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JKのプロ野球GM奮闘記  作者: 秋山如雪
第1章 女子高生GM誕生
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第7話 奇妙なボディーガード

 私にとって、初めての挑戦であり、シーズン開始までまだ時間はあるものの、問題は山積みだった。


 最初にチームのことを考えたいが、その前に先日の勝山とのことが頭をよぎっていたため、そちらに着手することにした。


「ボディーガードですか?」

 オーナー室に呼んだ棚町愛華に告げる。


「はい」

「しかし、ボディーガードなら私がいます。一応、空手の経験もあります」


「わかってます。ただ、あなたは強くても女性です。本気になった男にはかないません」

「そうかもしれませんが……」

 なおも、不満そうに俯く彼女に、私は優しく声をかけた。


「何よりも、私はあなたが傷つくのを見たくはないのです。友人として」

「GM」

 この一言がきっかけで、秘書的立場である棚町愛華によって、ボディーガードが選ばれ、スカウトがかけられた。


「ただし」


 私は彼女の耳元でささやいた。条件を言ったのだ。それを聞いて、彼女の表情が一変する。


「えぇっ。本当ですか?」

「はい」

 にこやかに私が笑うと、彼女は絶句していた。


 1週間後。

 一人の屈強な男が面接にやってきた。


 見るからに細いが、その分、ものすごく「絞って」あり、特に上半身が筋肉で覆われているのが服の上からでもわかる。


神戸かんべわたるさん。年齢は42歳。元・バンタム級プロボクサー。経歴は間違いないですね」

「ああ」

 ぶっきらぼうで、一見、態度が悪いように見える、短髪に顎髭(あごひげ)をたくわえた男。普通なら、粗野で問題を起こしそうにも見えるから、ほとんど勝山と変わらないだろうという見識を持つ者も多いはずだ。


 ところが、私が注目したのは、彼の「性癖(せいへき)」だった。


「私が聞きたいのは一つだけです。熟女好き、というのは本当ですか?」

「ああ、間違いねえ。俺は35歳以上の女にしか興味がねえ」

 隣のソファで、棚町愛華が呆れたような、悲しげな表情で天を仰いでいた。


 そう。私は、「自分が狙われない」ように、あえて「熟女好き」で、「女子高生には興味がない」男性をボディーガードに選んだのだ。ついでに言うと、愛華まで彼の性癖の対象からは外れている。


 そのために、彼の素行調査までして、性癖を調べ尽くしたので、恐らく嘘は言っていないはずだ。


 その上、彼はとてつもなく、強かった。

 現役時代から、その強さには定評があり、いくつもの試合で勝っており、タイトルも獲得している。おまけにこう見えて、「頭がいい」と評判だった。


 プロのボクサーのパンチは、「人を殺せる」凶器になるという。もっとも、通常プロボクサーが一般人に喧嘩を売ることはまずないが、それでも、「抑止力」として十分な機能を発揮する。


 たとえ私にちょっかいを出そうとする者がいたとしても、隣にプロボクサーがいたら、そうそう手は出さない、いや出せないはずだ。


 その辺りから、私が興味を持って、彼の身辺調査を行ってから、彼に白羽の矢を立てたのだ。

 現在、引退した彼はボクシングジムのオーナーをやったり、後進の育成をしているらしいが、四六時中でなくてもいいので、せめて私が「勤務中」の日中くらいはボディーガードを頼みたいと思っていた。つまり、実質的にはアルバイトに近い。


「神戸さん。ボクシングで勝つ秘訣とは何だと思いますか?」

 唐突に私がそんなことを告げたから、彼は意外だと思ったのか、少し熟慮してから答えを引き出した。


「考えることだな」

「考えること、ですか?」


「ああ。ボクシングはああ見えて、頭を使う。相手のパンチが届くか、届かないか。相手の動きを見極め、先を読む力がいる。単純な殴り合いじゃ勝てんのさ」

「同じですね」


「同じ?」

「ええ。野球も頭を使うスポーツです。面白いですね。あなたを採用します。せっかくなので、野球の試合を見て下さい」


「了解だ」

 お互いに笑顔で握手を交わす。さすがに元・プロボクサーの拳はゴツゴツしていて、とても力強かった。


 こうして、まずは身の安全を確保する。


 次の策は、もっともっと大変だった。

 そう、チーム自体の問題だった。

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