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雪の都に華が咲く〜転生したプロデューサーが異世界でアイドル育成を始めたら、チート級の暗殺者になりました  作者: 八万岬 海
03-Bridge

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048話-街を襲った悲劇

「床には……扉っぽいの無いな」

「ユキ……多分これ……」


 倉庫の一角に設置されていた小物を入れるための木箱がぽつんと置かれており、その蓋をアイナがゆっくりと開く。



「……あった」


 箱と思ってたそれを覗き込むと下へと降りる階段が隠されており、小さなランプの明かりが灯っていた。


「すいませーん! 無事な方は居ますかー! 助けにきましたー!」


 階段上から呼びかけてみるが下からの返事はない。誰も居ないのかと思ったのだが、アイナは「ちゃんと人の気配がする」という。


 俺は何度か声を張り上げ、そろそろ下へ降りて確かめようと思っていたら、何者かが階段下から覗いていることに気づいた。



「あっ、大丈夫? 怪我とかしてない?」


「……」


「俺たちは『荒野の星』っていう大道芸人一座です。この街での公演があってさっき辿り着いたのですがこの現状で……」


 そこまで言ったところで、階段下から覗いていた人物が姿を消した。


「……」


 中にいる子どもたちの様子がはっきりわからないので、焦らせるのも良くないと思い反応を気長に待つことにした。

 アイナは下へ降りたがっていたが、街がこういう状況なのだ。生き残っている人たちの気持ちを考えると、突撃するのは良く無いと思い、アイナの手を握り引き止める。


「動いてるね……」


 階段の下は真っ暗で見えないが、何人かがゴソゴソと動く音が微かに聴こえてくる。手にギュッと力を入れると、アイナが指を絡ませてきて恋人繋ぎになる。


(アイナはこの繋ぎ方好きだよな……恥ずかしいけど)


「ユキ……」


 アイナの手の感触に気を取られていたら、いつのまにか二人の人影が階段下に姿を見せていた。


「あ……だ、大丈夫?」


「……アーベルさんは?」


 危うく聞き逃してしまいそうな小さく掠れた声色だった。そして「アーベル」という名前も一瞬誰のことかわからなかったが、アイナが「座長は首都に居る」と直ぐに答えてくれた。


(そうだった、座長の名前だった……)


「とりあえずそっちに行っていいですか? こっちはメンバーのアイナ。他の人たちも今この街に向かってます」


「……」


 その人物はじっと押し黙ったままなにも発しない。だがこのままでは拉致が開かないので、アイナに下に降りてもらう事にした。


「すいません、アイナが一人でそっちに行ってもらいます!」


「あれ、ユキは?」


「俺はみんなを呼んでくる。座長のこと知っているみたいだし、俺よりアイナやみんなのほうが気を許してくれると思う」


「わかった、じゃあ事情だけ聞けたら聞いておくね」


 アイナに手を振り、俺は倉庫を後にする。

 そして噴水広場から大通りへと向かい、入り口の門がある方向へ向かいながら街の様子を観察する。


「……やっぱ魔獣じゃなくて人だよな…………」


 破壊されている家々の扉には、戦斧や剣が刺さっており足形も残されている。


(でもこんな、街一つを襲って全滅させるようなことってあるのか……?)


 実際この目で見ても信じられ無い。街一つを全滅させるなんて、一体どれだけの人数を揃える必要かあるのだろうか。

 至る所に転がっている遺体は男性や老人のものばかりだ。子供や若い女性のものは見当たらない。


(……胸糞悪い)


 腹から湧き上がるドス黒い感情を抑え、街全体に染み込んでしまったような死の香りを我慢しながらなんとか街の入り口まで戻った。



――――――――――――――――――――


「おーい!」


「ケレス!」


 俺が街の門から外へ出ると、馬に乗ったケレスが先頭に全員がちょうど街へたどり着いたところだった。


「ユキ、どうだった?」


「とりあえず生き残りは見つけたんだけど……」


 俺は歩きながら全員に状況を説明する。馬を先に街の中へ入れ、半分だけ開いた木製の門を完全に開き馬車を中へ入れる。破壊され尽くした惨状を目の当たりにしたエイミーやリーチェは真っ青な顔をしながらも俺の話を聞いてくれた。


