14.
「さぁて始めようじゃないか。サイトウくん?」
「私の名前を呼んでいいのはご主人様だけです。気安く呼ぶんじゃねぇスーツ男。」
「スーツ男だなんて酷いなぁ。君もスーツじゃないか。僕は伊調真司だ。こっちは僕のドールのしおん。しーちゃんって呼んでもいいよ?」
「はっ。趣味の悪い名前だな。気持ち悪い。」
そう言われた途端、辺りの空気がビシッと凍りついたように感じた。
「気持ち悪い…だって?」
真司の笑顔が失せたと同時にしおんが動き出した。しかし、しおんが狙ったのはドールではなく、明らかにサイトウに向けて斬りかかっていた。
「ちょ、社長!主の方殺したら犯罪になる!
ったくこれだからドール溺愛者は!!」
悠は清涙と凛華の両方で真司を抑えにかかる。その隙にティーでサイトウのドールを燃やす。
「おぉ、怖い怖い。全く、ご主人様が帰ってくるまでに掃除が終わるだろうか。」
確実にしおんがサイトウを仕留めたと思った。が、いつの間にかサイトウは真司の後ろにいて、しおんの刃は空振りし、美しい模様の描かれている絨毯を斬り裂いた。
「!?
しーちゃ…」
真司がしおんの元に走り出す。しかし、真司の手がしおんに届いた瞬間、サイトウが滑らかに手を動かした。すると、真司の体は雷に打たれたように突然床に倒れ込んだ。しおんもそれに続き、真司の体に覆い被さるように倒れた。
「スーツ男は早く倒れてくれて助かった…。お前もこのスーツ男のように早く倒れてご主人様が帰ってくる前に消えろ。」
「はっ。んなわけあるかよ!!お前が消えろ!」
悠はサイトウからの挑発に乗ってはいるものの、頭の中は疑問でいっぱいだった。
悠よりもずっと強い真司が何故倒れている?
今までも真司がドールをバカにされ、容赦なく主に斬りかかったこともあった。が、僅かに残った理性で致命傷になるほどの傷を与えたことは無かった。
今回も本気で斬りかからなかったから油断した?
とにかく尊敬する社長がたおれたのだから、自分がやるしかない。
悠は困惑と怒りを身体の内側に隠し、余裕そうな表情でサイトウに向かってドールを飛ばす。
幸いなことに、こっちはドールが三体いる。あちらは一体。どう考えても有利なのはこちらのはずだ。あっちが技術面で強いならこっちは数で押し切るしかないだろう。
まず、サイトウのドールをティー、凛華で対応させ、清涙の氷でサイトウの動きを封じる。その隙にピアスを取る。
「おら、先行は譲ってやるぜ?かかってこいよ。」
「なんと汚らしい。不快だ。ご主人様の目に入ったらと考えると虫唾が走る。早く消えろ。」
サイトウは言うが早いかドールを操る。途端に悠は強い眩暈に襲われた。
「ぐっ…?!幻惑系か…?!」
「よくわかったな。俺の術で立ったままでいられるとは。褒めてやる。まぁその余裕もいつまで持つかは分からないぞ?」
悠が蹲っていてはドールを動かせない。それに、主の方に影響がある術は、ドールの使い手の中でも上級者しか使えない、とても高度な術。相当ドールの性能がいいか、サイトウがとても強いか…。恐らく後者だろう。悠よりも遥かに強い真司さえも倒れた相手に悠は勝てるのか。
「おらぁ!!こっちは物理なんだよ!お前ごと燃やしてやる!」
ティーの手のひらから炎が飛び出す。サイトウのスーツの先に火の粉が飛び、ジリジリとスーツが燃え始める。しかし、サイトウは全く慌てた様子を見せず、ハンカチで火の粉を払い落とした。
「野蛮だ。こういうのは早く消しておかないと社会的にも邪魔だ。」
また強い眩暈に襲われる。更に、凛華と清涙がサイトウのドールに蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられた。2体からガシャン、と嫌な音が聞こえ、動かなくなってしまった。
「清涙!凛華!あぁ、だめだ。」
悠はボロボロになった2体を部屋の隅にやり、ティーを構え直す。さぁ、1VS1だ。悠はサイトウの冷めた瞳を睨んだ。
はなちゃんです。
なんか最終章っぽくなってますが、全然違います。まだ続きます。
悠はサイトウさんに勝てるのでしょうか。
清涙と凛華は直るのか。
梓もきっとナイスリアクションをしてくれることでしょう。
真司くん。出オチっぽくてごめんね!!
そして今回書いてみて分かりました。私は戦闘シーンが苦手だ!!!勉強します。おかしな所があったらバンバン言ってください。
そして更に今回の挿絵ですが、サラッと描いている人が違います。下絵はにまちゃんですが、デジタル線画、色塗りは私はなちゃんがやっております!!雰囲気違いますがごめんなさい!!許して下さい!!
次回もお楽しみに。