12.間話 兄の憂鬱
大きな西洋風の建物では、今日もチャイムが鳴り響く。
そんな建物の一角。
そこには気だるげにため息を吐く、赤髪の少年がいた。
「レクト……レクトに会いたい。」
名前はアート。
貴族学院に通っている、レクトの兄にあたる者だ。
そんな彼はチャイムが鳴る中、机で恋しそうに外を眺めている。
「はぁぁぁ……こんなところなんて、レクトのためじゃなければすぐに飛び出して行くのに……」
「おーい、全部聞こえてるぞ?」
そうして恨み言を呟いていると、後ろから声が近づいてくる。
少し面倒に思いつつも振り返ると、唯一の親友––––カイトが立っていた。
「あえて聞こえるようにいってるんだよ。
今日がレクトの選定の儀なんだから……」
「えー、また弟の話かよ。」
「またとはなんだ、またとは。
これは僕の人生を大きく変えることになるんだぞ!
属性が基本の八属性の火・水・風・土・闇・光・氷・雷の内、最初の火・水・風・土のどれかだったら僕が魔法を教えて……」
「おーい、顔がだらしなくなってるぞ–。」
おっと、いけない。
少しレクトへの愛が暴走しかけてしまった。
「っていうかそんなに心配することか?
そもそもお前の使える属性の火・水・風・土が世界で1番出やすい属性なんだから、その4つ全てを使えるお前が心配することなんてないだろ。」
「でも万が一があるかもだろー!」
それにあいつらなら、本当に万が一ってこともあるかもしれないからな。
「っていうか、そんなに言うならお前の貴族の権限で、僕を今すぐに家に帰れるようにしてくれてもいいんだぞ?」
「そんな権限俺にあるわけないだろ。」
いつも通りの冷静なツッコミは無視させてもらう。
都合が悪いことは取り合わないのが1番だからな。
「お前、都合が悪いことは取り合わない高い思っただろ?」
「ナンノコトダ?」
カイトは頭を押さえてため息をつく。
「はぁぁぁ、アートが弟が関わると別人になるのは俺は慣れたが、周りはドン引きだったぞ?」
周りを見渡すと、確かにドン引きされているようだ。
なぜだろう?
「ほんとお前っていつもは優等生のくせに、弟が関わると手がつけられなくなるよな……」
「そうなんだかんだ言って、結局僕に構ってくれるくせに。」
茶化すように言うと、今日は珍しく肯定が返ってくる。
「まあそうだな。
……そうえばお前ってモテるよな〜。
何でそんなにモテるんだ?」
「知るかそんなこと僕に言われても。
まあ確かに4属性持ち、魔力量もトップクラス、さらに成績トップ3に入れるぐらいには頭がいいが、それだけだろう?」
「それに加え、顔が良く、性格もいい。モテないわけがないわけか。」
冗談で言っているのに、やはり全て肯定で返ってくる。
やけに褒めるな、と思い警戒しながら話を聞く。
こういう時は大体面倒な頼み事がある時だ。
「それでだな、今度の帰省の時に、一緒に実家までついてきてくれないか?」
ほらやっぱり。
「やだね!僕がレクトと過ごす時間が減るだろう!」
「このブラコンが!俺がお前について行けばいいだろ?」
「でもそれ帰省にならなくないか?」
「なーに、1日顔を出せば問題ないさ。」
そんなことないと思うが……
前の帰省の時に挨拶ついでにお邪魔したら、「カイトに友達が」と泣いて喜ばれたのだ。
「まあそう言う事で!そっちの家は、お貴族様なら泊めてくれるんだろ?」
「まああの両親なら泊めてくれると思うが……」
「よしじゃあ決まり!」
「え〜。」
こうして冬の帰省は友人がついてくることが決まったのだった。
(……レクト、元気にしてるといいんだけどな。
選定の儀で酷いことになってなければいいんだけど……)
そんな願いも届かず、レクトはこの時初依頼をこなしているのであった。
一応友人の名前はカイト、兄の名前はアートです。




