第52話:フレデリカのハグ
ハルートに武器の創作を依頼して、追い出された俺たちはホテルに戻った
帰ってきてるのはモネだけで、ジオンとシルヴィアは今だに王城のようだ
まぁ、ジオンも予め遅くなるって言ってたし仕方ないか
そして、彼ら以外の全員を集めて俺たちの経緯を説明した
「1週間か…
思ったより足止めを食らってしまったな」
「そうだな。
しかし、ジオン殿の方も時間が掛かるようだぞ。
昼時に1度こちらに戻ってきて、状況を説明してくれたのだ」
「マジすか。
あんまこの街でモタモタしたくないんだけどな…」
「やっぱりマミヤ君もひどい扱いだった?
ボクもだよ〜」
それぞれ情報を共有して、みんな頭をウーンと悩ませた
いっそこのまま現地に向かってしまって、1週間後に転移使ってこっちに戻るって手段もあるけど、あんまり距離あるとエネルギーの消費が激しいんだよな…
できれば戦力を整えて万全の体勢で向かいたいところだ
「皆さま、まもなく夕方…
モービル様との約束の時間が近づいています。
合流してから考えてはいかがでしょう」
「だな、ザベっさんの言う通りだ。
よし!メシ食って休憩したらギルド向かうべ」
「おっけ〜!」
「了解だ」
「承知した」
宿場のレストランで腹を満たしたあと(また従業員から舌打ちされた)、それぞれの部屋に戻った
ちなみに俺の部屋にはルカも一緒だ
部屋割りでめちゃゴネてきたからな…
☆☆☆
「えー!?
マミヤ君、やっぱりあの時襲われてたの!?」
「くっ…!
よりにもよってエネルギーを補充していない時に!
すまない、零人…」
「いや、謝んないでくれ。
一応、コレのおかげでかろうじて乗り切れたからさ」
部屋で寛いでいると、モネが遊びに来た
というか、『仮面遊戯』を使った状況説明を求められた
ドラゴンの仮面を被るのはかなり抵抗があったけど、怒ってると案外何とかなるもんだな
「つーか俺も聞きたいんだけどさ。
どうやって俺と連絡取ったの?」
ハルートとの戦闘後、仮面を通じてモネが話しかけてきたのだ
こんな便利機能あるなら教えてくれてもいいのに
「あれは『緊急回線』って機能でね…
主仮面と副仮面の間で通話が可能なんだ」
「マジか!
え、じゃあその機能使えばいつでも連絡取れるってこと?」
「現実はそう甘くないんだよね〜。
通話時間1秒につき、100G消費するとんでもない機能なんだ」
「ひゃくぅ!?どんだけ金むしるんだよ!」
ということは、今回俺が『仮面遊戯』を起動した費用に加えて、通話時間分の請求がモネに来たってことか…?
や、やっちまった…
「モ、モネ…その、ゴメン…」
「アハハ、仕方ないよー。
むしろ、こうなる事を予想して、星は仮面を渡すように導いたのかもね」
「寛大だな、君は。少し見直したぞ」
だけどさすがに人様の金を消費しておいて、何もしないというのは虫が良すぎるか…
よし!
「なぁ、モネ」
「うん、行くっ!」
「今度美味いスイーツ店に…
まだ全部言ってないよ!?」
即決かい!!
意外とがめついなコイツ
モネがはしゃいでいるのとは対照的に、ジロっと半眼でルカが睨めつけてきた
「零人…?
ウォルトの言いつけを忘れたのか?」
「べ、別に食べに行くくらい良いだろ?
なんだったら、ルカも来るか?」
「……行く」
「ほーほー、こうやって周りの女の子を翻弄しちゃって…
やっぱりマミヤ君は女の敵だね〜!」
「ちょちょっ…!突くな突くな」
指で背中をブスブスと刺してきた
まさか後ろに気をつけろってモネなりの暗示なのか…?
☆☆☆
時刻は夜、一日の仕事を終えた人々が家に戻り、街灯や建物の明かりが次々と煌めく時間だ
結局、夜になってもジオン達は戻らなかった
ちょっと心配だけど、一応あいつだって貴族だ
きっと大丈夫のはずだ
俺たちはセリーヌ達の待つ、冒険者ギルドへ向けて出発した
「この街の夜の顔はレガリアと違って静かだな。
2区なんてウゼー客引きとかいっぱい居るのに」
「フフ、そうだな。
早くも我が国のあの喧騒が恋しくなってしまったよ」
「でもきっと、冒険者ギルドなら賑やかなんじゃないかな?
