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スター・スフィア-異世界冒険はおしゃべり宝石と共に-  作者: 黒河ハル


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第36話:幸運な男と不幸な男

「皆、目的地だぞ」



レガリアを出発してから半日くらい経ち、ようやく腰を落ち着けられる町へ到着した

もう『炎獣(イフリート)』の炎は懲り懲りですわ



「『オットー・タウン』。

ん〜久しぶりに来たなぁ。

取り敢えずキャラバンを厩舎に預けてこようか」



モネが背伸びしながらその施設がある所へ指を差した


ふぅ…


それにしても、検問所から貰った腕章を付けてるお陰なのか分からないけど、思ったより町の人々からの反応は悪くないな


ここに来るまでの通行人は、すれ違うともれなくガン飛ばしてくれたが、この町の人達は普通に挨拶をしてくれる

過去にモネが来て爆発騒ぎを起こしたとは思えない反応だ



「どうしたマミヤ殿?ボーッとして…

置いて行くぞ?」


「ああ、はい!今行きます」



☆☆☆



「それで、元依頼人さんとやらはどんな人なんだ?」



厩舎にキャラバンごとクルゥを預けた

管理人さんは快く承諾してくれた


一安心してモネに尋ねると、彼女はニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべながら答えた



「実はね、この町『オットー・タウン』の町長さんの息子さんなんだ。

まぁ、要するに貴族だね」


「貴族!?

そんな人達まで依頼をよこすのか…」


「まぁね〜。

詳しくは言えないけど、前に王族の依頼も受けたことあるよ」


「マジかよ…」



占術士(フォーチュナー)』パねぇ!

彼女は色んな所へ巡業するとは聞いていたけど、こんなに顔が広いとは…



「それではその町長とやらの家へ向かえば良いのだな。

場所はどこだ?」


「この往来道を真っ直ぐ行った突き当たり…

アレだよ」


「アレ?

…まさか、あの屋敷のことを言っているのですか?」



シルヴィアがモネの示した方向に顔を向けると、そこには『マミヤ邸』と同じくらいか、それ以上の大きさの建物が鎮座していた


えぇ…あそこに向かうの?



「貴公ら何をたじろいでいる?

たかが貴族ではないか」


「もうじき日も暮れる。

さっさと情報を得に行くぞ」



ナディアさん達は臆する気持ちを微塵も感じさせずに、ズンズンと向かってしまった

俺とシルヴィアは顔を見合わせる



「…とりあえず向かいましょうか」


「なんかすごく嫌な予感がするけど…」


「レイトさん?

貴方の悪い予感は高確率で当たります。

そういう事言うのホントにやめてください」


「あ、はい」



☆☆☆



ここが町長さんの屋敷…

近くに来るとやっぱりデケェな



「こんにちはー!モネです!」



元気よく声を出してコンコンとドアをノックしている

あ、相手は貴族なのにそんな感じでいいのか…?



数秒後、立派な観音扉がガチャりと開き、中から給仕服を着た女の人…メイドが出迎えてくれた



「いらっしゃいませ。…!貴方は…」



おおっ!


これが()()のメイド…

しかもエルフ族だ!綺麗な人だなぁ…


だけど、瞳の色がフレイとは違う?

フレイは翡翠色に対して、彼女は真っ赤な瞳だ

ポケーっと見とれていると、ナディアさんが不服そうに腕をつねってきた


すんません…



「お久しぶりでございます、ラミレス様。

本日はどのようなご要件で?」


「うん、ちょっとねー。

星の導きって言えば分かるかな?」


「…左様でございますか。

本日は旦那様が不在ですが、よろしいですか?」


「大丈夫!用があるのは『ジオン君』だから」


「かしこまりました。

それでは、どうぞ皆様お入りください。

オットー邸へようこそ」



☆☆☆



「こちらでお掛けになってお待ちください。

ただいま坊っちゃまを呼んで参りますので」



メイドさんに案内してもらい、客間と思われる部屋に通された

俺たちのアジトにも同じような部屋はあるけど、なんていうか『ザ・お金持ち』って感じの雰囲気だ

ていうか、家爆発したんじゃなかったのだろうか?


