第68話:リックの決意
「ここが『裏市場』…
思ってたよりも本格的な形なんですね」
「ああ。だが、実際は見かけだけで、ほとんどの店がガサ入れにあった時にすぐ逃げられるよう、移動が簡単な簡易キャンプになっている」
階段を降りた先に待っていたのは、陰気な露天商の数々が店を出している空間だった
王都にこんな地下エリアがあったなんて…
そしてテオさんの言う通り、露店の後ろにはテントが設営されており、商人たちはそこで数人体制で滞在・商売しているようだ
商人が相手をしている客も様々で、品の高い召し物をした貴族や屈強な冒険者、傭兵…さらには兜を外した街の衛兵までもが、店の前に立っている
前を歩くテオさんについて行きながら近くのお店の品を物色すると、『牛魔獣の殺人角』や、『石化蛇の眼球』などおぞましい物が並んでいた
どれもこれも、国から認可を受けた武具屋や加工屋しか扱ってはいけないはず…
もしこの光景をナディアさんが見たら暴れそうですね…
「おお旦那!
今日も女連れてちゃってまぁ…
最近調子はどうなんだ?」
「うむ。
私の領民どもは身分をきちんと弁えているがゆえ、我が領地は常に『安泰』という言葉以外には言い表せんよ」
「そうかいそうかい!
ところでよ、聞いたか?
最近、この国に『蒼の竜殺し』って呼ばれてる奴が来ているみてぇだぜ」
「竜殺し?誰だそれは?」
「さぁな。
詳しい素性は分からねぇが、蒼い光を使ってドラゴンを殺しまくる異常者らしいぜ。
たしかアンタんとこもドラゴンを飼ってんだろ?
非合法にさ…」
「…はぁ。
そんな与太話信じるわけがないだろう。
が、贔屓にしている貴殿の事だ。
何か売りたいのではないか?」
「ヘヘッ!さすが旦那、分かってるねぇ。
実は最近仕入れたドラゴン用の『オモチャ』が…」
ある露店での店主と客の会話が耳に残った
『蒼の』ってことはレイトさん?
あの人、どんどん色んな異名が付いて回ってますね…
その商人と貴族の会話を私だけではなく、エリザベスさんも耳を傾けていたようで、薄らと笑みを浮かべていた
……もしかして、彼をからかう気でしょうか
先を歩くテオさんがこちらに振り向き、小さな手である所を指で示した
「先日魔石を購入したばかりだ。
その店の場所は覚えている。
奴に逃げられる前に行くぞ!」
私たちは早足で露天商の間を駆け抜け、一角にある一際大きなキャンプを目指した
☆リック・ランボルトsides☆
チビ狼の屋敷を飛び出しオレは1人、スラム街を抜けた
オレがこれから行くべき場所は…決まっている
ドンドン!
目的の家に到着し、少し力を強めて入り口の扉を叩いた
「ああ?…リック!
テメェ、今までどこに行ってやがった!」
「スンマセン、先輩!
ちっと野暮用がありましてねェ」
「チッ!入団したんなら、ちゃんと上に報告してから動きやがれ!」
「ウッス!」
扉から出迎えた男は、オレの胸くらいの身長の『猫人』だ
野郎に連れられて、家の中へ入る
黒毛どもと合流する前、オレは『紅と黒の騎士』の情報を集めるため、デカキン達と別れて盗賊団の情報網を利用する計画を立てた
まぁ、そのアイデアは銀ネコのもんだったが
そして、ただ奴らから聞き込みするだけじゃあ面白くないと考えたオレは、王都でいちばんシマがでかい『トリモ団』へ入団することに決めた
「おう、リック。
入団早々バックレたぁ良い度胸じゃねえか?」
「スイマセン、団長!
次はちゃんとしますんで、勘弁ッス!」
「この野郎…!
チッ、テメェが『蜥蜴人』じゃなけりゃあブチ殺したんだがな…」
そしてここはトリモ団の隠れ家だ
王都でいちばんデケェ盗賊団だし、団員も強え奴ばかりだと思ったが…大間違いだった
団長も含め全員が『猫人』や『鼠人』みてェな、脚の速ェ種族で固められた、逃げることに特化した腰抜けどもだけだ
「まぁいい。
それよりこれからブツを捌きに行く。
テメェも来いやリック」
「ウッス!」
ヘッ、ちょうどいい
『裏市場』を探す手間が省けた
オレはコイツらを…いや、コレを売るヤツも買うヤツも何もかもブチのめす…ッ!!
☆シルヴィア・ゴードンsides☆
大キャンプの前には他の露店とは比べ物にならない、大型のマーケットを展開していた
どうやら客足はあまりいないようで、店の前には商品を卸しに来た闇業者と思われる人達数名しかいなかった
…ん?あのフードを被っている大きな人…
見覚えがあるような…?
「まず俺が買い物をする体で店主と話す。
そして、隙を見てヤツを連れ出すぞ」
「了解しました。私におまかせを。
『戦乙女』の名にかけて確実に遂行します」
な、なんだかスゴいことになってきた…
止めた方が良いのでしょうか…?
人攫いは立派な犯罪
しかし、違法薬物の販売を野ざらしにするのもこれまた重罪…
私はどうすれば………
ポン
ジオンさんが私の肩に手を置いた
「『聖教士』である君の気持ちは分かる。
だが、これ以上彼の領民と同じ悲劇を生ませるわけにはいかないんだ。
魔族の狙いがどうであれ、まずは『シード』を根絶することを目指そう」
「ジオンさん…ええ、そうですね。
分かりました、私も覚悟を決めます!」
自らの迷いを振り払うように、私は魔導杖を両手で強く握りしめた
☆☆☆
「1万G!?おいゴラァ!
てめえぼったくってんじゃねぇ!」
「嫌なら別の所へ行きな。
これ以上は交渉しない。
だいたい縄張りだけ一丁前で、見せかけだけのアンタらトリモ団と取引してやってるだけ感謝してほしいもんだ」
「てめぇぇぇ!!!」
覚悟を固めたのは良いが、私たちの前にいる人達がなかなかどいてくれなかった
何故か店主と揉めている
業者だと思ったら盗賊団ですか…
なるほど、盗品を売り捌きに来たのですね
「まァまァ、団長。
ここはオレに任せてくださいよ」
「はぁ、はぁ…チッ!」
フードを被った大柄の男が団長と呼ばれた『鼠人』の亜人を引き下げさせた
……聞き覚えのある声…やはりあの男は…!
「よォ、おっさん。
ちょいと聞きてェんだが、アンタの店で売ってる『シード』はここにあるので全部かい?」
「ああ、そうだ。なんだ、あんちゃん…
そのヤクを気に入ってんのか?」
「ハハハハハ!
いえね、オレァ気づいちまっただけなんですよ」
「ああ?」
店主の男が訝しげに聞き返すと、フードの男は着ていた盗賊団のローブを破き、市場全体に聴こえるような声で吠えた
「魔王や魔族なんぞよりもまず、テメェらゴミどもをブッ飛ばさなきゃいけねェってよォ!!」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
屋敷を去ったリックの行動が明らかになります。
何気にリックsidesは初めてですね笑
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




