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11 オークを倒そう

 俺にとって初めて――俺が装備になって、という意味だ――の依頼は、『高原に現れたオーク二体の討伐』である。


「――ユーグさんはオークと戦った事ありますか?」


 オークというのは、豚の顔をした二足歩行の魔物である。

 人間の子供と同程度と評されるゴブリンよりも頭が悪く、動きも鈍い。その分人の大人程もある巨躯から繰り出される攻撃は、警戒しなければいけない。

 頭が悪いこともあって、魔王軍は手軽な駒の一つとして、『町を破壊』させたり、『人を襲わせる』等の単純作業でオークを運用していた。

 それ故に、俺達魔王討伐隊は幾度となくオークとは戦った事があった。

 俺は頷く。


「勿論ある。……フィリノアはどうだ?」

「それなり……ですかね。パーティーを組んでいた時だったので、ソロでは初めてです」


 フィリノアはソロである事を心配しているんだろう。

 今までは仲間がいたが、これからは一人だ。……俺は人数に含まない。彼女の装備だからな。


「大丈夫だ。俺がついてる。アドバイス位は出来るから、俺の指示を聞いてくれ」


 戦えない、というのは何とも情けない。

 今直ぐ枷を外せたら、もっと彼女に恩を返せるのだが、俺はもう彼女の武器である。

 ならば自分に出来る事をやるだけだ。


「はい!」


 俺の言葉に、多少気を緩めたのか、フィリノアが笑みを浮かべて頷いた。


「じゃ、オークを見つけよう。話はそれからだ」

「はい!」






 ――――――――――――――――


 俺達が進んでいくと、高原が見えてきた。

 どうやら、ここがその場所の様だ。


「……いましたね。オーク」


 見ると、高原に伸びた道沿いに二体、オークが座り込んでいた。

 その傍には武器として使うのだろう、木で出来たこん棒が無造作に置かれている。

 どうやら道を塞いでいる様だ。

 だから依頼が来たのだろう。


「……随分とのんびりしてるな」

「オークの天敵が少ないからでしょうね」


 ……オークの天敵ってなんだ?

 余り聞いた事ないぞ。


「なぁ、オークの天敵ってなんだ?」


 素直に聞いてみる事にした。


「え、えっと……飛竜(ワイバーン)とか、ドラゴンとかでしょうか。豚と味が似てるらしくて……上空を飛びながら食べてるのを見たとかいう噂がありますよ」


 そうなのか。豚と似てるのか。

 進んで食いたいとは思わないが、興味はある……かも。


「――で、運悪く落ちてきた()()()()に当たって死んでしまうなんて事も、稀にあるそうです」


 何それ怖い。というか、食べカスに当たって死ぬとかどんな死に方だ。


「……取り敢えず、何方を先に倒しますか?」


 フィリノアの質問に、俺はオークを見る。

 どうやら向かって右の方が完全に寝てしまっている様だ。左のオークはうとつととしかかっているのか、ゆらゆら揺れている。ここだけ見れば、実に長閑な風景だ。


「左の起きている方だ。……出来るな?」

「はい!」

「良し! 彼等には悪いが、俺達の生活の為だ! 思いっきりやれ!」

「――はい!!」


 先手必勝と言わんばかりにフィリノアは俺を持ってオークに接近し、


「――はぁああああっ!!」


 思いっきり脳天目掛けて俺を振り上げた。


「――ガァ、アァァ!?」


 フィリノアが振り上げた俺――というか俺が磔にされている十字の金属棒は、オークの後頭部を削りながら、ポーンという効果音が鳴りそうな程に吹き飛ばした。


「アァ、アアアア、アアアアアア!!」


 良し、多分あれは死んだろう。

 次だ。


「フィリノア!」

「はい!」


 轟音で、今まで寝ていたオークが眼を覚ます。


「――ァ?」


 しかし、オークが周囲を確認するよりも、フィリノアの次の行動の方が早かった。


「たあぁぁぁぁッ!!」


 ブオン、と鈍い音を立てながら、フィリノアが俺を振り回す。


「ゴ、アァ!?」


 オークの脇腹に、一撃がヒットし、そこから血が噴き出して俺を汚す。

 きったねぇ!!


「――ガァ!!」


 慌ててオークは棍棒を持とうとするが、それよりもフィリノアの一撃で、今度こそオークは倒れた。


「ふぅ……だ、大丈夫ですか?」


 オークが死んだのを確認してから、フィリノアが俺の顔を覗き込む。


「問題ない。頑丈さだったら負けないさ」


 実際、俺の防御力はステータスを見る限り高い方だろう。

 ドラゴンと衝突したって勝つ自信がある。


「それよりも汚れるのがなぁ」

「あ、今拭きますね」


 フィリノアが、背に下げたバッグから手拭を取り出して俺の顔に付着した血や肉片を拭ってくれる。


「……【洗浄(ウォッシング)】とかの生活魔術が使えれば良いんですけど、生憎そういった魔術は覚えてないですし、魔術は苦手で……」


 俺の血を拭ってくれながらも、フィリノアが謝ってくる。

 別に謝らなくてもいいのにな。


「仕方ないさ。俺も余り得意じゃないし、誰にだって不得手はあるさ」

「ユーグさん、魔術が使えるんですか?」


 フィリノアが期待を込めた眼で見てくるが、残念ながらと俺は首を横に振った。


「枷のせいでね。……使えないんだ。魔術」

「そう、ですか。……早く枷を取る手段を見つけられる様に、頑張りましょう!!」


 うん、そうなると良いんだけどね。……どうやったら外れるんだろう、これ。

 火でもダメ、力もダメとなると……神様に祈るとか?

 絶対に嫌だけど。

 ……ダメ元でやってみるか? それで外れるなら安いもんだし。




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