貴族…貴族かぁ

どんな人が来るんだろう



「ちょっとマミヤ君。

そんなにキョロキョロして…

みっともないよー。

お上りさん丸出しじゃん」


「う、うるさいな…慣れてないんだよ」


「ふふ、初めて『理の国(ゼクス)』の王都に着いた時もこんな感じだったな。

正直私には自宅との違いがあまり分からんが」


「何も相手が貴族だからといって構える必要は無い。

最低限の礼節さえ弁えておけば問題にはならんさ」



さすが貴族の出であるナディアさんは落ち着いている

そうだ、前にも王様との謁見を乗り越えたじゃないか

それに比べたら何だって言うんだ



「あの…モネさん。

先ほど『ジオン君』と言っていましたが、その方はどんな人物なのですか?」



俺と同じく、あまり落ち着いていないシルヴィアは緊張を紛らわす為か、モネに質問した



「ひと言で言うなら、『変人』だね。

彼ほどクレイジーな人はあまり出会ったことないよ」


「クレイジー!?

そういえばお前、さっき『不幸大好きマン』って…」


バン!


俺がモネに訊くと同時に部屋のドアが開かれた!

来た!



「僕の噂話をしているのは君たちか!!

歓迎、歓迎!

さぁ、どんなことを話していたんだい!?」


「「「!?」」」



ビッ…ビックリしたぁ!!

長身の男がいきなり乱入してきやがった!

この人もメイドさんと同じ…エルフ族だ

瞳は…あれ?こっちは翡翠色だ



「坊っちゃま。お客様の前です。

お控えください」


「ふん、そう固いこというな、エリザベスよ。

我が家に客人が来訪するなど随分久しぶりだ。

これが興奮せずにいられようか!」



坊っちゃまと呼ばれたその男は、客間のいちばん大きい椅子にドカッと腰掛けた



「久しぶりだな!ラミレス嬢!

今日来てくれたのは、ようやく僕との交際を受けてくれる気になったということだな?」


「ざんねーん。

ボクは貴族と結婚する気なんてサラサラないからね〜。

ジオン君、早く良いヒト見つけなよ」


「笑止!

君ほど僕を『理解』してくれる者は居ない。

それに君も『金』が必要なのだろう?

僕たち以上に相性の良い組み合わせなど無いはずだ!」



…おや?

この男もモネの『仮面遊戯(ペルソナ)』について知ってるのかな?

それとも、単に占いの代価の事を言っているのか



「そう言うと思って、今日は君のライバルになれるいい人を連れてきたんだ。

マミヤ君!」


「は!?な、なんだよ…」



モネが俺の腕を無理やり引っ張って男の前に立たせた



「この人はねー、異世界からやって来たんだ。

最初に何が起こったと思う?」


「い、異世界…?

黒い髪…なかなか珍しい毛色の男だな。

それで、なんだと言うんだ?」



男が訝しげに訊くと、モネはわざとらしい口調で答えた



「なんと!

いきなりあの『黒竜(ブラック・ドラゴン)』に出くわしちゃったんだよー!?

ヤバくない!?」


「な、なにぃ!?お、おい君!

その話は本当なのか!?」


「ちょ!?あばばば!!

な、何すんだアンタ!」


「貴様何のつもりだ!?零人を離せ!」



ガクガクと肩を揺さぶられた

な、なんだ?まさかドラゴンが好きなのか?



「坊っちゃま、いい加減に。

貴方様はオットー家の次代という事の自覚をなさい」



厳しい口調と共にメイドさんがガバッと男を引き離してくれた

た、助かった…



「ハァハァ…す、すまない。

だが、詳しく教えてくれないか!?

君は何者でどういう『人生』を送って来たのかを!」



☆☆☆



「オホン…先ほどは失礼した。

改めて、僕が町長が息子、ジオン・オットーだ。

そしてこっちが…」


「屋敷の使用人を勤めております。

エリザベス・センチュリーと申します。

皆さま、どうかお見知り置きを」



やっとまともに会話ができるようになったところで、俺たちはお互いに挨拶と自己紹介を交わした

そして、ジオンさんの先ほどの質問に答える



「遠い星より突如『転移(テレポート)』し、見知らぬ大地に放り出されたうえ、最初に出会った魔物の『黒竜(ブラック・ドラゴン)』に殺されかける…

ま、負けだ…!僕の負けだ!

