第29話:それぞれの力量
地下水道での闘いの後、俺たちは依頼人のオヤジを介抱して、その場を後にした。
『海竜』のおっさん…オズベルク・ダアトは、修業の場はなんと俺たちのマミヤ邸で行うらしく、準備のためにその日はいったん解散することになった。
てか、まさかおっさんも住むつもりなんだろうか…?
ドラゴン枠はリックだけで充分なんだけど。
そして時刻は昼時、モネに色々と訊くことが山積みだったので、近くの定食屋さんでお昼ご飯を一緒に食べることになった。
…一応、今回のお礼も兼ねてって事で。
串焼きを頬張りつつ、隣に座っているモネに質問を投げる。
「なぁ、結局今回の依頼人さんの不幸って何だったんだ?
ドラゴンはどっちかっていうと、俺に向けた不幸だった気がするんだけど…」
「ああそれ?
あのおじさんの不幸は、フレデリカ君に殴られたことだよ。
あの様子だと、大したことないダメージだと思うけど。
ちなみにキミは星を怒らせなくても、自然と不幸がやってくる体質みたいだね。
ご愁傷さま〜」
な、なんじゃそりゃ…?
言われてみれば、たしかに俺はあまり運に恵まれてないような気もする。
まあ、それはそれとしてコイツは俺との取引をちゃんとしてくれたし、なんやかんや仮面の力で助けてくれたからな。
大人としてきちんと礼を言っとくか。
「モネ。その…えと…」
「どしたのマミヤ君?」
あ、あれ…?
改めて面と向かってお礼を言うの少し気恥ずかしいな。
朝の段階ではケンカしてたし…。
いや、俺が一方的に喚いていただけな気がする。
「あー…。
その、さっきは助けてくれてアリガトウ」
あかん、壊れたロボットみたいな発音になってしまった。
モネはポカンとしたあと、盛大に噴き出した。
「アハハッ!
もしかしてマミヤ君照れてるの〜?
結構可愛いところあるじゃん!」
「ちょお!? くっつくな天パ!」
一気にご機嫌になったモネは俺の腕に絡みついてきやがった。
直後、テーブルを挟んで向かいにいる女子2人が異様な殺気を放ってきた。
「何なのだあの女は!
以前、マミヤ殿が彼女を家に連れて来た時はあそこまで仲が良い様には見えなかったぞ!」
「…やっぱりあの子、レイトに気があるのかしら?
というかレイトもなんでされるがままに触らせてんのよ!」
「よせ、2人とも。
君たちも先程の闘いでラミレスに助けられた身だろう?
少しは大目に見てやれ」
「「うっ……」」
『闘い』というワードを出され、フレイとナディアさんは急に大人しくなった。
意外にもルカが俺に助け舟を出してくれた!
こういう状況になった時は、だいたい酷い暴言か折檻を食らうのが通例だったんだけど、ルカはようやくこれが不可抗力ということを理解してくれたようだ。
2人を宥めた後、ルカは無表情のまま俺に訊いてきた。
「ところで零人。今夜はアレするか?」
「えっ? いや、別に今日はしなくても…」
「するよナ??」
「…お願いします」
ヤバい、目が笑ってない…。
ルカも絶対これお冠なってる。
『アレ』とは耳かきのことだ。
まさか、耳ぶっ刺されたりしないよな?
大丈夫だよね?
「あーあー。
やっぱりマミヤ君ん家楽しそうでいーなー。
ボクもキミの家引っ越そうかなー」
俺たちのやり取りを見ていたモネがとんでもないことを言ってきた。
いや、勘弁してよ。
「お前んとこは、大学に寮があるんだろ?
別にそっちで良いじゃんよ」
「だってーあそこ1人部屋だし、ボクしょっちゅう仕事で出掛けちゃうから友達あんまり居ないしさー。
つまんないんだもん」
「つまんないって…。
あのな、あの家は一応、紅の魔王に挑む連中だけが住むのを許されてんだよ。
俺たちのパーティーに加わらないなら、諦めて寮で過ごすこったな」
ま、ウソだけどね。
こう言えばさすがに引くだろ。
…と思いきや、モネはキョトンとした顔で俺を見つめて予想外の返事をしてきた。
「え、別にいいよ?
