第31話:はじめての合コン
オズベルク・ダアトとモネ・ラミレスがウチに住み始めて数日が経った
初日の稽古時に、みんなそれぞれの欠点と改善点を見つけてもらってからは毎夜、『マミヤ邸』地下室でのトレーニングが日課になりつつあった
フレイとシルヴィアは魔法のレパートリーを増やしたり、新しい戦い方を模索している
フレイに関しては元々、様々な属性の魔法と武器を扱えることもあって、戦闘の手段の選択肢は多い
対してシルヴィアは、『聖教士』の分野しか学んでこなかったため、光属性の魔法以外は並レベルだ
そこで彼女は、おっさん直伝の水魔法と光魔法を組み合わせた戦法を考えているようだ
「フレデリカさん。
今度は、『輝光線』と『水幕』を組み合わせた魔法を試してみたいのです。
よろしいですか?」
「ええもちろんよ。かかってきなさい」
☆☆☆
次にセリーヌとナディアさんは、戦闘訓練ではなく、椅子に座って目をつぶり、静かに瞑想をしている
2人ともメンタル面をおっさんに指摘されたためか、戦闘テクニックを磨くことよりも、イメージトレーニングで心を強くすることを優先しているようだ
そして、『召喚』の使い手のナディアさんは、己の身に宿る『炎獣』と、コンタクトを取り始めた
はじめは呼びかけても応答が無かったが、最近ようやく『炎獣』から返事が返ってくるようになったという
ナディアさんが『対話』する時には、彼女の目の前に赤い光を放つ、高エネルギー体が出現する
多分、あれが『炎獣』なのだろう
「ああ、そうだ。
貴公の本当の闘い方を私に教えてほしい…
こう見えて、私は頑丈だ。
どんな戦法だろうとモノにしてみせるさ」
「……………」
「ふん、今さらだろう?
何年私と共に闘ってきたのだ?」
目の前の赤い光は何も反応してないように見えるが、ナディアさんだけには『声』が聞こえるようだ
……どんな奴なんだろう?
話せるものなら俺も会話してみたいなぁ
☆☆☆
最後に、『同調』状態の俺とルカ、そしてリックは、おっさんの直接指導のもと、格闘術を学んでいた
俺が体術で習ったのは『ガルド流護身術』、リックが使用しているのは『竜式格闘術』だ
これに水魔法を用いた彼の格闘術…『海竜式格闘術』を組み合わせれば、どんなパワーがある敵だろうと、ステゴロで撃破できるらしい
…本当かいな?
漫画じゃあるまいし…って言いたいとこだけど、初日のあの華麗な体術を見せつけられしまっては納得するしかない
『海竜式格闘術』は基本的にカウンター主体の戦法だ
自らの力だけで臨むのではなく、意表を突いたり相手の力を利用してそのまま返すという、かなりシビアな格闘術だ
けど、この戦い方はガルドの格闘術にも通じるところがあり、俺的には結構合っていた
フレイの親父のウィルム村長には俺のいた世界では闘いとは無縁ということを伝えていた
そこで彼は俺に肉体改造をせずとも、敵と互角に渡り合える護身術を伝授してくれた
……村長、元気にしてるかな
「よォし、行くぜ黒毛!ぶっ飛ぶなよ?
『竜式正拳突き』!」
「フッ…!お返しだッ!『流水反撃』」
リックの正拳突きを肘でいなし、その勢いを利用して同じ正拳突きをぶち込んだ
ドゴッ!!
「ぐっ!?…へっ、さすがにやるじゃねェか。
結構、良いの入ったぜ」
「ふう、やっぱりリックの身体硬いなー。
戦車みたいだぜ」
攻撃をした右手をブンブン振っていると、おっさんがパチパチと拍手しながらこちらに来た
「貴殿はガルドで傭兵の格闘術を習っていたのだったな。
飲み込みが早い。
しかし、我輩の格闘術は水の魔力が無ければ本来使えない戦法のはずだが…」
「それか。
君のエネルギーの流れ方を覚えていたからな。
エネルギー配列を弄り、極力水の魔力の構成になるよう近づけたのだ。
つまりは、見よう見まねということだ」
「…素晴らしい。
『宝石』とはここまでの力を持っているのだな…」
おっさんが教えてくれた『海竜式格闘術』の1つ、『流水反撃』は、水の魔力を自分の肌の上に川の流れの如く纏わせ、相手の攻撃を魔力によっていなす
そして、攻撃をいなした際の勢いに己の力も乗せて、そのままカウンターをお見舞いする
厳密に言えば、さっき俺が使った『流水反撃』は本物ではないんだけど、ルカのお陰で形だけはなんとか再現できた
あとは練度を高めないとな
「よし、次はオレの番だぜ黒毛!