君にはとても敵わない!」


「…はい?

ジオンさん、『負け』ってどういう事ですか?」



ジオンさんは両手を頭に置いてテーブルに伏せてしまった

今の話のどこに彼が負けると思うような所があったんだろう?

ただのトラウマ話なんだけど…



「僕の事は呼び捨てで構わない。

それに敬語など不要だ!

たしかに君はラミレス嬢が一目置くだけあるな!

素晴らしい経歴を持っている!」


「ええ……」



話がさっぱり通じんのでモネの方に視線を向けると、クスクスと笑い出した



「彼はねー、とーっても『不幸』な出来事が大好きなんだ。

ボクも星もビックリするくらいの『幸運』の持ち主なんだよ」


「はぁ?

『幸運』の持ち主が『不幸』な事が大好きって…

どういうことだよ…?」



おかしくね?

幸運ならそれでいいじゃん

なんで不幸な事を望むんだ?



「僕は生まれながらにして、人生で一度も『失敗』をしたことが無い。

レイト殿、それが何を意味するか分かるかい?」


「え?それは…とても幸運としか…」


「そうだ!だが、僕は幸運など望まない!

君に分かるか?

地頭が良過ぎて、少し勉強しただけで『学園』の首席になってしまい、勝手にクラス代表にされてしまった辛さを!」


「…………」


「君に分かるか!?

元々、没落貴族だったオットー家の再興に燃えていると、ちょっと人助けをしただけで人脈と資金が知らぬ間に調達できてしまい、大した弊害もなく領地と富を得てしまった虚しさを!」


「………あの」


「君に分かるか!?

せめて領民が暮らしやすい町づくりを頑張ろうと意気込んでいると、『理の国(ゼクス)』の大貴族が遊びに来て、分かりやすく法、施設基盤(インフラ)、税金のバランスなどを指南され、怒涛の勢いで『亜人の国(ヘルベルク)で住みやすい町』第1位になってしまった切なさを!」


「…………ちょっと」


「君に分かるか!?

結果、僕は何もしていないのに町の領民から『ジオン様!税金足りてますか!?』『ジオン様!結婚して!』ともてはやされ続ける窮屈さが!」


「おいコラ!!!ただの幸福自慢じゃねぇか!

なんだてめぇ不幸な零人くんに喧嘩売ってきてんのか!」


「マミヤ殿!?お、落ち着け!」



思わず耐えきれずにジオンの胸ぐらを掴みあげてしまった

しかし彼は、大して怯みもせずに俺の手首を掴んで真っ直ぐに俺の目を見つめてきた



「違う!!僕は君が羨ましいんだ!

僕は『苦労』を知らない…

小さい頃から何もかもが恵まれ過ぎて、何事にも『挑戦(チャレンジ)』しても、あっという間に解決してしまうんだ!

そして多分、この状況だって…」


「はぁ?何を…」



俺が疑問をぶつける前に、()()は来た


ガッシャアアン!!


「ぶべらっ!?」


「零人!?」



客間の窓からボールが突っ込み、そのまま俺に命中した!

いっでぇ!!



「ほらぁぁぁ!!!!いつもこうなんだ!

僕が何をしてもされても、絶対僕の都合が良いように状況が出来上がってしまうんだ!」


「それの何が悪いってんだよ!

俺なんて今日は3回も『炎獣(イフリート)』の炎を浴びたんだぞ!?

アンタだってそんな思いしたくないだろ!」


「な、なんだって…?う、うあああああん!!

僕もそんな体験してみたいいい!!」


「と、取り敢えずお2人とも落ち着きましょう?

レイトさん、治療しますので…」



泣き崩れるジオンをエリザベスさんが、頬が腫れ上がった俺をシルヴィアがそれぞれ介抱してくれた


……彼には幸運の女神が微笑んで、俺には不幸(ドラゴン)の神でも微笑んでるのだろうか




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