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スター・スフィア-異世界冒険はおしゃべり宝石と共に-  作者: 黒河ハル


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第619話:竜笛

「さて、それじゃあマミヤ君の処遇について話すね」


「…!」



 必要事項を書き終えたモリッツさんは、パタンと用紙をファイルにとじると、俺たちそれぞれに一瞥をくれた。


 …まさか、逮捕するなんて言わねぇよな?

 頼む…! せめて反則金で処理してくれ!



(チィ…、ピィ…、ヒュッ…)


「「……!」」



 モリッツさんの回答に悪い意味で心臓を高鳴らしていると、突然カーティスと向こうの飛竜(ワイバーン)が首を空に向けた。

 2匹ともほとんど同じタイミングで、キョロキョロし始める。



「モリッツ兵長。ダン一等兵ヨリ通信デス。

 国道16号線ニテ牛魔獣(ミノタウロス)ガ出現。

 非常ニ気性ガ荒イ個体デ、周辺ヲ暴レ回ッテイルラシク、早急ニ応援ガ必要トノコトデス」


「なんだって!?」



 んええっ!? ワイバーンが喋った!

 んだよ! あいつも言葉話せるタイプのドラゴンだったのか!



「くっ、ミノタウロスか…しょうがない。

 マミヤ君! 悪いが少し席を外すよ。

 まだ話は終わってないから、そこで待っていてくれ!」


「は…? あっ、ちょっと!?」



 モリッツさんはそう言うやいなや、ワイバーンの背へ飛び乗る。

 そして大きな翼を羽ばたかせると、脇目も振らず飛び立ってしまった…。



竜騎士(ドラグーン)、行ッチャッタネ」


「うん…」



 あの白バイ野郎、俺たちをこんな道のど真ん中に放置して行きやがった。

 しかも俺の冒険者カードを預かったまま…。

 クソ…奴に個人情報を伝えてさえなけりゃ、このままケツまくって帰ってたのに。



「そいやカーティス、さっき何か見つけたのか?

 モリッツさんのドラゴンも同じ反応してたけど」


「ア、ウン。マー坊ニハ聴コエナカッタ?

 口笛ミタイナ音。チョウド竜騎士(ドラグーン)ガ行ッタ方角カラ聴コエテキタンダ」



 カーティスはその方向へ再び頭を向けた。

 口笛…うーん、ぜんぜん聴こえなかったな。


 …って、あ! そうか! アレか!



「カーティス、そいつはおそらく『竜笛(りゅうてき)』ってやつだ」


「リューテキ?」


「ああ。なんでも竜の国(ドライグ)で採用している遠距離間通信法らしいぜ。一部のドラゴン族が出せる特殊な音波を暗号化して、遠くの相手と連絡が取れるんだ」


「ヘェ〜!」



 たしか、前にリックがそんな話をしていたのを思い出した。

 当然俺は耳ほじって聞き流していたけど。



「しかし参ったな…まさかこんなとこで立ち往生食らわされるとは」



 それはそれとして、どうすっかな。

 やはりここで大人しく待ってるしかないのか。



牛魔獣(ミノタウロス)…ワタシガ〝赤ノ洞窟〟デ迷宮主(ダンジョンマスター)シテル頃ニモ、ソレト同ジ種族ガ別ノ迷宮主(ダンジョンマスター)ヤッテタナ」


「ん? ああ、〝黒の洞窟〟か」


「ウン」



 カーティスは首を縦にふった。


 そのダンジョンにはまだ行ったことは無いが、そこの主なら俺も知っている。


 ミノちゃん。


 以前、裏武闘会(ファイトクラブ)で助けてもらった魔獣だ。

 カーティスやセリーヌみたいに人語は話せなかったが、なかなか気立てが良いヤツだった。


 ちなみにカーティスの知るミノタウロスとは、年齢的に世代が違うと思う。たぶん。


 そいつとは別れて以来、ぜんぜん音沙汰ないけど…。



「「………」」



 俺とカーティスはしばし無言になる。

 やがて、俺は独り言のように呟いた。



「まさか、出現した魔獣ってミノちゃんじゃないだろうな…」


「マー坊…」



 カーティスがなんとも言えない複雑な眼で見てきた。

 いつもは騒がしい彼女が珍しくしおらしい。


 同じ迷宮主(ダンジョンマスター)…カーティス的にはミノちゃんは元同業者になるのか。

 ある種の仲間意識みたいなもんがあるのかもしれない。


 …ふん。ま、そんならやることはひとつだ。



「カーティス、俺達も国道16号線に行こうぜ。

 身分証の奪還がてら、暴れてるミノタウロスとやらを確認しに行くぞ」


「ウン! 乗ッテ、マー坊!」



 ☆☆☆



 再びカーティスに搭乗し、青が澄みわたる空を翔ける。

 今度はちゃんと目的があるぶん、多少恐怖感はマシになった。


 …しかしだ。



「前から思ってたけど、俺とドラゴンが関わると高確率で戦闘イベントが発生してる気がする」


「アハハ、考エスギダヨー。タマタマ、タマタマ」



 俺のボヤきを笑い飛ばすカーティス。


 いや、そんなことない。

 アイギス然り、双頭竜(アンバイン)然り。


 俺の不幸体質のほとんどは、大抵ドラゴンが絡んでる。



「マー坊ハドラゴントカ関係ナシニ、イツモ誰カト闘ッテルヨ」


「……」



 さてはお前、俺のこと嫌いだな?

 こんな温厚な日本男子になんてこと言うんだ。



「まあいい。地図によれば目的地はすぐそこだ。

 出かける前、念の為ガントレット装備してきて正解だったぜ」


「大丈夫! ワタシニ任セテ、マー坊!

 モシ牛魔獣(ミノタウロス)ガ悪サシテタラ、ワタシノ『竜砲撃(ドラグ・キャノン)』で粉々ニシテヤルカラ!」


「警察の真ん前で何をやらかす気だてめぇは!

 いいか? あくまで武力介入は最後の手段だ。

 お前も蒼の旅団の一員なら、たまにゃ言葉で敵を宥めてみるんだな」


「エー」



 今までずっと野生で暮らしてきたカーティスには、まだまだ教えないといけないことがたくさんある。


 …本来、ドラゴンと人間は相容れない。


 けれどお互いを理解し認め合えれば、共存することはできると、最近分かってきた。


 竜の国(ドライグ)の警察連中が何体竜を従えているのかは分からんが、()()()()の怖さをどれほど知っているか…じっくり見せてもらうぜ、モリッツ巡査。








こんにちは、黒河ハルです。

貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!


ミノタウロスの出現で置いてけぼりにされました!

次回、戦闘回です。たぶん。


「続きを読ませろ!」と思った方は、ぜひブックマーク、並びに下の☆を『5つ星』お願いします!

何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!


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