第78話:リックの懇願
「さて、少々お話がズレたわね。
本題はなぜ貴方たちが〝飛び級〟できたかについてよ」
「は、はい」
どうやらフレイが退席した後も話を続けるようだ
正直、さっきの威圧が怖かったからできれば俺も帰りたい
けどそんなこと言えるわけがない
「おそらく魔族が関係しているのでは?
計らずも、我々は『魔族の国』の計画を阻止した。
それがいちばんの実績として認められた…」
「あらぁ…正解よ、蒼のお姉さん。
もしかして、ギルドで噂されてるのは貴方の方なのかしら?」
ルカは気を取り直して、いつも通りクールに振舞った
こういう時はすごく頼りになるんだよね、ウチの相棒は
「『世界機関』からこう通達が来ているわ。
『今回、グロック村の襲撃を未然に防がなければ、王都は陥落し亜人の国は滅亡した。
この危機的状況を救った者に相応しい報酬を与えるべく、いちばん功績の大きいパーティーについては全員〝飛び級〟扱いにせよ』
…まったく、開いた口が塞がらなかったわぁ」
ギルド長はハア…と艶っぽい吐息を吐いて、肩をすくめる
『世界機関』ってどんな組織なんだろう?
少なくとも、敵ではないとは思うけど…
「ただ今回は異例中の異例。
めったにある事じゃないから、調子に乗って他の冒険者に言いふらしたりしないように。
勘違いした冒険者達が身の丈に合わないクエストに行って死んでしまうかもしれないから。
それを貴方たちに分かって欲しくて今回は来てもらったわ」
「りょ…了解です。絶対誰にも言いません」
元より自慢する気はないけどね
きっとそんなことをしたらドラゴンの災いが降りかかる
「長々と失礼したわね。
これで面談は終了よ。
最後に何か質問はあるかしら?」
質問…
あっ、そうだ
せっかくだからこの人に俺らが今追ってる件について聞いてみよう
俺はスマホ取り出し、写真アプリを起動して彼女に画面を見せた
例の2人の騎士だ
「えっと…この2人に見覚えはありませんか?
俺たちコイツらを探しているんです」
「あら?珍しい魔道具ね…
…なっ…!?まさか、魔族…いえ魔王なの!?」
「いや違う。
私たちも最初はそう疑っていたが、ガイアの口ぶりから察するに、そいつらは魔王ではない。
だが、奴らもその騎士達を探している」
「そう…
でもゴメンなさい、魔王ではないというのなら分からないわ。
それよりもあなた達はいったい…?」
「俺たちは…」
☆☆☆
ギルド長に俺たちの詳しい素性と目的を話した
その話に彼女は目を丸くさせながら、興味深く聞き耳を立てていた
「異世界…
そんな夢のようなお話が本当にあるなんてね。
それに、まさかルカさんがあの『紅の宝石』の妹だなんて…
人生、長く生きるものだわ」
「…あの、アンナちゃん。
あんまり年齢の話するのはやめた方が良いと思うのですニャ」
セリーヌはおそるおそるギルド長に申し出た
こいつの前で歳の話はご法度だったな
そんな提案に彼女は口元を手で抑えながら笑い飛ばした
「やぁねえ、ただの自虐よ。
笑ってちょうだいな」
クスクスと愉快なギルド長
俺たちは笑えてもその猫だけは笑えないんすよ
おっと、これも聞いとかないと
「あ、すみません。もう一個聞きたいです」
「んん?なぁに?」
ううっ…
やっぱこの人の声、なんかゾクゾクする
まるで声で耳を舐められているような…
この湿っぽい感じ…クセになっちゃいそうだ
表に出さないよう必死に取り繕う
「え、えっとですね。
王都で『裏賭博場』って所に行きたいんです。
どこにあるかご存知ですか?」
「もちろん知っているわ。
たしか最近、何か騒ぎがあったとかで場所が変わったわね。
でもあそこは陽の光を浴びれない子たちが集う場所よ?
貴方にはちょっと早いんじゃないかしらぁ?」
挑発するような甘い声でささやく…
ぬあああ!!
アカン!
いま耳に変な電流流れた気がする!
これ以上ここにいるわけにはいかない!
「い、いや、遊びたいんじゃなくて、そこに知人が居るので会いたいだけです!
ちょっと人助けでその人の力が必要で…」
「そうなの?
それなら教えてあげるわ。
でも、あんまり長居しちゃダメよ?」
☆☆☆
「…ただいまぁ…」
「む、戻ったかマミヤ殿。
先ほどフレイ殿が猛スピードで出ていったのだが、上で何かあったのか?」
「ああ、多分怖くなって逃げたんだと思います。
そのうち戻ってくると…」
「怖い???」
1階の酒場へ戻ってくると、ナディアさんとザベっさんの他にジオン達も合流していた
……ん?
ジオンの隣にいるのは…子供?
耳モフモフしてる…
「レイト殿、聞いたぞ!
君たち4人とも昇級したそうだな!
これは祝杯をあげなければならんな!」
「や、やめてくれって…
そんな大げさな…」
「おいジオン。
そろそろ俺を紹介しろ」
フサフサ耳の子供がクイクイっとジオンの袖を引っ張っている
おお、可愛い!
「ああそうだった、すまない。レイト殿。
彼が僕の友人の『テオ・マスカット』だ」
マスカット…?その美味しそうな名前…
あっ、もしかしてこの子が!
「ああっ!
『裏市場』を壊滅させたって『人狼』の!」
「ははははっ!
それだけ聞くと、俺はとんだ悪党だな。
よろしくレイト。
アンタと話してみたかったんだ」
「あ、これはどうもご丁寧に…」
『人狼』の子ど…いや俺より歳上って話だったか?
彼は小さな手を可愛らしく突き出して握手を求めてきた
握手した途端、なぜかシルヴィアから睨まれた
「レイトさん…なんでも今回はただの昇級ではなく、〝飛び級〟したらしいですね?
いったいどういう事なんです?」
ジトー…と、彼女は半眼で睨めつける
んー、一応シルヴィアは冒険者で俺のパーティーのメンバーだから『蒼の旅団』扱いだ
ランクの詳しい評価システムを伏せてなら、彼女に話してもいいかな?
「実は…ムグッ」
「バッ…バカ野郎!!
なんて恐ろしいことを聞いてんだ栗メガネ!
黒毛!テメェ何も喋るんじゃねェぞ!?」
口を開こうとした瞬間、デカい手が俺の顔面を覆った
…えらい剣幕なんですけど
「な、なんですかリック!?
貴方は悔しくないのですか!
私たちより後輩の冒険者に先にランクを越されたんですよ!?」
「ンなもん些細な問題だ!」
「ええええ!?
ちょっと、貴方本当にリックなんですか?
どこかで頭でも打ったんじゃあ…」
「とっ、とにかく!
世の中には知らねェ方がいい事もあるんだ!
ホントお前マジ頼むから、これ以上何も聞かねェでくれェェ!!」
「……………」
リックの必死の懇願に、シルヴィアは絶句してしまう
…どうやらリックはギルド長から特大級のトラウマを植え付けられたようだ
俺のドラゴン恐怖症と同じになっちゃった
ようこそ、こちら側へ
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
リックは生まれて初めてのトラウマを体験し、零人と同じような恐怖症を抱えてしまいました!
案外、リックは繊細な男なのかもしれません笑
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