06.
「はぁー戻ってきた戻ってきた!疲れたー!ただいま僕の可愛いお姫様たち?」
事務所である小さいアパートに帰ってきた途端、梓は奥の人形保管場所に吸い込まれるように入っていき、いつものようにドールに求婚している。
「梓、うるせぇぞ。ドア閉めろ」
「んぁ~?悠うるさーい!せっかくのプロポーズが台無しじゃんか」
ぶつくさ言いながらも梓は部屋から出てきた。ドアを閉めてまで話すつもりはなかったようだ。
「この少年、随分このネックレスに力借りてたんだね。全然起きないよ」
「んーそっすね。たたき起こしますか。」
「それはやめた方がいいな。強引なのは良くないよ、悠?」
お前が言うか、と心の中で思いつつドールの方を見る。相当雑に扱われてきたのか、体中の汚れも酷く、顔もひび割れている。よく見ると、指の間接がおかしな方向へ向いてしまっていた。
「あー、ほんと可哀想。早く綺麗にしてあげたいよ。怪我が治ったらきっとイケメンさんなんだろうな、ねぇ悠?」
「そうだな、梓。こいつ目ェ覚めたら呼んでやるから、ドールの整備に入っていいぞ」
「ほんと?!やったー!」
梓は、目をキラキラさせながらドールを慎重に抱き、奥の部屋へ入っていった。
「ねぇ、ティー。この子、もう息止まってたりしない?全然起きないよ?」
「死んではないと思うよ?清涙ちゃん。死んじゃってたら、ティー分かるもん。体温あるよ。」
そんなドールの会話を聞き流しながら、社長用にコーヒー、自分用に紅茶を入れてもう一度席に着く。
「ありがとう、悠。悠はコーヒーじゃなくていいのかい?」
「はは、社長何回言わすんですか。残念ながら苦いのが苦手なのは変わらないんすよ。そろそろガチで怒りますよ」
ごめんごめん、と笑う真司を少し悠は睨んだ。ご存知の通り、この歳になってもコーヒーが飲めないのは、悠のちょっとしたコンプレックスだった。
「う、うぅん…」
「おはよう。よく眠っていたようだね?」
小さなうめき声を上げながら少年が目を覚ました。
社長は普段、常にニコニコしているが、違反者の前だと途端に笑顔が無くなる。悠は、社長のことを1度だけ怒らせたことがある。二度と思い出したくない程、悠には刺激的な体験だった。
「ここは、どこだ。」
「どこだと思う?」
「お前は、誰だ。」
「誰だと思う?」
「僕のドールを、どこにやった。」
「さぁ、どこだろうね?」
言われたことを疑問形にしてそのまま返す社長は、恐ろしいほどの殺気を少年に放っているが、少年は気づいていない。きっと、たいした呪術者じゃなかったのだろう。
「君はね、悪いことをしてここに連れてこられたんだ。ドールは僕が預かっているよ。僕は伊調真司。違法カースドール使用者取締事務所の社長だよ。」
「違法、カースドール、使用者、取締事務所?」
一つ一つの単語を確かめるように口にする少年は、だんだんと青くなっていくのが肉眼でもわかるほどだった。
はなちゃんです。
次回は取り調べです。
少年、名前出てきます。
ちなみに、悠くんは少年が起きた、と梓に伝えるのを完全に忘れて、社長怖ー、とか思ってます。
その時の梓はドールの整備に夢中で、絶賛話しかけながら汚れを拭いたりしています。
「君はきっともっとイケメンになれるよ!安心して僕に拭かれてね…?」
男のドールでも安定の梓くん。




