第618話:王国竜兵隊
「ウーン! スッゴク気持チ良イ青空ダネ!
ドウ、マー坊? 楽シイデショ!」
「楽しいわけねえだろ! 着陸しやがれ!」
全身にぶつかる分厚い空気の奔流。
ここは、王都レガリアから遠く離れた郊外の遥か上空。
そこに俺は…俺とカーティスはいた。
「アハハハッ! ヤーダヨッ♡
セッカク二人キリデ出カケテルンダカラ!」
「どこの世界にお出かけで雲の上まで行くバカがいんだよ!
さっきから空気薄くて息苦しいんだよ!
せめてもう少し高度さげろや!」
「ンモーショウガナイナ〜」
カタコトのカーティスから分かるように、コイツは現在、世にも恐ろしいドラゴン形態だ。
翼が可動されるたびに、ダイレクトに伝わるカーティスの体温。
股下にゴツゴツ当たる竜の鱗。
なぜ超がつくほどドラゴンが苦手なこの俺が、赤竜のカーティスと空を飛んでいるか。
それは…
「根性ナイネーマー坊。フレ子ヤ霊森人ノニンゲン達ハスグ慣レタノニ」
「なに!? それならフレイ巻き込んでタンデムすりゃ良かった…」
「ソレハ駄目! ワタシ、マー坊ダケヲ乗セタカッタノ!」
こないだのドノヴァンでの騒動のとき、俺はカーティスに戦士の運搬役をこなしてもらう代わりに、彼女と〝竜騎乗〟をする約束を交わしてしまったのだ。
あの時は嫌がるカーティスを納得させるため苦渋の選択だったとはいえ、とんでもない交換条件を出しちまった。
「ハア…なんでお前そんなに俺を背中に乗せたいんだよ」
「ダッテーイツモオマエ、ルカ子ト楽シソウニ空飛ンデルジャン。ワタシダッテ一緒ニ遊ビタイ」
「てめぇは拗ねた園児か!?
つうかそれ『融解』での話だろうが!
ルカの力借りて自前で飛んでるならまだしも、お前の場合はシートベルトがない戦闘機に跨ってんのと同じなんだぞ!」
「ベル…セントーキ?」
さっきフレイは慣れたとか抜かしてやがったが、絶対ウソだ!
身体の全筋力を両脚に集中させてなきゃいつ落ちるかも知れないのに、こんなんふつう慣れっこない!
それこそ、リックとエレンの故郷に居るっていう…
「そこの〝竜乗り〟! 止まりなさい!」
「「!」」
突然、下方向から人の声が聞こえた。
俺とカーティスがほぼ同時に首を傾けると、そこには一匹の飛竜がいた。
えっ!? 今あいつが喋ったのか!?
「こちらは王国竜兵隊、モリッツ兵長だ!
繰り返す! 直ちに飛行を中止しなさい!」
違う!? 飛竜の背に人間が乗ってる!
ま、まさかあれは…!
「オオ! 見テマー坊! アイツラ、ワタシ達ト同ジダネ!」
「バカ! 早く止まれ! ありゃ警察だ!」
☆☆☆
「はい、それじゃあ冒険者カード預かるね。
えーと名前は…マミヤ・レイト君、だね。
住所はレガリア、ふむ…職業は剣士のようだけれど、そちらの赤い竜は君が調教している魔物ってことでいいのかな?」
「うす…それで間違いないです」
「調教!? 冗談ヨシテ! ワタシハ」
「大人しく口閉じてろクリムゾン年増」
「ヒドイ!?」
モリッツと名乗る男に呼び止められた俺とカーティスは、ひとまず指示に従い地上へ降りた。
身分証を差し出すと、彼は羽根ペンと用紙を取り出して、つらつらと記録を始めた。
「あのねぇ君、ちゃんと分かってる?
手続きもなく勝手に国境を越えるのは、立派な不法入国…犯罪なんだよ。
それにさっきの飛行運転も良くない。
あんな危なっかしい機動じゃ、もし周りに鳥や魔物がいたら普通にぶつかっちゃってたよ」
「「………」」
警官らしく、クソ真面目に叱るモリッツさん。
…面倒なことになった。
まさかさっきまでいた空域が『竜の国』の国境付近だったとは。
無用な騒ぎを起こしたくないがために、王都からかなり離れた所でカーティスをドラゴンに変身させたのが裏目に出ちまった。
たまたまパトロールしていた隣国竜の国の警察機関…王国竜兵隊に見つかったのだ。
相手がドラゴンなら接近してきたらすぐ分かるが、今回はカーティスに跨ってたせいで飛竜の気配に気付けなかったぜ…。
つうか俺、ここんところ警察のお世話ばかりなってる気がする。
ルーシーさんといいリベルタといい、なんで変な役職就いてる人物ばかり知り合うんだ。
「調教が難しい赤竜を飼い慣らしたから、思いきりかっ飛んでみたいのは分かるけどね。せっかくカッコいい竜なんだからさ。きちんと規則を守って安全飛行しないといけないよ、お兄さん」
「はい…」
それはそうと、さっきからスピード違反して白バイに捕まったみたいになってんだけど。
言っとくが俺は、カーティスの飛行運転うんぬんはいっさいしてない。
カーティスが勝手に飛んで、勝手に進んで、勝手に領空侵犯したのだ。俺は悪くない。
だけどコイツの保護者は便宜上俺…ぐぬぬ。
「ただでさえ最近は走り屋や運び屋の事故が多いんだから。地上では疾竜種の非合法レース、空では飛竜種の賭け決闘…まったく、偉大な竜たちをぞんざいに扱ってくれちゃって」
「はは。それは、大変っすねー」
心底呆れた様子のモリッツさんは、ブツブツとなにやらボヤき始めた。
んなこと俺に言われても知らんがな。
切符切るなら早く切ってくれよ。
「ネェオマエ、モシカシテ〝竜騎士〟ッテヤツ?」
カーティスがドラゴン形態のまま、モリッツさんに喋りかけた。
ちなみに彼女が人語を操ることに関しては、特に驚いていないようだ。
「本官は竜騎士第8空挺部隊に所属している。
主な任務は空域哨戒と要人護衛…あとたまに君たちのような若い竜乗り向けに、セミナーも開いているよ」
ドラゴンに自分のことを聞かれて少し気分が良くなったのか、すんなり素性を教えてくれた。
種族はエレンやアイギスと同じ竜人族。
格好は騎士鎧ではなく、近代的な軍服。
腰に軍刀を差しており、頭にゴーグル付きのヘルメットを被っている。
全体的にナルシストっぽいというか、キザな感じ。
リベルタとはまた違うタイプの警官だ。
…あまり好きになれなさそ。
「フーン。スゴイネ。ソンケーシチャウ」
「絶対思ってねーだろお前。まあ俺もだけど」
「君たち、取り締まれてる立場なのにずいぶん余裕だね…?」
こんにちは、黒河ハルです。
貴重なお時間を消費して読んでくださり、とても嬉しいです!
零人とカーティスのお話です。
お初の組織が登場しました。
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何卒、なにとぞっ!底辺作家めにお慈悲を…!!




