第91話:慰みもの
「4-706!
てめぇらの出番だ!早く出ろ!
これから『アリーナ』へ向かう!」
「「………」」
先ほど牢屋にブチ込んでくれた男が扉を乱暴に叩く
えー、また連れ出された…
しかも手枷まで嵌められて…
あれ?今回は1人だけか
いや…、まだだ…
まだ暴れるわけにはいかない
せめてルカとセリーヌの居る場所だけでも把握しないと
「おいアンタ。
これから俺たちに何をさせるのか説明してくれ。
この場所と仲間の行方もだ」
「てめぇ…!立場を弁えろ人族如きが!
お前らはただ闘って、会場を湧かせれば良いだけだ!
調子に乗るな黒髪!」
ドカッ!
口は悪いが一応少し教えてくれたな
蹴りも一緒にだけど
蹴られた瞬間、横のフレイが凄い形相になったので慌てて首を振った
気持ちはありがたいけど、今だけは耐えてくれよ!
闘わせるってことはこの場所は『裏武闘会』で間違いなさそうだ
しかし誰と?
もう少し聞いてみるか
「闘うって、まさかアンタらとか?
はっ、それなら余裕そうだな」
「フン、バカが!我々は高みの見物だ!
お前らが闘うのは魔物…それも最近『宴』で気が立っているものばかりだ!
喋ってないで早く進め!」
ドカッ!
いてっ!また蹴られた
まあいい、情報は得られた
人間…とくに傲慢な性格の奴は基本的に教えたがりだ
こういう風に質問すればペラペラ喋ってくれる
コイツが扱いやすくて助かるぜ
『宴』の魔物か…
そういえばオズのおっさんは順調かな?
また他のドラゴンと喧嘩してないと良いけど
「アンタ…顔覚えたからね?覚悟しなさい。
この件が片付いたら二度と表を歩けなくしてやるから」
フレイがヤ○ザみたいな脅し文句を男に掛けると、下卑た表情を浮かべた
「ああ、そうだ。おい、黒髪。
お前はとっとと死んでもらって構わないぞ。
相方が1人になっても『ラウンド』は次に持ち越させるからな…
インターバルの間、控え室でこの女をじっくり楽しませてもらうからよ…!」
男はフレイの全身を舐め回すように見ながら、耳障りな高笑いをする
クズが…!
………………?
今、最悪なイメージが頭に浮かんだ
ルカとセリーヌは眠らされて意識がない
まさか、この男が言ったようにアイツらは『慰みもの』にされているのでは…?
………………………………………………………
「かふっ…!?
き……さ…ま…何を…!!」
「レイト!?何してるの!」
その考えに至った瞬間、気づけば男の首を拘束された両手で締め上げていた
男の両足は地から離れる…
なぜ俺の筋力で男を持ち上げられたのかは分からない
しかし、そんなことはどうでもいい
ギリギリ…と、指が男の首に食い込む
「今すぐルカとセリーヌの居る場所を教えろ…!
どこにいる!!」
「グッ…!しょ…正気か…!?
俺に手を出せばお前の人質は…
ぜっ、絶対に報告してやるからな…!」
「…報告ってのは死んでも出来るのか?」
「ヒイッ…!?」
男の目が恐怖に染まった
自分が死ぬかもしれない状況になったのはこれが初めてなんだろう
だが同情の余地はない
今ならこのまま首をへし折れ…
「ジョ、ジョナサン様の『秘密部屋』だ!
あの方は、闘技者の家族や仲間をそこに集めてお前たちを闘わせているんだ!
ばっ、場所は知らない!」
「…………」
俺は締め上げた手を解放した
コイツには本当の恐怖を味わせてやる
「ゲホッ…ゲホッ…!」
「おい、テメェ。
誰かにこの事を言ってみろ?
もし仲間のバッドニュースが少しでも入ってきたら…」
ブン!
