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「それでシェリー、これからどうするんだ?」
「うん? どうするって?」
「……エレインの治療をして、また暴れたらどうするつもりなんだ」
数えきれないほど大量の子供を切り刻んだことで多少顔付きが変わったレイが、司の指示通りファルケの治療をするシェリーに問い掛ける。
「別に私はファルケを殺したいわけじゃない。グレムリンは殺すけど、ファルケは人間だよ」
「……お前を殺そうとしてたんだろ? それで良いのか?」
シェリーは何を当たり前のことをとでも言いたげな顔で、コクリと頷いた。
「それはそれ。ファルケはこれからも、私達には必要な人だから」
「…………そうか、なら別に良いんだが」
とはいえ、片腕を失ったファルケがここで命を落とさなかったところで、これまで通りに戦えるかと言えば別である。
彼女の動きは未来予知じみた変則的な軌道と二丁の銃に依存している部分が大きかったから、片腕では戦力が半減するどころの話ではない。
『お二人さん、ちょっと良い?』
「……あんたがツカサか。シェリーを育てたとかいう」
「あれ? レイ――さん、ツカサのこと知ってるの?」
「あぁ、さっき呼ばれた。だからここに来れたんだ」
レイに言われ、シェリーはようやくこの戦場にレイが突然現れた理由を察した。司がシェリーの通信機を使ってレイを呼び出したのだ。
突然無線を送ってきた知りもしない相手の言う通りに動くレイのことが少し心配になるシェリーだったが、それを言えばもっと心配なのは、先程から一歩も動かないクレアの方だ。
シェリーはクレアの方に視線を向けたが、置物のように静かな彼女が動く気配はない。
「とりあえず、ファルケが居ても居なくても予定は変わらないでしょ。この中ならグレムリンに襲われることはないみたいだから、籠城するには丁度良いよ」
シェリーの提案に、少しだけ気まずそうにしたレイは「あー」と頬を掻く。
「悪い、襲われることは襲われるかも」
「……え?」
「さっき上で子供を殺したが、反撃された。一階には追ってこないみたいだが……」
『あぁ、たぶんそれなら大丈夫。音聞いた感じ、君達が下に降りてからは動いてないみたい。目の前に居る敵対者への反撃はするけど、居なくなったからもう忘れたんじゃないかな。そういうプログラムなんだよ。雑な作りだなぁ』
「……ってことは、やっぱり俺が殺したのは」
『ここで作られたグレムリンで合ってるよ』
レイは、人間工場エリアの惨状を目の当たりにした。
無数の弾丸を喰らって粉々に砕けた設備は元の形を保っているとは言い難いが、そこら中に落ちている臓器や飛び散っている血の量は、シェリー一人分と比べても異常に多い。
上で子供の姿をしたグレムリンを殺したレイは、それがここで作られていたのだと察し、目を逸らした。
「じゃあ――とりあえず、場所移るか。ツカサ、どこかに休めそうな場所はあるか?」
『目星は付けてある。下の階行こっか』
シェリーは気絶したファルケを背負い、レイはクレアをお姫様抱っこで抱き抱える。
――培養槽が割れ床に落ちた無数の目玉が、出て行く4人をじっと見つめていた。




