第71話:みそ汁
☆間宮 零人sides☆
「『生物兵器』か…
たしかにその話が本当ならば、急ぎ『闇医者』やらを探し出す必要があるな」
「ええ…
しかし、彼女もこの国へ来ていたなんて…」
シルヴィア達が捕らえた闇商人から得られた情報は、想像以上にヤバいネタだった
どうやら『魔族の国』の連中は、『亜人の国』を本気で沈める算段らしい
…はっきり言って、俺たちがどうこうする案件じゃ無くなってきてる気がする
てか本来、国の危機に立ち上がるべきはその国のトップだろうに
「なぁ、ジオン。
数日後に王様と謁見すんだろ?
この現状話した方が良くね?」
至極真っ当な意見を言ったつもりだが、なぜかジオンは首を横に振った
「残念だが、現国王はかなりの懐疑主義なんだ。
もし今回得た情報を話してしまえば、僕はともかく、テオが逮捕されてしまう恐れがある…
情けない話、王都は治安があまり良くない。
おそらく、真っ先に疑われるのは患者を抱えた『スラム街』の人々だ」
「え、なに、ヤクキメた奴と周りの疑わしい奴をとりあえず罰する…みたいな?」
ジオンは重々しく頷いた
なんだよそれ…
ちょっとは『理の国』の王様を見習って欲しいもんだね
俺みたいな異世界人の言葉を信じてくれる、あんなできた王様中々居ないよー?
知らんけど
「ならば君は王に何を伝えるつもりだ?」
「そうだな…
まずは魔族による、オットー町襲撃の件。
国の警備兵を派遣してもらえるよう要請する。
…あまり期待はしていないがね」
ジオンは肩をすくめてちょっと投げやり気味だ
この国で私兵を雇ってる貴族が多いのは、そういう事情もあるのかもしれない
「あとは?」
「レイト殿が得た情報の『宴』だ。
それならば冒険者ギルドと例の傭兵団の証言もあるので疑われることは無いだろう。
何より『宴』は自然災害扱いだ。
村など人里近くで起こる場合は対処しなければならないからな」
なるほど…
それならおっさんの引き継ぎができるって訳だ
なんだかんだ言って、おっさんあの村のこと心配してたし…
本当、変なドラゴンだこと
そんなことを考えていると、モネがジオンの背中を叩いていた
「ジオン君たちは王様と謁見する日までその何とかってお医者さんを探す感じかな?」
「ああ、そうなるな」
「そっか…、じゃあちょっとお手伝いしようか」
「??」
モネは懐から5つの水晶玉を取り出すと、魔力を込め始める
お、占いか、久しぶりに見るな
「『予知』」
水晶玉がモネの前で弧を描く…
しばらくしたのち、水晶玉はモネの懐へと戻って行った
「星の導きによると、どうやらそのお医者さんは王都の『裏賭博場』で働いているみたいだよ。
心当たりはある?」
「ラミレス殿…ありがとう!
そうか、裏カジノか。
昔、テオと遊びに行った記憶がある。
ともかくその情報を彼に伝えてみるよ!」
モネの奴…なかなか粋なことするじゃん
ちょっと見直した
「どういたしまして〜。
あ、料金は3万Gね、よろしく!」
「あ、ああ…うん、もちろん…」
台無しだ
あ、そうだ
そろそろ良いタイミングだし、あのこと2人に言うか
「モネ。昨日の件だけどさ…」
「…えっ、えっ!?待って、今!?
ほ、本当にここで言う気!?」
「お前がなんでそこまで気にしてんのか分かんないけど…
あ、あとナディアさんも」
「…ん、私?どうした?」
「なんでナディア君も!?」
どうもさっきからモネの様子が変だな
なんでナディアさんでビックリするんだ?
咳払いをして、2人の目をまっすぐ見ながら伝える
「2人とも…『理の国』に帰らない?」
☆☆☆
「よーし、2人とも。
忘れ物はないか?」
「……(プイッ)」
「…問題ない」
彼女たちに俺の考えを伝えたあと、みんなで俺らが宿泊しているホテルへ戻った
最初はナディアさんが反対すると思ったけど、意外にも異を唱えたのはモネの方だった
どうやらナディアさんも、これまで得た情報を王様に伝えたい気持ちはあったみたい
しかし、モネは自分だけ仲間外れにされたと勘違いしたようで、あのあと口をあまり聞いてくれなくなってしまった
まさかこんな怒るとは…
ルカとフレイのフォローもあって何とか了承してくれたけど
「じゃあ、ルカ。やるか」
「了解。心をひとつに」
「「『融解』」」
ボン!
