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第3話 腹ごしらえから始まる異文化交流

「やっと…街に、着いた、わ……。ぱたり」


 川での巨大ワニとの激闘を制してから体感数時間は歩いた。気付けば日も暮れようかという空模様の中、アタシはスタート地点となるであろう街へたどり着いたのだった。


 とにかくお腹が減った。喉の渇きは川の水でいいけど食べ物はさすがにちゃんとしたい。間違ってもモンスターの肉なんて食べたくはないのだ、うん。


「おぉ〜……!」


 街に入るとそこはとても活気にあふれていた。入る時に門番とかはいなかったが、結構大きな街なのかな。


「お嬢さん、この街は初めてかい?」


 立派な街並みに見惚れていると、商売人然とした男に声を掛けられた。


「えっ? あー、まあ、そんな感じね。結構大きいみたいだけど、どんな場所なの?」

「ああ。ここは交易都市〈アイン〉。この国で一番大きい街ではあるが、比較的平和だよ。凶悪なモンスターも外の荒野に出なければ襲ってはこないしな」


 なるほど、だから門番がいなかったわけか。


「初めて来た記念に、街の中央にある聖堂へ行ってみると良い。もしかしたら女神さまの神託があるやもしれぬよ」

「女神の神託ねー……」


 ゲームめいていて胡散臭いが、貰えるものがあるのなら貰っておこう。初回ログインボーナスみたいなもんでしょ多分。


 人の流れを見ていたらその聖堂とやらはすぐに見つかった。大理石製と思しき純白の建物に、細部まで作り込まれた緻密な装飾やレリーフ。建物そのものが相当な値打ちのつくオブジェのようである。


 なんの気兼ねもなくその扉を開こうとして、アタシは鼻腔をくすぐった濃厚な匂いに足をぴたりと止めた。


「…!?」


 匂いの元は真横から。首が取れんばかりに回転させてそちらに視線を向ける。


 そこにあったのは、なんの変哲もない屋台だった。


 作られているのも普通の焼き菓子だし、作っているのも質素な洋服を着たそこら辺を歩いているような町娘だ。けれど対象の名前が見えてしまうアタシにとって、その少女の頭上には見過ごせない名前が表示されていたのだ。


 【■■の女神】と。


「……アンタ」

「ん。おひとついかがかしら、旅人さん」


 アタシの放つ剣呑な雰囲気にも臆せず、その少女は涼しい顔で焼き菓子を差し出してきた。いや、こちとらそんなもの食べてる場合じゃないのよ。


「アンタ、神さまなの? だったら、この状況のこともなにか知らない? なんでアタシはこの世界に呼ばれたの?」

「質問ばかりね。でも、混乱しているのね。無理もないかしら」


 やはりなにか知っているらしいその少女はにこりと微笑むと、持っていた焼き菓子を半ば強引に握らせてきた。


「だから、いらないって―――」

「ついてきて」


 あくまでもマイペースに【女神】の少女は屋台から離れると、横の聖堂のアーチ状の入り口へ入っていく。仕方がないから後を追いかけると、少女は聖堂の奥にある祭壇に向き合って静かに立ちすくんでいた。


 祈りを捧げている風ではない。なにか思うところがあるといった様子である。


 ゆっくりと近づくアタシに向かって振り向いた【女神】は意味深な笑顔とともに、一振りの剣を手渡してきた。まあ剣と言ったが正確には針のようななにかだ。細く鋭く、しかし切るには不向きな形。


「これは?」

「旅人さん。それは貴方が先に進むためのしるべ。この世界をお願いね?」

「ちょっとアンタは何を知っているのよ。どうしてアタシはこんな世界に―――」

「全ては全ての後にわかるわ」


 なんの答えにもなっていない。なぞなぞか?


 だが、女神の名を冠するその少女は勝手なことを言うだけ言って姿を消した。


「ああーもー!」


 地団駄を踏んでもどうにもならない。


 とりあえずもらった針のような剣を見ると、アイテム名は【製界の針】とある。いややっぱり針なんかーい。


「はぁ…。まあいいや。素手で殴り合うよりはマシでしょうよ」


 というかお腹が空いていたのを思い出した。


 聖堂を出たところで、先ほどの屋台をもう一度覗くと、女神の少女はやはりいなかった。代わりに一通の手紙と共に焼き菓子が置いてある。


『これは餞別代りよ。よおく味わってね』


 と記されてある。


「マジでムカつくわねあの女神……」


 貰えるのなら貰っておこうの精神で焼き菓子を頬張りつつ、アタシは残る問題である今日の宿屋を探しに行くのであった。

週一更新と言ったな。アレは嘘だ(


というわけで死ぬほど久々の更新です! 先の展開が定まらなかったりとか、他の作品を書いてたりとかですっかり疎かになってました……。またこここからじわじわと書いていこうと思うので、暇なときにでも読んでやってください!

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