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お気に入り小説4

嫁いできた花嫁が別人だった。ユリアスが知る真実の愛

作者: ユミヨシ

ユリアス・レテッド公爵は驚いた。

馬車から降りてきたのは、自分が望んだ花嫁ではなく、別人だったからである。


ユリアスは花嫁に向かって、


「私が望んだのはブルーディアナ嬢のはずだが?彼女は輝く水色の髪に青い瞳。この世のものでないような美しさの女性で。一目惚れをしたから、求婚したのだ。でも、君はまるで違うのだが?」


花嫁はにこやかに微笑んで、


「わたくしはリリアーナと申します。ブルーディアナはわたくしの姉ですわ。姉はこんな辺境に嫁ぎたくないという物ですから」


黒髪碧眼の女性は美しい事には美しいが、ブルーディアナの神がかり的な美しさには到底及ばない。


追い返そうと思った。

約束が違うと思った。



ブルーディアナとは王宮の夜会で知り合った。

豪華なキラキラ光る銀のドレスに、ダイヤの首飾りを着けて現れたブルーディアナ。

パルド伯爵家の令嬢で歳は19歳。

見た途端、ユリアスは恋に落ちた。


ユリアスは歳は23歳。

若くして公爵位を継いたので、そろそろ結婚したいなと思ったのだ。

仕事を覚えるのが忙しくて、結婚相手を探すことを後回しにしてしまった。

そこで出会ったのがブルーディアナ。


彼女の周りには他の貴族の男性が沢山取り囲んでいたが、思わず手を差し出して。


「なんてお美しい。お名前は?」


「ブルーディアナ。パルド伯爵家の娘ですわ」


「パルド伯爵家の。私はユリアス・レテッド公爵だ。どうか私と結婚して欲しい」


一目惚れだ。だから、出会った途端、結婚を申し込んでいた。


ブルーディアナを誘って、テラスで話をする。

ブルーディアナは顔を曇らせて、


「わたくしと結婚したい殿方なんておりませんわ。パルド伯爵家は事業がうまくいかなくて、だから借金を抱えているのです」


ユリアスは、ブルーディアナに、


「借金はいくらだ?我が公爵家でいくらでも払って差し上げますから、どうか結婚して欲しい」


「ああ、何てお優しい方。嬉しいですわ」




ブルーディアナと結婚出来ると思ったから、ブルーディアナの家、パルド伯爵家が抱えている多大な借金の肩代わりをした。

両親には叱られたが、どうしても彼女と結婚したかったから。


改めて、パルド伯爵家に行き、結婚の申し込みをした時に鈴を転がすような声でブルーディアナは喜んでくれたのだ。


「有難い申し出ですわ。借金を払って下さるだなんて。わたくし喜んで、ユリアス様に嫁ごうと思います」


パルド伯爵夫妻も嬉しそうに、


「本当に助かります。どうか娘をよろしくお願いします」

「有難うございます」


その時、彼女の妹の紹介は無かった。リリアーナなんて妹がいるだなんて知りもしなかった。


そして、驚いたことに嫁いできたのはリリアーナ。妹の方だ。


リリアーナは懇願するように、ユリアスを見上げて、


「わたくしが嫁いできた事を後悔させませんわ。一生懸命働きますから」


いや、結婚相手が違うって大きな問題だし、後悔するしないの話ではないと思ったが嫁いできてしまったのでは仕方ない。


ユリアスはリリアーナを受け入れる事にした。


リリアーナは良く働いた。歳は17歳。嫁として年若い。

それなのに、屋敷の人達とも打ち解けて、ニコニコ笑って。

使用人達は奥様奥様と言って、リリアーナに懐いた。


リリアーナはユリアスの引退していた父や母とも仲良くなった。


ユリアスの母はリリアーナと仲良くお茶をしながら、


「良い嫁が来てくれてよかったわ。屋敷の事をゆっくり教えてあげますから」


「有難うございます。お義母様」


父も嬉しそうに、


「よく気が付く嫁でな。契約違反をした伯爵家には頭に来るが、リリアーナが来たのならよいではないか?」


いやいやいや、ブルーディアナと結婚したかったのだ。

だから、いまだにリリアーナとは褥は共にしていない。


そういえば、リリアーナはいつも同じドレスを着回していて、公爵家の嫁としてちゃんとしたドレスを与えなくてはとユリアスは思った。


「ドレスをプレゼントしよう。うちに嫁に来たからにはちゃんとした格好をだな」


「有難うございます」


リリアーナにドレスをプレゼントしたら喜んでくれた。

騙された事はもやっとするけれども、でもリリアーナの事がいつの間にか好きになっていた。


リリアーナはにこやかに、


「今日は庭の薔薇を切って貰ったのですわ。部屋に飾れば華やかになるでしょう」


「そうだな」


「お義母様が流行りの店でお菓子を取り寄せて下さったのですわ。後で一緒に食べましょうね」