「いま、アイナが事情を聞いてくれていると思う」


「状況はわかったわ」


 先頭を並んであるくケレスが乗った馬と、サイラスが操縦する馬車の馬の間を歩きながら一通り状況を説明した。

 リーチェが後ろにいるのでアイリスやハンナたちにはリーチェが説明してくれるだろう。

 


「ユキ、偵察ありがとうね」


 突然ケレスが腕を伸ばして俺の腰を掴む。そしてそのまま馬上へと引き上げケレスの前に座らされた。


「うわ……びっくりした……何につかまれたのかと思ったよ」


「えへへ、ごめんね。ほら、前見て。私が後ろから支えておくから」


 ケレスの魔技は自分と体の一部を巨大化させるものだと思っていたけれど、伸ばすこともできるらしい。


(どこまで伸びるんだろ……)




 背中に感じる胸の感触をなるべく意識しないようにして、ケレスを先頭に全員を例の広場まで案内する。


「ここなんだけど、馬車はちょっと離れたところに止めようか」


 もしこの街を襲った奴らが戻ってきて、あの隠し階段が見つかるとまずい。俺は噴水の反対側へ周り、何かの店だった軒先に馬と馬車を並べて停める。



「どうする? 私たちも行く?」


「うーん……中にどれぐらいの人がいるのかわからないんだけど、座長のこと知ってる感じだったんだ」


「前来たときかな……一年以上前なんだけど」


「馬車で寝てるクルジュナの護衛も欲しいから、ケレスとエイミー、ハンナとヘレス、一緒にきてくれる?」


 前回来たというケレスと戦うすべを持たないエイミーに同行をお願いをする。下から聞こえた声が子供のような気がしたので、一番若いハンナとヘレスにも行ってもらう事にした。



「リーチェとサイラスとアイリスはここで護衛お願いします」


「はーい」「任せときな」


「ユキ、気をつけてね」


「わかってる。リーチェ、俺たち以外の人が近づいてきたら連絡して」


「わかった!」


 リーチェに付近の警戒を頼み、ケレスを先頭に例の倉庫のような小屋へと向かう。

 もう少しで扉に手がかかるという所で、扉が勝手に開きケレスが一気に戦闘態勢になる。


 だが、そこから姿を現したのは剣を手にしたアイナだった。


「ユキ!」


「アイナ、大丈夫だった?」


 人の気配がしたので、念の為ここまで出てきてくれたようだ。


「やっぱり盗賊だったらしいんだけど……子供の説明だとちょっとよく分からなくて」


 耳が垂れてしまっているアイナが歩きながらも子供たちから聞いたことを説明してくれた。



 二日前、突然謎の集団の襲撃があったそうだ。たった三十人程度の集団で、街には衛兵や自警団も数多くいる。


 あっさりと片付く予定だったのだが……奴らは何度斬っても倒れず死ぬこともなく襲いかかってきたそうだ。



「それで、どんどんと相手の数が増えつづけたんだって」


「生き残ってたのは?」


「ほとんど子供とリーチェと同い年ぐらいの若い女の子。合計で二十人ちょっと。隠れろって避難させられてたらしい」


「ねー、アイナ。そいつらって人攫い?」


「わからない……下にいた子が言うには、若い女の子たちが次々と消されたって言ってた」


「消された?」


「なんか、奴らが持ってた袋に吸い込まれていったんだって」


「なにそれ……?」


 アイナも泣いている子から聞いただけだということなので要領を得ていないようだ。


 斬っても死なず、いつの間にか増えていた敵。そして、生きた人間を吸い込む袋。後者はなんらかの魔技か道具だろうが、街全体から女性たちを吸い込むとなると、かなりの容量だ。


 斬っても死なないというのは、俺の知識ではゾンビかと思ってしまうのだが……場合によってはこれも何かの魔技かもしれない。


(たとえばリーチェの幻影みたいな……)


 試したことはないが、たとえばアイナの幻影を何体も作れるのであれば魔技の可能性が高い。


(後で試してみよう……)


 俺たちはアイナの先導で、先程の箱に偽装された階段を下っていく。


「足元気を付けて、そこ崩れてるから」


 感覚的には地下二階ぐらいだろうか。思ったより深いその階段の先にあったのは教室ぐらいの広さの地下室。

 窓も明かりもない土が剥き出しの部屋の中央に小さな子供や女の子たちが身を寄せ合い座っていたのだった。


次回は明日8時頃の更新です!

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