第63話:海竜《リヴァイアサン》のお礼
☆間宮 零人sides☆
「なるほど。
その2人をレガリアに帰還か…
多少戦力は落ちてしまうが、私は特に問題ないと思うぞ」
「その辺はおいおい考えるとして、どう伝えたもんか迷っててさ」
俺はモネを王都ノルンへ送り届けたあと、グロック村へ再び戻った
既に打ち上げパーティーはお開きとなっており、ヴァイパーと冒険者連中は村の宿舎に泊まるらしい
ちなみに俺らは転移で帰れるため、装備をキャラバンに詰め込んでいた
ナディアさんはぶっ潰れてるからセリーヌに介抱してもらい、おっさんは村の周辺に異常がないか見張るためパトロールに出かけた
よって、3人だけで帰る準備をしている
「元々モネには学生なのに無理を言って一緒に来てもらったから、本来アイツが送るべき生活に戻してやりたいんだ」
「そうね。ここから先はもっと危険な魔物や魔族が現れてもおかしくないし…
私もアンタの意見に賛成よ」
「フレイ…」
そして、作業をしながらルカとフレイに俺の考えを打ち明けた
モネを学生生活に復帰させることと、この国で起きている事を『理の国』の王様に伝えるためナディアさんに言伝を頼もうと思ったのだ
モネにはさっきちょうど良いタイミングだったから、一足先に宿に戻って話そうとしたのだが、突き飛ばされてしまった…
でもよく考えてみれば、いきなり転移をかまされたあげく、あんな密室で男に迫られるなんて女なら誰だって怖いはずだ
これに関しては俺の配慮が足りなかった
「いいわ。
明日、皆が集まってる時に私も一緒に提案してあげる」
「ウォルトあたりは猛反対しそうだがな。
私も説得を試みよう」
「2人とも…ありがとう」
素直に感謝を述べると、2人は微笑んだ
☆☆☆
帰る準備が整いナディアさんとモネを除く、みんなで村の宿舎へ訪れた
今回一緒に闘ったマルクスさんをはじめとする、ヴァイパーと冒険者たちに挨拶するためだ
「そうか…もう帰るのか。
今日は本当にあなた達には世話になった」
「いえ、こちらこそ。
おかげで仲間を取り戻せましたし」
俺とマルクスさんは握手を交わした
どことなく、少し寂しそうだ
「ああ、その通りだ。
ところで、我輩を治療してくれたあの若い回復士は居るか?」
「もちろん。おい、ミント!
オズベルクさんが呼んでるぞ」
「は、はいっ!」
タタタと、小走りで彼はやって来た
あれ?
そういえば名前をちゃんと聞いてなかったな
ミントって言うのか
「貴殿の魔法のおかげで、我輩は魔族を追い返すことができた。
改めて礼を言おう」
「いえいえっ!
僕にはあれくらいしか取り柄がありませんので…」
アハハと愛想笑いをしながら頭をポリポリ搔いている
でも実際、たしかに彼の功績は大きい
俺らだけじゃあのドラゴンには適わなかったからな
彼がおっさんを戦線復帰させてくれなければ、みじめに逃げ帰っていただろう
「手を出したまえ」
「え?は、はい?」
ミントはわけも分からずおっさんに両手を差し出すと、彼の手に大きな杖が置かれた
「『海竜式魔道杖』。
水属性に限るが、これがあれば多少の戦闘をこなせるようになるだろう」
「えええっ!!
い、良いんですか!?こんな貴重な代物を…」
「貴重でもなんでもないさ。
我輩が先ほど創ったのだからな」
創った!?
おっさんそんなこともできたのかよ!
あれ…?
もしかして、ハルートに頼むよりおっさんに武器を創ってもらった方が良かったのか…?
「やったじゃねえかミント!
お前、あれだけ闘いに憧れてたんだしよ!」
「あークソ!
そんなことなら俺が治療すれば良かったぜ!」
「バッカお前、てめぇが『回復』なんてしたら吹き出物だらけになんだろうがよ!」
ヴァイパーの連中はミントの功績を称えている
…良い仲間たちじゃないか
「みんな…
ありがとうございます、オズベルクさん!
大切にしますね!」
「ああ。さぁ、我輩の用事は済んだ。
戻るとしようか」
くるっと踵を返してキャラバンへ歩いて行った
あのオヤジ、カッコつけやがって
「レイトさん。『魔族の国』の事はこちらでも気にかけておこう。
もし、俺たちの力が必要な時は呼んでくれ。
特別割引で駆けつけようじゃないか」
「あ、しっかり取るものは取るんですね…」
「冗談だ。いつでも気兼ねなく依頼してくれ」
マルクスさんはお茶目に笑って俺たちを見送った
☆☆☆
王都ノルンに戻ってきたあと、それぞれの宿泊している宿へと帰った(おっさんはフレイの宿)
夜遅くもあったので、ギルドへの報告は明日の朝にすることになった
酔い潰れたナディアさんを担いでルカとホテルへ帰ると、ラウンジでシルヴィアとモネが晩酌をしていた
あれ?モネ、まだ寝てなかったのか
「ただいまー。お疲れシルヴィア」
「あ…お疲れ様です」
「マミヤ君!?