とても明るいリリアーナ。

本当に可愛くて可愛くて。

ユリアスはリリアーナの手を取ったら、リリアーナは真っ赤になった。


「リリアーナ。正式な夫婦にならないか?いまだに褥を共にしていないだろう?」


「ユリアス様。良いのですか?」


「ああ、愛しのリリアーナ。君はよく働いてくれる。両親も大喜びだ。だからどうか、私と褥を共にしてほしい」


「喜んで」


赤くなるリリアーナが可愛かった。


しかし、翌日、事件が起きた。

馬車が到着してブルーディアナがやってきたのだ。


ユリアスとリリアーナに面会を求めているという。

客間に通したらブルーディアナが、


「ユリアス様。ユリアス様は大金持ちですわよね。結婚して差し上げますわ」


そう言って、抱き着いてきた。

ユリアスは驚いた。いきなり何をするんだ?


「私はリリアーナと結婚した。君とは結婚する気はない」


「元々、わたくしと結婚する予定だったのでしょう。でも、わたくし辺境は嫌で、リリアーナに変わってもらったのですわ。でも、考え直したのです。辺境もいいかしらって」


リリアーナは真っ青な顔をしている。

ユリアスは安心するように、リリアーナの手を取って、


「私の妻はリリアーナだ。最初は君を求めて結婚を申し込んだ。でも、君は嫁いでこなかったじゃないか。今更、嫁いで来るだなんて何を考えているんだ?」


「だって、もう贅沢が出来ないんですもの。宝石やドレスを買いまくって、また借金が出来てしまったわ。父も母ももう、ドレスや宝石を買うなって。わたくしは美しい。わたくしはもっと着飾りたいのよ。だから結婚してあげるわ」


リリアーナは涙を流して、


「お姉様はいつもそう。お父様もお母様も強く言えなくて。贅沢ばかりして。どんなにわたくし達が苦労したか。帰ってっ。お願いだから。帰ってっ」


ユリアスはブルーディアナに、


「私の妻はリリアーナだ。帰って貰おう」


ブルーディアナは涙を流しながら、


「嫁いであげるって言っているのよ。お願いだから。リリアーナを追い出して。わたくしを愛しているって言ったじゃない?」


「過去の話だ。出て行って貰おう」


確かに王都に居た時にブルーディアナに一目ぼれした。

夜会で輝いていたブルーディアナ。

でも、彼女は家族の事を考えず、贅沢ばかりして。

自分は何を見ていたんだろう。


リリアーナは泣きながら姉ブルーディアナの事を話してくれた。


「お姉様は贅沢ばかりして、ドレスや宝石を買いあさって、飽きると人にあげてしまうの。だから、借金ばかり増えてしまって。わたくしは本当にお金が無くて苦労をしたわ。でも、今は幸せ。ユリアス様やお義父様、お義母様がとてもよくして下さるから。使用人の人達も親切にしてくれるし、本当に幸せよ」


泣くリリアーナを抱き締めて、


「これから、もっと幸せになろう。リリアーナ。嫁いできてくれて有難う」


リリアーナを妻に出来てよかった。

本当に心からそう思えた。



金が無くなったパルド伯爵夫妻は爵位を返上した。

リリアーナの懇願により、ユリアスは領地の小さな屋敷に二人を住ませる事にした。

パルド伯爵夫妻はユリアスとリリアーナに涙を流して感謝した。


伯爵家も売り払われて、行く宛もないブルーディアナはどこぞの商人の愛人になったらしい。

だがその商人にも飽きられて、娼館へ身を落とした。

その後、どうなったかユリアスは知らないし、調べたいとも思わなかった。


愛しいリリアーナが頬を染めながら報告してきた。


「ユリアス様。赤ちゃんが出来たみたいなの」


「え?本当かい?」


何て幸せな。

愛しいリリアーナを抱き締める。

新しい命の誕生を楽しみに愛しい妻の温もりを幸せに感じるユリアスであった。


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 ブルーディアナは女性なので辺境騎士団には行けないのですね。何とブレない辺境騎士団でしょうか。どうしようもない悪女を引き取ってくれる愉快な集団や個人もあれば良いのに、と思ってしまいました。……実は彼女…
自分で稼いだ金でやるならいいけど、領民が汗水垂らして働いた金で贅沢と施しごっこをしたらいけませんわな…。 リリアーナ両親は良くも悪くも領主の器じゃ無さそうですし、領地を返上してホッとしたんじゃないでし…
>お姉様は贅沢ばかりして、ドレスや宝石を買いあさって、飽きると人にあげてしまうの。 「何故あげる?売ればいいのに」が第一感想でした。 飽きるまでそれなりに使うからドレスは売れないかもしれませんが、宝…
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