋が凍っていくのを感じた。
「兎にも角にも終わったね!」
「帰るまでが試験よ、レクト。」
私は心の中で渦巻く不吉な考えに蓋をして、さっきと変わらない様子で答えた。
「レクトがいるから試験が楽だったわ。ありがとう、レクト。」
「こちらこそ!また機会があったら一緒に組もうね!」
そんな会話を交わしながら、そろそろ入り口に差し掛かろうとした時のことだった。
「助けてくれぇぇ!」
突然後ろから叫び声が聞こえた。
振り返ると2人の男が、5mはある巨大な熊に喰われたところだった。
私達は瞬時に戦闘準備に入って、熊を警戒する。
(なにあれ!?明らかにこの森に出ていいレベルじゃない!?)
私は勝てる相手かを冷静になって見極める。
(五分五分ね……)
私がこんなことを考えていると、後ろから教官が走ってきた。
「そこの2人、早く逃げろ!あの熊は私が相手をする!」
「わかりまし……ランクは!?」
「Bランクだ!」
そう言いながら教官は熊の方へと走っていく。
(あの熊がBランクで止められる訳がない!あの熊は少なくともAランクじゃないと止められない!)
教官は拳士ファイターのようで、熊に向かって拳を繰り出した。
だか熊はびくともしていない。
それどころか教官の体を手で弾き飛ばした。
吹き飛ばされた教官は木に打ち付けられ、動くのがやっとといった様子だ。
(やばい!)
私が熊に向かって走り出そうとすると、レクトも同じように走り出した。
「レミーは戻っていていいんだよ!」
「勝算はある!足手まといにならないでよね!」
そんなことを言い合いながら、私達は熊に向かって走った。
レクトが教官に襲い掛かろうとしている熊に対して魔法を放つ。
放たれた火の玉は熊に直撃した。
「ガァァァ……」
熊は少し鬱陶しそうにしたが、すぐに火を振り払ってこちらに向かってきた。
「風纏。」
この魔法は正確な魔力制御があるからこそできる魔法で、風を身に纏い、自分の体を風で押したり、剣で切る時に風で追撃を入れられたりする便利な魔法だ。
ちなみにカイに話したら、下手したら体が真っ二つだぞ?と引かれ気味にいわれたが……
(パーティでは魔法師をカバーしながら戦うのが前衛の基本!)
「反射……」
何かレクトが魔法を唱えていたが、私は熊の腕が半分くらいまで切断した。
「私を忘れてくれたら困るのよ。」
(切断までいかなかったのは残念だけど……)
私は剣についている血を振り払って言う。
「ナイスレミー!」
「レクトは少し気をつけなさい!いまのだって私が腕を切らなければ死んでたわよ。」
私がそう言うと、レクトはもう次の魔法を唱えていた。
その瞬間、熊がいた地点に風が吹き荒れ、熊をズタズタに引き裂いた。
しかし私は構えをとかない。
(Aランク以上には確か……)
そう思った瞬間熊が飛び起き、レクトの方に走り出した。
見ると私が与えた傷は完治し、レクトが与えた傷は再生し始めていた。
(やっぱり、再生持ちか!)
「映鏡×10!」
「風刃。」
私とレクトは魔法を放って牽制しようとするが、熊は止まらずレクトの方にまっすぐ走っていく。
(狙いはレクト、でも!)
私は熊の首に3回ほど、刃を叩き込んだ。
風で追撃が入り、熊の首はもう切れかけとなった。
(これなら!)
だか、首が切断されそうになっているのにもかかわらず、熊はレクトに向かっていく。
「レクト!」
(まずい、このままじゃ!)
必死に止めようと叫ぶが、もう熊は止まらない。
そして熊はレクトに渾身の一撃を叩き込んだ瞬間、弾け飛んだ。
(……はぁ!?)
私は全てが無茶苦茶なレクトに対して、もう何か言う気力すら残っていなかった。
Aランク以上は基本再生を待っている。
あの熊は再生能力が異常に高いため、Aランク以上なのではと言われている。




