天使の力。
彼女はニコっと笑ってこういった。
「あなたならそういうと思ってた」
それは本当に彼女が天使なのだと認識させるような微笑だった。
しかし、それもつかの間。
「じゃぁ、移すわね。あたしの力」
「え?」
「だって、今の状態じゃ君の体に力が宿ってることになっちゃう。
それじゃ、君の体を借りた意味がないでしょ?」
そうか、本来の俺は何の力も持っていない。
ってことは力だけでも俺に移さなくちゃいけないことになる。
「でも、移したら君が困るんじゃないのか?」
「ううん、それは大丈夫。
力だけはあなたが持っている事になるけど、
認識上では私が天使のままだってことには変わりはないわ。
あたしは完全な人間の体にならなくちゃいけない。
だから、認識上はよくても力だけは手放さなくちゃいけないの」
「そうか…」
十分この状況にも驚いてるのに、さらに難しいことになってきた。
でも…もう後戻りは出来ない。
「分かった。移してくれ」
「…ありがとう」
かすかにそれもつぶやくようにそういった彼女は、
俺の胸に手をかざした。
そして、それは呪文のように始まった。
『汝の魂よ…我に宿りし地の力…
百華によりここに集え…琥珀の太陽よ…今解放せよ、
そしてこの指先に…』
ゆっくりとつむぎだされる言葉とともに
少しずつ光のようなものが指先に集まり始める。
それは白とも青ともいえないような淡く美しい光だった。
『我に集いし力…今、封印せよ』
そして、その光は俺の胸へと入っていった。
「…もういいよ、動いても」
「あぁ、サンキュー」
なんだかすごく不思議な感じがした。
夢見心地とも違うようななんとも地に足が着かないような感じ。
でも、さっきの俺とは違う何かが俺の中にある。
「これで、その力は今俺の中になるのか?」
「うん、もうあたしには何の力もない。
ただの何もかもを失った天使。
でも、もういいの。
早く…早く行かなくちゃ行けないから」




