第1話 匿名
俺の名前は家令遊歩。
独身アラサー彼女いない歴イコール年齢のとんでもない化け物だ。
俺はフリーでジャーナリストをやっている。まあ、だがこれが全然稼げない。そこで、夜宮のところの探偵所でアルバイトをしているんだが、これがもはや俺の収入のほぼすべてになってきている。
ところで
異常者の人権が回復してから十年がたった。あの時の世間の盛り上がりようはすごかった。
だがアナザー事件なんかももう過去のこととして扱われ、今では健全に異常者の研究が行われているらしい。
本当のところは知らないけど。
まあ、マスメディアの報道の真偽なんて俺は興味がない。
俺が興味があるのは、アナザー事件のことが露呈したきっかけの、例の週刊誌のリーク元だ。
あの時俺は記者をやっていた。まだ新人で、バカだったけど、馬鹿正直に真実を伝えるために動いてた。
俺はアナザー事件を知ったとき、悔しかった。こんなでかいスクープ、国に喧嘩吹っ掛けるような挑戦状を出せるやつが、まだこの業界にいたと思うと、そのスクープを俺が出していないのが、なんだかとても腹が立った。
というのも俺は、以前からこの件について足を突っ込んでいたからだ。
俺は、というか報道機関のたぶんほとんどが、このアナザーという機関に疑問を抱いていた。
この機関は正式には公表されず、芸能人のやらかしのニュースが盛り上がっていたころに閣議決定され、アナザーのニュースは番組の合間にある短いニュース番組に揉み消され、新聞でも大きく見出しにはならなかった。
表向きには、日米共同の理化学研究機関という名目で、ほかにないという意味でのアナザーという名前は理由としては理にかなっていた。
だがどこにあるのかもわからず、何を研究するのかも追加発表もされなかったことで、世の中から忘れ去られていくようになった。
いかにもな怪しい機関が発足されたなと俺は当時思っていた。
そこで俺は独自で調査することに決めた。俺がアナザーについて記事にしようと上司に頼み込んでも「もっといいスクープがあるから」と一蹴されたので、何か大きい決定的な証拠をつかんでやろうと決意した。
だが、一向に証拠はつかめなかった。俺は新人で政府高官とも別に顔見知りじゃないし、そんな簡単にはいかなかった。
一方で調査を進めていくうち、この研究所の実態がだんだんとつかめてきた。
ほかにも怪しいと思っている俺みたいなやつがいて、研究所の候補をリスト化しているやつがいた。
そこで俺はリストにある建物に出向き、現地住民の声を聴いたりして、怪しいところをさらにピックアップしていった。
そこで、例の研究所に俺はたどり着くことができた。
人気がない寂れた無人の建物のように見えたが、どうやら地下に何かあるらしかった。
昔そこの建物はなんかの事務所?だったとかで、そこに入ったことがあるという住民に話を聞くと、地下は意外に広いらしいということまで分かった。
そんな矢先あの報道がドドンと出てきたってわけだ。あと一歩とまではいかないまでも、やっとこぎつけたものだっただけにショックはデカかった。
しかも、それが匿名希望の方からのタレコミだって?じゃあ俺は何をやってきたっていうんだ。
俺は絶望した。と同時に、興味がわいた。
匿名希望はどんな奴なんだろう。俺は気になった。
素性は不明。だが、どうやら、内部のものではないらしい。
後々分かったことだが、研究者の方々は、アナザー発足以来、一歩もあの建物から出ていないらしい。
ネットも使えていなかったそうだ。
また一部の政治家しか内情を知らず、厳しい情報統制が引かれていたようだ。
俺は例の週刊誌の会社に出向いた。そこで俺は匿名に関する情報を手に入れることができた。
長いので中断