第2話 初戦闘から始まるスキル確認
謎の黒幕 (がいるはずだと思っている) の思惑に従うのも癪だが、とりあえずアタシは当てどもなく歩いてみることにした。ジッとしていられない性分なのだ。
「街らしき影すらなし、と…。どんだけ田舎に飛ばされたのやら」
せっかくなら始まりの町みたいな人の多い場所が良かったなあ。さすがにハードモードが過ぎないかしら。
「喉も渇いてきたし…そろそろ川とかみつけないと死ぬ……」
目も砂煙でしょぼしょぼするし、喉もカラカラだ。今目の前に水たまりでもあれば迷いなく口を付けているレベル。
そうこうしてふらつきながらも辛うじて前に進んでいると、ついに待ち望んだ物にめぐりあえた。
「川……!!」
荒野の切れ目を境界線のように横断している川。さらさらと流れている透きとおった水は十分飲めそうで、ほっと一息つこうとしたその瞬間。
「ガァアアアアアアアア!!」
「え、なに!?」
突然、川の中から飛び出した影に吹き飛ばされて派手に転ぶ。
飛び出してきたのはアタシの身長なんてゆうに越える体長のワニだった。なんだこれ、モンスター……?
ワニの上にアイコンのようなものが見える。そこには【ビッグアリゲーター】という名前も。
「ゲームの中なのか異世界なのか、はっきりしなさいよね……」
「ガァアアア!」
こちらの戸惑いなど意にも介さず、巨大ワニがその目一杯開いた顎でもって迫りくる。噛みつかれればどうなるかなんて考えたくもない。
「ええい、ままよ!」
ここがゲームの中と同じような法則で動く世界なのだとしたら、できることはあるはず。敢えてワニの方に自分から向かい、その噛みつきの真横を駆け抜ける。
空振った攻撃の隙を突くように攻撃しようとして、しかし、自分がなんの武器も持っていないことを思い出したが、何もしないよりはマシ!
「こんなところで死んで、たまるかぁああああああああ!」
徒手空拳、ステゴロ。つまりはただの単純な右ストレートを【ビッグアリゲーター】の頭部に叩き込む。硬い表皮に拳がめり込む感覚、貫く手応え。そして巨大ワニの頭部がものの見事にはじけ飛んだ。
「…………えっ」
一拍遅れて爆風のような衝撃波が発生し、川の水ごと巨大ワニの胴すらも薙ぎ払っていった。なにが起きたかもわからないまま、視界の端に《経験値入手》というメッセージウィンドウを確認する。
どうなっているのかまったくわからない。ただ殴っただけで相手が爆散することなんてある? ないわよねー。仮にゲームなのだとしても、そんなものは明らかにバランス崩壊のクソゲーだもの。
「えっと、ATKって今どうなってるっけ」
残念ながらゲーム内のようにステータスオープンとかはできないらしい。なんとかならないかと試行錯誤すること数分。
「ぜぇぜぇ……。やっと見れた……」
アタシの目には敵の名前が映っていた。ならば、どうするか。答えは簡単だ。要は、鏡に姿を映すように、川の水に映り込んだアタシ自身を見ればいいというわけ。我ながら天才過ぎ。
結果見事に、水面にステータス欄が確認できた。
「ちょっと、なによこれ」
アタシの今の姿は当たって欲しくない予想ではあったが、VRゲーム〈All You Need is SKILL〉を始める際のキャラクリエイトそのままだった。そしてその時に割り振ったスキルがあったはずだが、どういうわけかその全てが文字化けしていて読めない。ATKやDEFも数値の部分にノイズが走っている状態だ。
だが、たった一つだけ、発動していることを示す赤字でスキル名がステータス欄には記されていた。
「【MAXIMA】って……。“極振り” とでも言うつもり? ホントに意味わかんないわね」
たった一つの頼みの綱であるスキルが用途不明にナニカだったこの絶望感は言葉に表せない。とはいえ、ぼうっとしていたらまたモンスターに襲われる可能性もある。
アテなんてないが動かねばと、綺麗そうな川の水でのどを潤したアタシは再び荒野を行くのだった。
週一更新と言っておきながら、日が空いてしまいました(
またぼちぼち再開していくので、少しでも面白いと思ってもらえれば、★やブックマークでの応援よろしくお願いいたします!