第72話:徴収
「…そう、だから私は父にこう言ったんだ。
『貴族が闘ってはいけないというのなら、私は冒険者になってでも闘ってやる!』と。
父はカンカンに怒っていたよ」
「あははは!
ナディアさんも親子喧嘩するんですね!」
みそ汁のおかげでだいぶ調子が戻ったのか、朝に比べて饒舌になってきたようだ
俺がカラカラと笑っていると、おもむろにナディアさんは俺の手を握ってきた
へっ!?
「貴公のおかげで元気になったよ。
本当に、ありがとう」
「あ…ああ、いえいえ。
どういたしまして」
ナディアさんは手を握ったまま、俺に微笑みかける
どうしたんだろう?
「マミヤ殿。
モネと仲直りをしてくるんだ。
きっと彼女もそれを望んでいる」
「あ…」
そのことか
んー…
俺もできることなら仲直りしたいけど…
「でも、なんでアイツあんなに怒ったんでしょう?
別にモネが足手まといだからとかそういう理由じゃないのに…」
「それはだな…いや、私からは言うまい。
これは『女の勘』だが、マミヤ殿が思ってるほど、彼女は怒ってはいないぞ?」
「ええ!?」
そんなことないと思うけど…
明らかにツンツンしてる態度だし
「とにかく私のことはいいから話してくるんだ。
さあ、ほらほら」
「わ、分かりましたよ…」
ナディアさんに背中を押され、退室を促されてしまった
まぁ俺もこのままじゃ気持ち悪いし、ダメ元でアイツの部屋行ってみるか
ナディアさんに一礼をして、扉を開けた
ゴン!
「わっ!?ん…?モネ!?」
「痛たた…あ、アハハ…見つかっちった…」
尻もちをついて頭をさすりながらモネは苦笑いをしている
ま、まさか扉の前で盗み聞きしてたのか!?
「お前、こんな所で何して…」
「いやその…
もう1回キミに謝ろうと探してたら、キミがナディア君の部屋に夜這いしに行ったの見えちゃったから…」
「夜這い!?んなことするか!
つかまだ昼だろうが!」
あ、あれ?
思ったより普通に話せてる…
ホントにナディアさんの言ってた通りみたいだ
…せっかくだし、モネにもご馳走してやるか
「はぁ…モネ、リビングで待ってろ。
お前にもみそ汁作ってきてやる」
「みそ?う、うん、分かった…」
☆☆☆
「お待ちどー。ほら」
「ありがとー。
わあ…美味しそうな匂いだね」
熱々のみそ汁を手渡すと、モネもナディアさんと同じようにスンスンと匂いを嗅いだり覗き込んだりした
そしてカップをテーブルに置き、モネの隣へ座った
「その…さっきは…」
「あーもー、別に謝んなくてもいい。
それよりも冷める前に飲んじゃって」
「え!?あ、うん」
モネはカップに口をつけ少し啜ると、すぐに離してペロっと舌を出した
…え、モネの口には合わなかったか!?
「もしかして美味しくなかった?」
「ううん、実はボク猫舌なんだ。
だからすぐに飲めなくてさ」
そうだったのか…
それなら無理に今飲ませることもないか
よし、じゃあ腹割って話しますか!
「それじゃあ聞くけどモネ。
もしかして、お前大学行きたくなかったか?
だとしたら悪いことをしたな」
「ううん、別にそんなことないけど…」
あれ、違うのか…
俺なりに怒った理由考えてたけど、やっぱり人の気持ちって分かりづらいな
「ボクがあんな態度になったのは、キミにこ…いや、『期待』しちゃってたからなんだ。
だから勘違いしたボクの責任というか…キミが気にする必要はないよ」
「『期待』?何を期待したんだ?」
「そ、それは…」
モネは何故か顔を紅く染めた
ん?
期待して違うってことは、俺がモネにとって期待外れってことだよな…
…何気にダメージデカいな、これ
けど、さすがにそこまで言われちゃあ俺だって男のプライドがある
是が非でも聞き出さなくては!
「モネ!教えてくれ!
俺の何がお前を失望させたんだ!?
直せるものなら直してみせる!」
「な、何か勘違いしてない…?
別にそんな大したことじゃあ…」
「勘違いなもんか!
お前、言ってたじゃねぇか」
「へ?何のこと?」
おいおい…自分で言って忘れたのか!
あんな濃い出来事だったのに
「ほら…俺たち一緒に星を旅することになるってやつだよ。
そんなぶっ飛んだ状況で俺とモネはずっと一緒に過ごすことになるんだ。
不満点があるなら今のうちに改善するべきだと俺は思う!」
「…………!」
モネはポカーンと口を開きながら動かなくなってしまった
あれ?
「くふっ…ふふふふふ!」
「モ、モネ?」
なぜかモネは俯いて笑いを堪え始めた
俺おかしなこと言ったっけ?
「いや、そうだったね。
キミとボクは宙の旅で過ごすことになるんだ。
だから何も…焦る必要は無いんだ」
モネは1人でブツブツと納得したかのように自己完結している
よく分からないけど、これで良いのかな?
はー良かったーこれで一件落ちゃ…
「ああ、そうだ。
それで思い出したけど、キミとボクの旅についての占い代、まだ貰ってなかったね?」
「は!?
あれは自分でやったって…」
「それでもキミに教えたなら、キミに占ってあげたも同然だよー?」
な、なんだと!?
ふっかけるにしてもなんでこのタイミング!?
せっかく良い感じにカタつくと思ったのに…
「分かったよ…いくらだ?」
「これで手を打ってあげる」
フニ…
え。
モネの顔がめっちゃ近いんだけど
唇になにか当たってるんだけど
もしかしなくてもこれ〝キス〟なんだけど!?
慌てて顔を離す
「は…?はぁぁぁ!!?」
「んー、まだ足りないかな?」
「おま…んん…っ!?」
おかわりしやがった!!
再度、たがいの前髪と唇が触れる
「ん…ふふ、…んー」
チロ…
んんっ!?
今、舌を入れようとした…?
唇を閉じ、口腔内には入らせずにいると、舌先でチロチロとノックをしてきた
それは、だ、ダメだ!
「……ん…!」
なかなか開門しない俺に拗ねたのか、唇をなぞってグッと押し付けると、ようやく解放してくれた
モネの顔…めちゃくちゃ紅くなってる
「ま、まいどあり…」
「毎度ありじゃねぇよ!?
い、いきなり何してくれんだ!」
「すごい、ナディア君の言った通りだ…
ホントに柔らかった…気持ち良かった…」
「おい?聞いてんのかてめえ…」
モネはハッとすると、さっき俺が置いたみそ汁を持って立ち上がった
「それじゃあ、ちゃんと『徴収』もしたし、ボク部屋で休んでるね!
みそ汁ありがとー!」
「おいコラー!!
まだ話は…逃げやがった…」
クソ…意外と逃げ足速いなアイツ…
まぁでも、今のをナディアさんに見られてなくて良かった
もし見られてたらまた説教を…
「おはよう零人。
『占術士』のキスは良かったか…?」
ほら出た
俺っていつもこうなんのよ
もうこの不幸に慣れ…いや諦めたよ
俺はナディアさんの代わりにルカから説教を食らった
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
零人さん、遂に4人目のヒロインの唇を奪ったー(奪われた?)!!
これはもう、いつ刺されてもおかしくない状況ですね!
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