第69話:憧れ
「『竜式正拳突き』!」
ドゴォッ!!
「ゴボッ!?」
正体を明かしたのは私のパーティーメンバー、リック・ランボルトだ
彼の十八番とも言える竜の力を乗せた鉄拳が、店主の腹部に突き刺さる
「な、ななな何してんだてめぇぇぇ!?」
「なんだこの馬鹿は!?
ここをどこだと思っている!」
「おい!荷物をまとめろ!
商品だけは守るんだ!!」
突然のリックの攻撃に、周りにいた盗賊団たちと他の商人たちは慄いた
それどころか騒ぎは市場に伝わり、一気に混乱を招いた
団長の男がリックに剣を向ける
「リックぅぅぅ!!!
よくも俺たちの看板に泥を塗ってくれたな…!
どうなるか分かってんだろうなぁ!?」
「ああ、もう1つ気づきましたよ団長。
散々コキ使ってくれた礼をしなきゃなァ?
この腐れドブネズミども!!」
「ヒッ!?」
「リック殿!」
「おおっ!?チビ狼じゃねェか」
テオさんがリックの間に入り攻撃を止めた!
あ、危ない!!
私も続いてリックを叱咤する
「リック!
あなたはどうしていつもこんなめちゃくちゃにするのですか!?」
「なんだ、お前ら。来るのが遅せェよ。
もうパーティーは始めちまったぜ?」
むうううう!!この男は!!
いつもあなたの尻拭いをしてるのは誰だと…!
「いや、良くやってくれた。
おかげでコイツを連れ去る手順が省けた。
おい、ジオン!エリザベス!」
えええ!?
まさか逆に褒めるなんて…
2人を呼ぶと、テオさんは先ほどリックが殴り、気絶している商人の男を引きずり地面に投げた
「2人はコイツを屋敷に連れて行ってくれ。
時間稼ぎは俺たちでする」
「了解しました」
「ああ!しかし、大丈夫なのか?
今の騒ぎで敵がこちらに相当集まってきている」
ジオンさんが後ろに目を向けると、リックの行動に激怒した用心棒や汚職兵士たちが次々と集まっていた
「あの『蜥蜴人』を殺せ!」
「どこの所属だ!?
あんな馬鹿な真似をした組織は!」
「ワシらの理想郷を壊す輩は全て消せ!!」
確かにこのままでは脱出するのは…
「問題ない。俺は『斥候』だぞ?
後続の活路は必ず切り開いてやる!
シルヴィア殿、貴方も彼らと一緒に脱出してくれ!」
テオさんはナイフを構えると、目を閉じて魔力を集中し始めた
魔力の肥大化に比例するように、彼の身体もみるみる大きくなっていき、上半身の服が破れて灰色の鮮やかな毛並みが晒された!
『魔物化』…!
「グルルルル…!!
ウオオオオオオ!!」
「ひっ!?
おい…『人狼』までいやがる!」
近くにいた盗賊団の一味が変貌したテオさんを見て腰を抜かした
「おいお前!早くコイツらを殺せ!!」
「何言ってんすか団長!?
俺にできるわけないでしょ!?」
「つべこべ言うな!
テメェら約立たずどもは…ゴハァ!?」
「団長ぉ!?」
リックが団長の脳天にかかと落としを食らわせて、地面にめり込ませた!
手加減を知らないんですから…
「ピーピーうるせェんだよ、タコ助。
おい、チビ…いや、デカ犬!
この腐った店、全部ぶっ壊すぞ!!」
「元よりそのつもりだ!
『シード』など狂った毒は確実に滅する!」
リックとテオさんは、向かってきている敵の集団に2人だけで突っ込んだ!
無茶を!!
「『竜式投げ縄打ち』!」
バゴゴゴッ!!
「な!?避けろぉ!!潰されるぞ!!」
「クソ!牛魔獣かコイツは!」
リックは両腕を開き、そのまま兵士たちをなぎ倒しながら突進した
なんて強引な…!
「狼の妙技…てめぇらに見切れるか?
『瞬速霞斬』!」
「か…かは…ッ!」
「なに!?」
テオさんの姿が消え…いえ、もうあんな所に!
まるでレイトさんが転移を使ったと錯覚させるほど何も見えなかった…
道中の敵は声をあげることなく静かに倒れ込む
あのスピード…
セリーヌさんと同等かそれ以上かもしれない
「今だ!行こう!2人とも!」
「了解です」
ジオンさんが気絶した商人を肩に抱え、彼らが開いた道を駆け抜けていく
しかし、私は踏み出さずに彼らを見送った
「…?ゴードン様?
いかがなされました?」
「先に行っててください。
私は…あの二人を援護します」
「しかし…」
魔導杖を構え、魔力を集中する
エリザベスさんは私の選択が予想外だったのか、歩みを止めた
「あの男は…リックは私の出来ないことを毎回平然とやってのけるんです。
昔からそうでした…
私が日和っている間、彼は彼なりに考え、行動して…そしていつも私はその後手なんです。
私は…そんな彼に〝憧れて〟いた…!」
私は彼が羨ましかった
自然と、杖を握る力が強まる
「私は…!
困っている人々を助けるために『聖教士』になったんです!
そしてリックのように…!
自分を偽らない冒険者に、私はなるんだ!!」
私は水属性の円形状の魔力を市場全体に張り巡らせた
そして、私の最も得意な光属性へ魔力を切り替える
「『輝光水鏡』!!」
カンカンカン!!
杖から放たれた光線は水の魔力で作成した鏡に向かい、反射する
次々と反射された光線は、道行く全ての悪人たちを浄化していく
「ぐああああ!!!」
「なんだこの魔法は!?」
「動くな!!下手に動くと光に焼かれるぞ!」
悪徳貴族、商人や兵士たちも身動きが取れずにその場に留まった
「エリザベスさん行って!!」
「早くしろエリザベス!
彼女の行動を無駄にするな!」
エリザベスさんは無言のまま頷き、ジオンさんの後に続いて行った
よし、あとは…
「見直したぜ、栗メガネ。
まさかオズベルクの技をミックスさせるたァ」
「ああ、お見事だシルヴィア殿。
敵はまだまだ居るが…闘えそうか?」
「はい、もちろんです!
壊して壊して…ぶっ壊しまくります!!」
「ギャハハハハ!!
良いねェ、熱くなってきたじゃねェか!!」
亜人族の2人と共に、私は生まれて初めての『癇癪』を起こした
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
シルヴィアの秘めた思いが溢れ出します!
テオの『魔物化』も本格的に披露できました!
『魔物化』できる他の亜人族も考案中です笑
「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!
何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