キミのパーティーに入っても」
「「「!?」」」
はぁ!?
冗談で言ったのに本気か!?
「というか、その方が都合が良いかもね。
『占術士』の仕事も一緒にすぐ向かえるし、星の導きでキミたちを助けられるし」
「だ、だけどよ、お前戦闘できないんじゃ…」
「心配ご無用っ!
ボクも『仮面遊戯』の力で戦えるよ!
もっとも、ボクの家系しか使えない魔法だから、どっちみちキミが『仮面遊戯』を使うにはボクを傍に置いとかないとダメなんだよね〜」
な、なんだと!?
せっかく、『転移』以外の力を手に入れたと思ったのに…。
初めて魔法を使えたあの感動を返せ!
まだ渋っている俺を見かねたのか、モネはやれやれとため息をついた。
「んもー、しょうがないなぁ。
それならこの条件ならどう?
ちょっと耳貸して」
「な、なんだよ?
………なぬっ!? ま、マジで?」
「マジだよー。星に誓ってマジだよー」
「よし、歓迎するぜモネ。
待ってろ、帰ったらお前の部屋キレイにしとくから」
「「「零人(マミヤ殿)!?」」」
その条件は、俺の首を頷かせるに充分過ぎるぐらいのモノだった!
ぐへへ、楽しみだぜ…!
「ちょ、ちょっとモネ!?
いったい何をレイトに吹き込んだのよ!」
「何やら零人から邪な気配がするのだが…」
「ま、まさか、あの2人…。
夜な夜な肉体関係を結ぶ気では…!」
「結ばねぇよ!」
好き勝手に言ってくれる!
前に、ナディアさんにフレイとの情事?を目撃されてから、家でいやらしいことをいたすのは全面的に禁止になった。
あれは俺のせいじゃないのに…。
しかし、これ以上この話題を続けるには、危険な状況になってきたので、強引に話題を変えることにした。
「オホン…パーティーに入る件は了承したとして、大学の授業はどうするんだ?
現役で学生だろお前」
「仕事と被っちゃったらサボるしかないねー。
キミたちの冒険業で困った時は声かけてよ。
できる限り手伝うからさ」
「いや、それはダメだ」
「ええ? どうして?」
きっぱりと断ると、モネは意外そうな表情を浮かべた。
「学校に通えるなら通えるだけ幸せなんだよ。
将来の事、ちゃんと考えてるなら学校は行っとけ」
「マミヤ君…。
そっか、キミも本来は学生って言ってたね」
「…ああ。俺も戻れるなら早いとこ戻って、授業の遅れを取り戻したいんだがな」
「その際は私も手伝おう。
君の学んでいる『心理学』はとても興味深い学問だからな。
是非とも一緒に学ばせてくれ」
「ああ。
てかまず退学になってなきゃ良いんだけどな」
3人でアハハと笑っていると、フレイが深刻な顔になっていた。
どしたんだコイツ?
「ね、ねぇ…。
まさか、あんた元の世界に帰ったら、もうこっちに来ないつもり?」
「え? んー別にそんなことないけど…。
というか、戻って来れるかはルカ次第なんじゃない?」
地球に帰ったあと、またこっちに戻る…ね。
考えたこともなかったな。
今は帰ることよりも、候補者を見つけなきゃだし。
ルカは腕を組んで考えながら答えた。
「そうだな…、この星と零人の居た地球がどれくらい離れているかにもよるが、2つの星を繋げるための転移に使うエネルギーさえ確保できれば、往来は可能だろう。
既にこの星の座標は何度も打ち込んでいるからな」
「そ、そう…、それならいいのよ。
で、でも、もし帰ってあんた達に二度と逢えなくなったりしたら…私そんなのイヤよ…!」
フレイは今にも泣きそうな表情で訴えるように叫ぶ。
…数ヶ月とはいえ、ずっと一緒にいたからな。
いきなり俺たちが居なくなったらそりゃ寂しいよな。
「フレイ…安心しろよ!