ていうか何気にボクそこ行くの初めてかも!」
さっきから妙に上機嫌なモネはルンタッタと、小刻みにステップを踏みながら先頭を歩いている
そんなに冒険者ギルドに行きたかったのか?
あんなむさ苦しい所…
「零人…少し助言というか、警告してやる。
あまり女と『約束』を交わすんじゃない。
君が思うより、女性は『約束』を大事にしている」
「お、おう?え、いきなり何の話?」
「鈍感な君に言っても無駄か…」
ルカは前へ飛んで、モネの隣に行ってしまった
『約束』を交わすな?
どういうことだ?
☆☆☆
ルカに言われた警告を考えながら歩いているうちに、いつの間にかギルドへ到着した
朝はセリーヌが無理やり引っ張ってくれたけど、さすがに人族の俺が扉を開けるのは躊躇われるな
ナディアさんも緊張した面持ちになってるし
こういう時は頼りになるあの人の出番だ
「その…ザベっさん。
悪いんだけど、酒場まで引率してくれる?」
「かしこまりました。
ですが、パーティーリーダーはレイト様です。
貴方様が堂々と構えなければ『格好』がつかないのでは?」
「…………」
意外だ…
ザベっさんがこんなこと言うなんて
確かに俺は少しビビり過ぎなのかもしれない
「アンタの言う通りだ。
分かったよ。俺も先頭で皆を引っ張るよ」
「フフ、では共に参りましょう」
ザベっさんは俺の言葉に微笑みで返すと扉を開けた
☆☆☆
「チッ、人族かよ…何しに来たんだ」
「待て、ヒョロ黒髪の隣に『霊森人』もいるぞ。
この王都じゃ珍しいな」
「あの黄金鎧の女も相当じゃねぇか?
とんでもない魔力を感じるぜ」
ヒソヒソと、ギルド内の冒険者達が話している
ザベっさんに言われた言葉を意識して、胸を張りながら歩いているが、どうも俺以外のメンバーに慄いているように感じる
なんか恥ずかしい……!!
「酒場はたしかここを真っ直ぐだったな。
む、どうやらあちらは揃っているようだぞ」
俺の頭上でふわふわと浮きながらルカが教えてくれた
どれどれ…
大きなテーブルに3人だけ座っている組がある
デカい金髪とムキムキの鱗野郎、それにちっこい猫耳…
ホントだ、アイツらだ!
「おーい!みんな〜!」
「あ!おまっ!?」
何を思ったかモネが大きな声で呼びかけてしまった
もー、せっかく後ろからバァッてするつもりだったのに
「………?……!!!」
当然、その声に反応したアイツらはこちらに顔を向けた
ん?フレイが席を立った…ちょちょちょ!?
とんでもない形相でこっちに全力で走ってきた!
「ヤバいヤバい!何かアイツ怒ってねぇ!?」
反射的に踵を返すが、いつの間にかほんの数メートルまで来ていた
は!?走るの速くね!?
そして、背中からトラックが突っ込んだような衝撃を食らった
ドカッ!!
「なんで逃げんのよレイト!!」
「そんなおっかねぇ顔して向かってきたら逃げるだろ!?」
「うっさいわね!
いいからこっち向きなさい!」
背中にタックルをかまされた所をさすりながら、身体を回転させてフレイの方を見た
はぁ、はぁ、とお互いに息を荒くしながら無言で見つめ合っている…
勝気な性格…変わってないな
フレイの翡翠色の瞳も相変わらず綺麗だ
あれ、綺麗っていうか妙にキラキラして…
ポタッ、ポタッ…
泣いてる!?
フレイの両目からどんどん涙が溢れてきた!
「お、おい!?どうした!?大丈夫か!」
「うっ…うう…!レイトぉ…!」
カバッ!
フレイは俺に抱きついて肩を濡らし始めた
「このバカぁ…!
アンタのことどれだけ心配したと思って…」
「フレイ…」
「それに私…寂しかった…!
暫く離れてみて分かったの。
レイトが居ない生活なんてもう…イヤよ」
ギュウウウ!!!
「ぐおおおお!?折れる折れる!!
フレイ、俺の大事な何かが折れるって!!」
抱き締める力をさらに強めてきた!
万力かコイツは!?
身体からミシミシと嫌な音が聴こえてくる!
「だから、もう私こんなの金輪際ごめんよ。
これからはあなたと一緒に…」
「分かった分かった!!
頼むから離してぇぇぇ!!」
「シュバルツァー!!
零人の身体をテトラポットにするつもりか!?
早く離すのだ!」
その後、フレイがベアハッグを解放してくれるまで5分くらいかかった




