ホームシック。
夕焼けの朱に染まる町。
僕の住む町。
その町の端っこにある坂道を歩いて下る。
仕事帰り。
ひとり。
書類の入った鞄をゆらゆらと揺らしながら。
長いながい坂道を下る。
ため息を吐きながら。
頭を垂れながら。
ひとり、坂道を下る。
ふと。
横を過ぎた風で顔を上げる。
いつかどこかで嗅いだことのある匂いの風。
…足を止め。
透明な記憶を手繰る。
視界のモニターに映る、いつかの映像。
──ああ…そうか。
実家の匂いに、ちょっとだけ似てるんだ。
朱色の空に浮かぶ、いつかの記憶が映るモニター。
ゆらゆらと、ぼやけて揺れる…
帰りたいな…
そう呟きながら。
帰りたい家とは違う家に、歩みを進める。
そんな孤独な、秋の夕刻時…