ルカと融け合い、2人で1つの存在となる
今回の転移は距離が距離だからな
一人でやるより一緒にした方が、より遠くの座標検索と、エネルギーを節約できる
「それじゃあ、行ってくるわ」
「ええ、気を付けてね」
「ラミレス殿!
また君が来た時にまで必ず金は用意しておく!
楽しみにしていてくれ!」
フレイとジオンは手を振って見送ってくれた
しかし、彼女たちはいつもと調子が違うようだ
「…うう、くっ…頭痛が酷い…
…私は我が王に報告したのち、また戻る」
「…………」
ナディアさんは二日酔いだから分かるけど、モネは完全におこモードだな…
参ったな、せっかく朝仲直りできたのに…
「…ったく、いつまで膨れてんだァ?
ガキじゃねェんだし、いい加減機嫌直せよ」
「…………」
見かねたリックがぶっきらぼうに言うがモネは見向きもしなかった
はぁ…気が重い
「検索ヒット。場所は『マミヤ邸』だ。
エネルギーを集中させろ零人」
「おう」
ブン!
☆☆☆
「転移完了。
むう…結構、くるものがあるな」
「ゼェ…ゼェ…!
さ、流石にこんな距離は初めてだから…
つ、疲れた…!」
思ってたよりレガリアとノルンの距離は開いていたようで、とんでもない疲労感が襲ってきた
エネルギーが空になりかけてる…
こりゃ今日、戻るのは無理だな
「…すまない、私は少し眠る。
君のポケットに入らせてくれ」
「ん、ああ…」
ルカの方がエネルギー消費が激しかったみたい
宝石となった彼女は俺の上着のポケットへ潜り込んだ
「ふう、毎度のことながら驚かせられる…
マミヤ殿とルカ殿がいれば移動には困らないな」
「…じゃ、ボク部屋に荷物持ってくから」
「あ、おい…」
モネはスタスタと屋敷の中へ入って行った
あーもう…どうすれば良いんだよ…
「私はすぐゼクス・キャッスルへ向かいたいところだが…少し休んでから行くとしよう。
…うう、気分が最悪だ…」
「ナディアさん…」
ナディアさんは頭を押さえてフラフラとしてる
どうやら二日酔いの症状が悪化してるみたいだ
うーん、胃薬なんて持ってないしな…
あっ!そうだ!
「ナディアさん。
とりあえず部屋に行って楽な格好に着替えて休んでてください。
あとで良いものあげますよ」
「?」
☆☆☆
久しぶりの我が家はやっぱり落ち着く
だけど少し家を留守にしていたせいか、ところどころ埃があるな
あとで掃除しないと
まあそれは後回しにして、今はナディアさんにアレを作ってあげないと
厨房へ行き、湯を沸かす魔導具とお椀代わりの大きめのカップを用意する
そして、リュックから俺の世界の数少ない貴重な食料…『みそ汁の素』を取り出す
俺はいつも大学で、コップにみそ汁を注いで昼飯を食べるのが好きだったため、常にリュックに常備してある
飲み過ぎにみそ汁は結構効く…けど、ナディアさんの舌に合うかはちょっと心配だな
ま、吐きはしないだろ
☆☆☆
コンコン
「空いているぞ、入ってくれ」
「はーい」
トレイに乗せた2つの汁物を零さないように、慎重に扉を開けて部屋に入る
ナディアさんは寝巻きの格好でベッドに腰掛けていた
「クンクン…嗅いだことない匂いだ。
マミヤ殿、それは?」
「これは『みそ汁』っていいます。
インスタントなので単調な味ですけどね」
「いんすたんと?何だそれは?」
「お湯を入れるだけで作れる簡単な食べ物のことです。
お口に合えば良いですけど…
ひと口飲んでみてくれませんか?」
熱々のお湯を注いだインスタントみそ汁は、湯気が立ち上り、お味噌独特の芳醇な香りを放っている
ナディアさんはカップを受け取ると、興味深そうに中を覗き込む
「貴公がせっかく作ってくれたのだ。
もちろんいただこう」
ズズ…
少し口に含んでゴクンと飲み込んだナディアさんは、驚いたように目を輝かせた
「美味しい…
何というか…ホッとする、優しい味がする」
「アハハ、気に入ってくれたなら良かったっす」
その後、俺も久しぶりにみそ汁を堪能しながら彼女とたくさんお喋りをした
これからのこと、俺の世界のこと、炎獣のこと…
俺はいつの間にか、ルカのように誰かと喋るのが好きになったみたいだ
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
二日酔いのナディアを助ける回です!笑
モネを怒らせたままだけどどうする零人!?
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