打ち込んでこいやァ!」
「……分かってるけど、本当にアレで殴ってもいいの?
かなり痛いと思うけど…」
「そう言われるとますます燃えてくるなァ。
遠慮すんな!」
「へいへい、ルカ!」
「了解だ」
「「『融解』!」」
ボン!!
『同調』状態から『融解』へシフトする
身体は宙に浮き、蒼のエネルギーがさらに高まった
ついでに髪も伸びた
以前、俺とルカはこれからの戦法について話し合った
基本的には『同調』を使用して、敵が極端に大きかったり、空中戦を主軸とする場合には『融解』を使う
さらに隠し球として、『仮面遊戯』をいつでも起動できるよう、仮面を腰に身に付けておく
こうすることで、より効率的なエネルギーの使い方になると俺たちは結論付けた
戦闘でいちばんヤバいのはエネルギー切れだしね
「さて…覚悟はいいかリック?」
「……!ヘヘッ、ビリビリ来やがるぜェ。
いつでもかかって来い!」
「行くぞ!おりゃァァァ!!!」
エネルギーを拳に集中させ、思い切りリックの腹めがけて打ち込んだ!
バゴォ!!
「ぐああっ!?」
「あっ!?リック!?」
リックはなぜかまともに俺のパンチを受けてしまい、後ろにド派手に吹っ飛んでしまった!?
ああもう、だから言っただろうが!
慌ててリックの傍に転移する
「うぐ…なんてパワーだ…
おめェ、そのヒョレェ身体のどこからこんな馬鹿力生み出せんだ…」
「バカはお前だよ!
なんで『流水反撃』使わないんだよ!?」
「あー…その…
避けたら負けな気がしてなァ…」
「とんだ単細胞だな君は…
そんな考え方では身が持たんぞ」
呆れつつリックの手を掴んで上体を起こす
おっさんもため息をつきながらリックに『流水回復』を掛けた
「まったく…貴殿の方はレイトと違い、水の魔力を扱えるのだぞ?
それにも関わらず、せっかく教えた我輩の体術を使わないとは…」
「へっ、わりぃなオズベルクさんよ。
どうもオレにはあんたの『受け』のやり方が合わねェみたいなんだ」
「そうか。
ならば貴殿には、別の技を伝授しようか」
おっさんはリックに手を差し伸べると、握って立ち上がった
どちらもドラゴンなせいか、こうやって見ると親子みたいだ
「零人、解除するぞ」
「うん」
「おっすー、みんな!調子はどうだい?」
「融解」を解除するのと同時に、モネが地下室へ入ってきた
こいつと一緒に住み始めて分かったが、帰宅する時間がいちばん遅い
学業を優先しろとは言ったけどまさかここまで大変なんてな…
そのうえ、夜はトレーニングだ
少し、彼女に悪いことを言ったかもしれない
「よぉモネ、お疲れ。今日はどうだった?」
「相変わらず鬼のような課題を出されちゃってねー
参ったよ…それはそうとマミヤ君。
ちょっとこっち来て」
「ん?うん」
俺とモネは部屋の片隅に移動する
なんだろう?
「例の話、決まったよ。
今週の週末は空けといてね」
「なっ!本当かモネ!?」
この話は以前に話した家に住む時にモネが提示した条件だ!
思わず大きな声を出してしまった口を慌ててつぐむ
この話は奴らに…特にナディアさんに聞かれるわけにはいかない!
「うん、ただこっちはボクを含めて3人なんだけど、どう?
そっちは集まりそう?」
「3人か…んー多分大丈夫だと思う。
場所はどこでするんだ?」
「それはまだ決めてないけど…
どこか良い店ある?」
「そうだな…あっ、そうだ…!
ちょっと遠いけど大丈夫か?」
「うん?どこなんだい?」
俺はニッと笑い、答えた
「『エステリ・ヴィレッジ』だ」
☆☆☆
週末、休日になり、俺は2区の喫茶店でリックと待ち合わせをしていた
「よぉ、黒毛。待たせたな」
「おう、なんだ?