「なっ!?消え…た?」
「この通り転移で真っ先に殺してやる。
お前の首に座標を打ち込んだ。
いつでもお前を呼び出して殺してやれることを忘れるなよ?」
「くっ…首ィ!?わっ…分かった…ッ!!
絶対に、い、言いません!」
輪っかの座標が首に掛けられている様はまるで自由を失った奴隷だ
男の目には絶望しか映っていないだろう
自分の生殺与奪権が目の前の人族の手に握られているのだから
首を抑えながらカタカタと震える男をフレイが脚先で小突いた
「アンタ…まさか尋問ができたなんてね…
ガルドでそこまで習ってたかしら?」
「…いや。
でも俺が心理学を専攻してるの覚えてるだろ?
できるだけコイツの深層心理に働き掛けただけだよ」
「へぇ〜!
ね、今度それ私にも教えてよ」
なんてカッコつけて言ってみたが、半分は成り行きに近かった
情報を吐かなかったら本当に殺していたかもしれない
コイツの言動から察するに、ジョナサンという男は理知的な奴のようだ
人質に手を出そうものなら闘技者の暴動が起こるかもしれないから『秘密部屋』なんて所に集めたんだろう
小賢しい真似を…
☆☆☆
「ちょっとアンタ!!
フラフラしないでシャキッと歩きなさい!」
「ハ、ハイィィィ!!」
「…完全に立場が逆になったな…」
先ほど恐怖に染め上げた男を先頭に立たせ、魔物と観客が待っている『アリーナ』とやらへの案内を続けさせた
手錠を掛けられている俺らが、攫った連中のケツを蹴っている…
傍から見れば滑稽だ
「あ、あちらの扉の向こうが武器部屋です…
中で武器を選んだら門番に声を掛けて下さい。
アリーナの門を開けてくれるので…
その後は、すぐ魔物との戦闘っす…」
男はビクビクしながら、その扉を指さした
まだ聞くことがある
「試合のルールは?詳しく説明しろ」
「はっ、はい!
制限時間10分の『3ラウンド制』となっています。
闘技者は2人1組で魔物に挑み、倒すか時間まで生き残れればインターバルを挟んで次の『ラウンド』に移行します。
ただ…倒せなかった場合は、次の『ラウンド』にその魔物も一緒に持ち越されます」
なるほど…
つまり10分以内に倒さないと、どんどん魔物が増えてジリ貧でこっちがくたばっちまうのか
ドラゴンとかじゃない限りは大丈夫だと思うけど…
ま、それはそれとして、このまま闘い続けるのは癪だ
俺は男の肩を叩いて笑顔で『お願い』した
「ところで、君に頼みがあるんだけどさぁ?
ジョナサンの秘密部屋の場所…
代わりに君が探しといてくれない?
…俺らの試合が終わるまでに分からなかったら殺すから」
「えええええええ!!!?
そ、そんなの俺には……」
じわりと男の目に涙が浮かび始めた
自分には無理とでも思ってるのだろうか?
いやいや、人間死ぬ気でやれば何でもできる
「なんなら、その場所を知ってる奴を連れてくるだけでも良いぞ。
ちなみにこの女、傭兵で俺よりも強いから。
あんまりモタモタしてると、試合とお前の人生すぐ終わるよ?」
「へ、へえっ!?は、はいィィ!!
すぐに行って参りますぅぅ!!!」
男はお辞儀をして、ものすごいスピードで消えてった
がんばってね〜
手を振った瞬間、頬に痛みが走る
「いひゃいいひゃい!なに!?」
ギュイっと、フレイから頬を引っ張られた!
「あんな言い方で発破かけるの何か腹立つんですけど?
アンタの中で私どういうイメージなのよ」
「頼れる仲間だけど?」
「ス、ストレートね…
まぁいいわ。絶対に生き残るわよレイト!」
「おう!」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
いつも泣いてばかりの零人が初めて人に対して殺意を持ちます。
ある意味、怒らせるといちばん怖いのはこの男かもしれませんね笑
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