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13 ゴブリンを倒そう

 翌朝、俺達は同じ部屋で起きた。

 ……何を当たり前の事を言ってるんだと思うだろうが、女性と同じ部屋で一日泊まる、なんて事六百年前にも経験した事がなかったのだ。

 だからこそ、あえて言わせて欲しい。


 ……え? 六百年前の討伐隊にも女性はいただろって?

 勿論いたさ。”聖女”ゼルビアやエルフのイノーを筆頭に、討伐隊の四分の一程が女性だったさ。


 とはいえ考えてみて欲しい。

 当時討伐隊は何十人という人数で移動していた。

 そんな大所帯が街等に簡単に泊まれる筈がない。

 宿に泊まれる場合は女性優先にして男は野宿なんて事も多かったし、いざ魔王の城へ! なんて時も野宿でテントは男女別だったのだから、俺にはこんな機会なかったのである。


「お早う御座います。ユーグさん」

「おう、お早うさん」


 フィリノアと朝の挨拶を交わす。


「今日も依頼を受けるのかい?」

「はい。……暫くはここを拠点にするつもりですけど……どこか行きたいところがあるんですか?」


 行きたいところか。かつて俺達を集めた王国がどうなっているのかとか、魔王軍に襲われていた村や街がどうなっているのかというのは確かに気にはなる。

 ……が、先ずは金に余裕を持つ事と彼女を強くする事が目標だ。

 俺を扱う以上、そしてSランクの冒険者の様になりたいと言っている以上、彼女にもちゃんと強くなってもらわないとな。

 俺は首を横に振った。


「……いや、今は良いさ。フィリノアの予定を優先するよ」

「予定……まぁないんですが、兎に角依頼を受けて、ランクを上げたいですね」


 今の彼女のランクはD。下から二番目だ。

 これからもっと成長しなければならない。


「なら、俺が鍛えてあげようか?」

「良いんですか?」

「俺は君の武器だ。強くなりたいなら、俺が教えてあげられる事は全て教えてあげる……が、どうす「教えてください!」」


 おぉう。食い気味にきたな。

 そう言うなら、フィリノアのやる気を尊重しよう。


「俺は厳しいぞ? ――兎に角実戦だ。さぁ、依頼を受けに行こう」

「はい!!」


 俺達は朝食もそこそこに、早速依頼を受けにギルドに向かったのだった。






「――お早う御座います!」

「よう」


 受付嬢に、挨拶をする。


「あら、昨日来てた二人じゃない。……コホン、依頼を受けに来たんですか?」


 早くも二日で俺達に慣れたらしい受付嬢が、事務的な口調で尋ねてきた。


「はい。――これを」


 そう言って出した依頼書。そこに書かれているのは『洞窟に住むゴブリンの群れの討伐』だ。

 昨日から貼ってあった儘の依頼である。

 先日フィリノア達が受けたのはこれだったらしい。

 その後は其の儘失敗扱いになっていたらしく、その後誰も受ける者がいなかったのだろう。


「……ソロで、ですね?」


 受付嬢が確認の為にそう聞いてくる。


「はい」

「わかりました。……では規則ですので確認証を見せて頂けますか?」

「はい」


 昨日もそうだった様に、木で出来た確認証を提示する。


「はい。確認しました。……それでは宜しくお願いしますね。……二人とも、無理は禁物よ?」


 最後だけ、砕けた口調でそう忠告してくる。


「はい! 行ってきます!」

「行ってくるぜ」


 元気よくそう返して、俺達はギルドを後にしたのだった。







 ――――――――――――――――



 目的地である洞窟に向かっている最中、


「今回の相手はゴブリンだな」


 俺はフィリノアに担がれた状態で、口を開く。


「はい」

「ゴブリン自体は弱い。強力な個体もいるはいるが、Dランクに依頼が出される程度であればたかが知れているだろう。……恐らく、今回の相手は小規模の群れだ」


 流石に、洞窟内で百体とか数十体以上も確認出来たなら、Dランクではなくそれ以上のランクに依頼が向かうだろう。

 強力な個体……例えば”小鬼王(ゴブリン・キング)”や”魔術師ゴブリン(ゴブリン・ウィザード)”、”大型(ホブ)ゴブリン”等がいても同様だ。

 依頼されたその後の群れがどうなっているのかは情報がない為油断は出来ないが、ある程度の予想は出来る。


「問題は場所。閉鎖的な洞窟内での戦闘という事だ」


 フィリノアが「はい」と頷く。


「君の武器は大きい。閉鎖的な場所での戦闘には向かない。……だからこそ、良い鍛錬になる」


 洞窟の様な閉鎖的な場所では、自由に逃げる事も、回避する事も、攻撃する事も、防御する事も出来ない。

 そんな場所で俺を思いっきり振り回してしまえば、天井や壁にぶつかってしまい、隙が出来る。

 そしてその隙をつかれて、魔物に殺されるなんてのは良くある話だ。

 そういった場所だからこそ、『どうすればそんな場所上手く戦うか』という鍛錬になるのだ。

 その分油断すれば、直ぐ死に直結するのだが、ここでは言う必要もないだろう。

 フィリノアもわかっているだろうしな。


「……だが、一番重要な事がある」

「はい……なんですか?」

「……俺がまた、君に振られて嘔吐する可能性がある事だ」


 流石に君に吐しゃ物をかける訳にはいかないんだよ。

 朝食も食べたし、先程から若干揺らされ続けたのでその可能性が無い事も無いのである。……うっぷ。



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