お前も随分と気合い入ってるじゃねぇの」
「あたぼうよ!なんたって今日は…なぁ?」
俺たちはニヤリと笑い合う
そう、今日はモネがセッティングしてくれた、アルタイルの現役女子大生との飲み会…つまり合コンだ!
何気に合コンは元の世界でも行ったことがなかったので、すごく楽しみだ
今回は3対3の6人で行うため、こちらも人数を揃えなければならなかった
俺はギルド内で野郎どもから嫌われてるから、男性メンバーを集めるのには難儀するかと思ったが、意外にもリックがOKしてくれた為、さほど苦労しなかった
理由を訊くと、相手側の1人にもの凄い美人の『蜥蜴人』の女性が居るとモネが教えてくれたからだそうだ
…まぁそちらはリックに任せるとして、あとの1人はなんとめっちゃ巨乳のお姉さんらしい
俺はそっちの方に興味津々だ!
以前、アルタイル大学にローズさんの書簡を届けに行くミッションをセリーヌに横取りされてしまったため、泣く泣く身を引いた
だが、今回は正々堂々と女子大生とお話ができるのだ!
そうなると、残りのメンバーと狙いがダブるとマズイので、慎重な人選が必要な訳になる
そこで俺は会場をエステリ村に居る友達…ルイス君にお願いして、彼のバーを使わせてもらうことにした
さらに、メンバーにルイス君を加える
彼はフレイにぞっこんなので、狙いが被ることも無いと踏んだのだ
モネから合コンの話を聞かされた翌日にすぐ彼宛てに、今回の話を手紙に慣れない字で書いて送った
すると、当日中に返事が返ってきて、『大歓迎だぜ!』とでかでかと書かれていた
どうやら彼は、会場に自分のお店を利用してくれることが嬉しいようだ
計画はカンペキ、そして準備は整った
さて、そろそろ向かいますか!
会計をして、俺とリックは店を出る
…が、そこで出会ってはならない人物と遭遇してしまった
「ニャ?レイト君とリック君?
今日は朝から見ないと思ったら、こんな所で何してるのニャ?」
「「!?」」
ヤベぇ!
セリーヌが巡回してやがった!
わざわざ2区で待ち合わせまでしたのに…
今回の話は俺とリック、そしてモネ内での秘密のイベントだ
なぜならこういう事にかなり厳しい、こわ〜いナディア総隊長にバレてしまうとひどいお仕置をされてしまうからだ
だが、まだセリーヌならなんとか誤魔化せるはずだ!
「いやぁ、その…
たまにはこいつと男の付き合いも大事かなって思ってな。
なっ、リック?」
「そ、そうだぜ銀ネコ。
なにも企んでなんかいないからな?」
「ふーん?
それならなんで2人ともちょっとおめかししてるのニャ?」
おいロリババア!
いつもは服装についてなんて興味ないくせに、なんで今日に限って突っ込んでくるんだ!?
「…おい、黒毛。早いとこ逃げようぜ。
他にめんどくさいのが来たらたまったもんじゃねェ」
「分かってる…じゃあな、セリーヌ!
俺たち今日はちょっと忙しいんだ!」
「ニャッ!?レイト君!?」
ブン!
俺とリックは半ば無理やりその場をあとにした
☆☆☆
エステリ村に転移し、村の入り口に到着した
すると、そこにはツンツンヘアーがトレードマークのルイス君がポケットに手を入れて立っており、俺たちを待っていた
「ハッハー!久しぶりだなレイト!
元気にしてたか?」
「ルイス君!
なんだよ、こんな所でずっと待ってたのかよ」
互いに拳を突き出して挨拶をする
まだそんなに時間は経っていないはずなんだけど、随分久しぶりに感じるなぁ
「そんであんたがレイトのパーティーメンバーなんだってな?
よろしく頼むぜ、俺はルイス・モルゲンだ」
「ああ、リック・ランボルトだ。
今日は邪魔させてもらうぜ」
ルイス君とリックは軽く握手をして挨拶を済ませた
よしよし、あとは肝心の女子メンバーだけど…
「ルイス君、モネ達はもう来た?」
「『占術士』のアルタイル学生だったか?
いや、まだ来てねぇな。
集合時間は昼の鐘時だろ?
まだそれなりに時間があるから先に俺の店で待ってようや」
「おっけー」
俺たちはルイス君に連れられ、村の中に入った




