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JKのプロ野球GM奮闘記  作者: 秋山如雪
第1章 女子高生GM誕生
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第6話 小娘の戦い

 しかし、ある意味での「逆風」はこれだけではなかった。


 そもそもプロ野球界は厳然たる「男社会」だ。そこに二人も女が入り、しかも一人は女子高生。


 当然、色々と問題になった。


 まずは素行不良の、あの勝山だった。


 彼には、GMとして、つまり責任者として、私自らがトレードを告げに行く。そもそもGMの役割として、こうした「宣告」が必要であり、それが故に「選手から嫌われる」こともあるのだが、彼の場合は、そのベクトルが違っていた。


 珍しくロッカールームに入ってきて、しかも私が制服姿だったためだろう。


 彼は、舌なめずりするように、明らかに「性的」な目で見つめてきて、近づいてきた。

 彼ら選手が着ている、千葉ユニコーンズのユニフォームは、白を基調とした、縦じまのピンストライプで帽子の色は黒だ。

 そのユニフォーム姿のまま、彼は顔を近づけてきた。


「おおー。あんたがGMか。エロい体つきしてるな。処女か。じゃあ、俺が男という物を教えてやるよ」

 下卑た瞳と、荒い息を吐いてきた。


 私は、予想以上に接近されたことで、ひるんでいたが、すぐ近くにいた棚町愛華が私を守るように間に入り、鋭い一言を言い放っていた。彼女は空手の有段者でもあったから、迫力があった。


「セクハラです」

 と。


「セクハラだあ? んなもん関係ねえんだよ。だったらまずあんたから犯してやろうか」

 一触即発の睨み合いになるが、私は溜め息と共に、彼に無造作に告げた。


「勝山選手。あなたは、大阪にトレードになりました。荷物をまとめてさっさと退出して下さい」

「ちっ」

 結局、それ以上の事態に発展はしなかったが、この最も素行不良な男がいなくなったことで、チームは少しだけ平穏な空気に包まれたようになった。


 しかし。

 事態はそんな簡単な問題ではなかった。


 監督だった。


 一度、チーム編成や今シーズンの戦略について、彼と話し合うべく、私は愛華を連れて、島津監督の元へと向かった。


 だが。

 監督室には入れてくれた物の、彼は相変わらず渋い表情を浮かべていた。

「島津監督。今季の戦略についてですが、出塁率とWHIPが高い選手をメインで使ってもらいます」

 そう告げると、さすがに彼は嫌な物を見るかのように、眉根をひそめた。


「なあ、GM」

「はい?」


「俺は所詮、雇われ監督だから、あんたの言うことに従うしかないんだが」

「ええ」


「それでも一言だけ言っておきたい」

「どうぞ」


「それじゃ勝てんぞ」

「統計学的には、勝てます」

 すかさず、棚町愛華が反論するが、彼女にも彼はいい顔はしなかった。


「統計学的には、ね。しかし言っておくが、北浦の穴を埋めたとしても、このチームには色々と問題があるんだ。だから勝てない」

 尚も、ぐずるように渋い表情を浮かべる島津監督に、私は言い放っていた。


「勝てなければ、あなたをクビにするだけです」

「……」

 さすがにそこまで言うと、彼は黙ってしまったが、私は一応、彼にも「発破をかける」必要があると見込んでいた。


「その代わり、リーグ優勝したら、あなたの年俸を今の倍に上げます」

「本当か?」


「はい。約束します」

 そこまで告げて、ようやく彼は納得はしていない物の、理解は示してくれるのだった。


 そこで、今度はこの島津監督との話し合いになる。


 問題は、「不振者」の立て直しだったが、これが私の想像以上に、「大変な」問題だった。


 シーズン開始まで、2か月あまり。そろそろ春季キャンプが始まるという段階で、千葉ユニコーンズには大きな問題があることが判明するのだ。

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