もし俺たちが地球に帰ったとしても、またここに戻ってくるからよ!」
「ああ、それに君との約束もあるからな。
私だけ抜けがけなどしないさ」
「レイト…ルカ…! うん!」
俺たちがフレイの肩に手を置いて励ますと、フレイは少し笑顔になった。
それにしても、『約束』?
てか抜けがけって何のことだ?
前にも同じこと言ってた気がするけど。
「ふふふ、3人は仲良しなんだね〜」
「そうだな。
この間に割って入ろうなど、おこがましいのかもしれんな…」
ほのぼのとした雰囲気を感じたのか、ナディアさんとモネは温かい表情になっていた。
なんですか、そのクレアおばさんみたいな微笑ましい顔は。
その様子を見ていたモネが突然挙手して、ルカに問いかけた。
「ハイハイ!
ボクも訊きたいんだけど、ルカ君の兄弟って5人なんだよね?
他の子は何ていう名前なの?」
あ、それ俺も知りたいな。
何気に『撃の宝石』以外の宝石についてはまだ知らない。
「……申し訳ないが、『撃』以外の兄弟については、まだ記憶が戻っていないので分からないのだ。
兄に会うか、その宝石の詳しい能力を知れば思い出すとは思うのだが…」
「んーそっかー。ゴメンね、変なこと訊いて」
「構わんさ。
いずれ他の兄弟全員と会えることを、私は信じている」
「ルカ…」
彼女と出会った頃は、自分は誰なのかどこから来たのかさえ思い出せずにいたんだ。
きっと俺以上にルカの方が孤独な気持ちがあるに違いない。
「ふふ、ルカのお兄ちゃん、お姉ちゃんかー。
『星の宝石』だと、『紅』『紫』『金』『翠』『蒼』が登場するのよね。
私も他の宝石たちと話してみたいわ」
「ボクも! 絵本と実際の宝石の性格が違うって分かったし、他の子もきっと素敵だよ!」
『星の宝石』ファンの2人はキャッキャッと盛り上がってる。
もしここにラムジーも居たらさらにヒートアップしたろうな。
当の本人のルカはなにやら神妙な顔を浮かべていた。
「ラミレス、そのことなんだが…」
「ん? どうしたの?」
「…いや、今は言うべきことではないな。
すまん、忘れてくれ」
「んー? そう?」
おいおい、そんな言い方だとこっちが気になるだろ…。
宝石トークが終了したところで、ナディアさんがみんなの予定を聞いた。
「さて、腹も満たせたので私は報告のため警備隊本部に戻るが…
貴公らはどうする? 家に帰るのか?」
「ボクはこのまま大学に戻るよ。
午後の授業には間に合いそうだからね〜」
「元々今日はモネの仕事を手伝うために、冒険業の休みをもらったからなー。
帰って部屋の掃除でもしてますよ」
「同じくだ。
今回、慣れない力を扱ったせいか少々疲れた。
よって私は休ませてもらおう」
「えぇー! それなら私も家に帰ろ…」
「いや、フレイはセリーヌ達のとこ戻れよ…。
あいつらきっと怒ってるぞ」
「ゔっ…わ、分かったわよ…」
そして店を出たあと、それぞれの行き先へ別れて解散した。
☆☆☆
3日後。
新たな入居者が2人、屋敷に訪ねてきた。
モネはもちろん、オズベルクのおっさんもやはり『マミヤ邸』に住むつもりだったらしく、大きな荷物を持ってエントランスに立っている。
その中でもひときわ目立つ物を背中に背負っていた。
なんだあれ、ギターケース…?
いや、それよりもはるかに大きい。
まるで『棺桶』のような…?
「ごきげんよう、黒き少年レイトよ。
本日より世話になるぞ」
「おっ、とっつぁんも今日から住むんだねー!
お互いよろしくっ」
「とっつぁんって…まぁ、いいか。
とりあえず2人とも部屋に案内するよ」
☆☆☆
普段ナディアさんとフレイが組み手をしている地下の訓練所にみんなを連れて来た。
修業初日ということもあって、今回はナディアさんも含めたウチのパーティーメンバー全員が参加だ。
おっさん曰くそれぞれの個性を育てるには、まずは自分に合ったトレーニング方法を見つけることが重要らしい。
そしてそのトレーニングを日常化することで、高威力の技に耐えうる身体と魔力の骨組みがガッチリとできていくのだとか。
「へぇ〜!