あ…え、えっと、ボクもう寝るね!」
モネは俺を見ると、脱兎の如くその場から走り去ってしまった
…さっきの引きずってるっぽいな
でも、あの反応はちょっと傷つくなぁ
「モネのやつ、あんなあからさまな反応しなくてもいいのに…」
「いや、当然の反応かと思いますが…
モネさん、随分気に病んでましたよ?」
「そ、そんなに?悪いことしちゃったなぁ…」
参ったな…
明日なんて謝ろう
しかし、シルヴィアはなぜか首を横に振った
「いえそうではなく、モネさんがレイトさんと仲直りしたいとさっき話していたんです」
「『仲直り』?ラミレスと揉めたのか?」
「揉めたって程じゃないけど、ちょっとな…
それよりそっちはどうだった?
『シード』のこと、何か分かった?」
「そうですね…
今お話ししてもいいですが、ナディアさんも寝ているようですし、明日にしませんか?」
あ、それもそっか
どうせなら全員揃ってる場で聞いた方がいいか
「ならば今夜は休むとしようか。
零人、ウォルトを部屋に連れて行こう」
「あいよー。じゃ、シルヴィア。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
☆☆☆
翌朝
ナディアさんが二日酔いでかなり参っていた様子だったので、少し遅めに出発してしまった
多分こうなると思ったから、昨日フレイに伝えておいて良かったぜ
その道中、後ろを歩いていたモネが意を決したように俺の腕を掴んできた
「あ、あの!マミヤ君!
昨日はその…突き飛ばしてゴメンね」
「ああいや、良いんだ。
俺もいきなりお前を連れ出しちまったしな…
ビックリしたろ、ゴメンな」
「う、うん。まぁね…
そ…それと、キミが言おうとしたのって…」
お互いに謝まると、モネは両手の指を遊びはじめ、珍しくモジモジした様子になった
近くを歩いているシルヴィアがなぜか「頑張って」と呟き、小さく拳を握った
え、え?なにこの状況…
「あ、ああそれは…
とりあえずギルド行こうぜ。
皆いる時に話すから」
「ええっ!みんなの前で!?
そんな堂々と!?」
「う、うん…何かマズイの?」
「いや、マズイっていうか…
案外、マミヤ君って大胆だよね…」
大胆??うーん…?
なんかモネと噛み合っていない感じがする…
ま、いっか
とりあえずフレイ組と合流してから考えよう
☆☆☆
そして冒険ギルドへ到着し中へ入るなり、いきなり誰かから肩を叩かれた
あ、この人は…
「よぉマミヤさん!
アンタらが来るのを待ってたんだぜ!」
「おはよう。
はは、律儀なんだな」
「あたぼうよ!」
昨日一緒に共闘した亜人の冒険者たちだ
複数のパーティーで1つのクエストを受けた場合は、ギルドへの報告を最も戦果を挙げたパーティーが行う
そして、そのパーティーは話し合いと多数決で決めるのだが、満場一致で俺たちに決定した
報酬さえ貰えるなら別に俺らじゃなくても良いんだけどな
「おい、またアイツらだ…」
「なぁ、聞いたか?
あの人族のパーティーが黒竜をとっちめたらしいぜ」
「なんですって!最強の竜を…!?
フ、フン…中々やるわね…」
すれ違う他の冒険者たちは昨日とは違い、陰口を叩くことはしなかった
どうやら昨日の緊急クエストの戦果は、報告を行う前から既に内輪内で伝わり始めてるようだ
「ここだけの話、最初はアンタらが来た時は皆良い顔をしなかったんだ。
だが、腐っても俺らは冒険者だ。
目の前であんなデカいヤマをこなされちゃあ、認めるしかあるめぇってな!」
「ほんとに感謝するよ。
実際、この王都内じゃ俺たち嫌われ者だから、
アンタらだけでも認めてくれるなら嬉しいよ」
冒険者に礼を言うと、少し照れくさそうにはにかんだ
この国で人族と亜人の溝はまだまだ深いけど、誰か一人でも双方を理解する人がいるだけで、全然気持ちの持ちようが違う
『亜人の国』に来て良かった…
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
いよいよヴァイパーの人達とお別れです!
ヒーラーの若い子が魔道杖をプレゼントされて大喜びしましたね笑
もしかしたら彼を再登場させるかも…?
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