ここが『マミヤ邸』の地下訓練所か〜。
結構広いんだね!」
「レティに聞いていたとおりの情報だ。
ここならば存分に力を育てることが可能だろう」
モネは前にいちど、家に呼んだことがあるが、さすがに地下訓練所には連れてこなかった。
物珍しい武器や防具に興味津々のようだ。
「それで?
私たちを集めて何を始める気なのかしら?
またあなたと闘えばいいの?」
「話は聞いてるぜ。オズベルクさんよ。
てめェもオレと同じ竜の力を使うんだろ?
ちょいと手合わせしようや」
おうおう、戦闘バカ2人は活きがいいねぇ。
…あれ?
そういえばリックが人を名前呼びするなんて珍しいな。
彼が『海竜』だからだろうか?
「ふむ、そうだな。
まずは己の力量を知るところから始めるべきだろう。
全員で構わない、かかって来い」
「……! 言ってくれるじゃねェか!
舐めやがって!」
「全員で?
ダアト、君の力を下に見るわけではないが、地下水道の闘いで私たちに1本取られたのではなかったか?
流石に無理があるのでは?」
「あれは貴殿らに合わせた闘い方だったのでな。
弟子になりえる者か力を推し量っていたのだ」
「ほう? つまり本気じゃなかったと?」
「言の葉より行動だ。
遠慮せずに全力で来るといい」
そう言うと、おっさんは身体の中心から魔力を展開させた。
ゴウッ!!
すっげ…!
人型なのに、あのエネルギー量かよ…!
ビリビリと周りの空気が震えている…。
「ニャア!?
と、とんでもない魔力ニャ!」
「なんてこと…!
セリーヌさんだけではなく、このような力を持つ魔物が人里に住んでいるなんて…!」
同じ魔物であるセリーヌはもちろんのこと、『聖教士』のシルヴィアも、あのエネルギーには面食らったようだ。
「へへ…! そうこなくちゃな。行くぜェ!!」
先陣をリックが切り、一気に間合いを詰めた!
「『竜式正拳突き』!」
ボッ!と、リックの豪快なパンチがおっさんに突き刺さる!
「甘いな若人よ、『流水反撃』」
「なっ!? ぐはっ!!」
マジか!?
まともに食らったと思われたパンチを受け流し、その勢いを利用してリックにカウンターをぶつけやがった!
おいおい!
『海竜』って格闘もできるのかよ!?
「ハッ! ざまぁないわねリック!
『雷光射』!」
フレイはぶっ飛ばされたリックを鼻で笑うと、十八番の弓の魔法を繰り出した!
「ほう…流石はレティの娘。
以前の木属性よりはこちらの方が威力はあるようだな。
『流水幕』」
キィン!
「ああっ!? うう〜……汚いわよ!!」
地下水道の闘いで張っていたあのバリアか!
しかし、今回のは一瞬部分的に張って、矢を弾いただけのようだ
こんな使い方もできるのか…。
「『3点水弾』」
「きゃあッ!」
ドン!ドン!ドン!
3連発射された水の弾丸をまともに食らったフレイはダウンしてしまった…!
つ、強ぇぇ…!
「フレイちゃんの仇はあたしが取るニャ!
シルヴィアちゃん! 手伝ってニャ!」
「わ、分かりました! ******…」
パァァ!
セリーヌは『妖精猫』に変身し、シルヴィア は『詠唱』をして魔道杖にエネルギーを集中させている。
この戦法はもしかして…?
「なるほど、『吸血鬼』イザベラを御した戦法か。
…だが、我輩には通じんぞ」
「そんなのやってみなきゃ分からないニャ!
『鉄線拘束』!」
ビュン!と、鉄線を構えながら、目で捉えられないスピードでおっさんに突っ込む!
「『流水膜』」
「フニャアッ!?」
ステン!!
セリーヌの進路上に水溜まりを作って足を滑らせた!?
芸が多彩すぎるなこのおっさん!
セリーヌはそのまま勢い余って壁に激突してしまった。
「セリーヌさん!? ハッ…!」
「『詠唱』は威力が大きいが、基本的に隙だらけなのだ。
このように連携が崩れてしまえば破るのは容易い」
トン…
おっさんはシルヴィアの鳩尾に指を当てると、シルヴィアは膝から崩れてしまった。
…さっきから漫画でしか見ないような体術を平然と使ってる。
「やはり、貴方は只者ではないな!
この前の借りを返させてもらうぞ!!
来い、『炎獣』!」
ナディアさんは『召喚』を使用し、『炎獣』の赤い魔力が全身を包み込んだ。
今日は黄金鎧ではなく、給仕服のためイマイチ迫力には欠けている…。
赤く輝く大剣を構えて、踏み込もうとしたところをルカが止めた。
「待て、ウォルト。
ここは私たちと力を合わせるべきだ。
そもそも君の属性では、奴と相性が最悪だ」
「……むぅ、やむを得んか。
頼む、ルカ殿、マミヤ殿!」
「OKです! ルカ!」
「ああ! 心を合わせるぞ!」
「「『同調』!」」
「ふふ、ボクも忘れてもらっちゃ困るね。
『仮面遊戯』!」
『炎獣』を召喚してその身に宿らせたナディアさん。
『黒獄犬』の仮面を使用したモネ。
『同調』で力を合わせた俺たち。
流石にこの手勢ならいけるはずだ!
「召喚魔法と異邦の能力が2組…。
実に素晴らしい才能だ」
「そうやって余裕こいてて良いのかなー?
『黒炎弾』」
ドォン!!
モネがいきなり黒炎魔法をブッパした!
さすが、やっぱり本家は違うね!
「我輩の『流水幕』を打ち消した魔法か。
たしかに凄まじい威力だが、当たらなければ意味は無い」
おっさんはモネの魔法に合わせて水弾を撃って相殺させていやがった!
いつの間に…。
「私も負けてはいられん!『炎爪』!」
赤い爪を自らの得物から生やし、鎌のような形態の武器に変貌させた。
なるほど、ナディアさんは魔法合戦ではなく、肉弾戦で挑むようだ。
そうと決まれば!
「ナディアさん! 俺に合わせてください!」
「承知した!」
ブン!
俺はおっさんの背後に転移し、剣を突き出した。
「でりゃああ!」
「『流水反撃』」
ガクン!
くっ!?
リックに使用した技を俺にも使ってきやがった!
後ろに目でも付いてんのか!
攻撃をいなされ、体勢を崩した俺は無防備だが、第二陣のナディアさんがすぐ迫っていた。
「『炎舞闘』!」
鎌を横に構え、勢いよく回転したナディアさんがおっさんに突っ込んでいった!
「ふむ、60点…と言ったところだな」
ガシッ!
「うおっ!?」
俺の腕を掴まれ、そのままナディアさんの方向へ投げ飛ばされた!
やべぇ!!
「まっ、マミヤ殿!? くうっ!」
ドン!
ナディアさんは攻撃に入った体勢を無理やり止めたため、お互いに惰性で衝突した!
お互いの身体が絡みつきながら、ゴロゴロと地面を転がっていく。
ナディアさんの上に俺が覆い被さるような姿勢になってしまった。
むにゅ
「いちち…。
ナディアさん、だいじょ…ああっ!?
すっ、すみません!」
「う、うーん……」
どうやらナディアさんはのびてしまっている。
あ、危なかった…!
俺の右手がナディアさんの胸を思い切り鷲掴みにしていた!
気づかれてたらヤバかったぜ…。
「…零人。あとで覚悟しておけ」
あ、同調してんたんだった…。
「いやぁ、参った参ったぁ。
やっぱりとっつぁんはスゴいね〜」
パチパチと拍手をしてヘラヘラとしているモネは、これ以上は戦う意思を示さなかった。
…あの天パ、自分だけ痛い目みるの避けやがって。
おっさんはパッパッと身体に付いた埃を払うと、腰に手を当てた。
「分かったか? これが貴殿らの力量だ。
この程度では紅の魔王に挑んだところで、一瞬で蹴散らされてしまうのが関の山だ。
全力の我輩を超えなければ、奴に殺されると思え」




