13.
「なんか変なところだねぇ、悠」
「あぁ、そうだな。梓」
幸い、洋館の錆び付いた鍵は閉まってなかった。しかし、内装は外見と比べ、異常なほど綺麗でホコリひとつなかった。まるで、つい最近まで誰かが住んでいたような…。扉を開けると広いホールが広がっており、ホールの両端に階段があった。2階へ上がると、廊下が右と左の二つに分かれており、それぞれの廊下に4つの部屋があった。
「悠、二手に別れよう。僕はこっちの右の廊下の部屋を一通り見てくるから悠は左の廊下の部屋を確認してきて。梓は悠の方について行って。」
「「了解」」
悠はティーを操作し、1番手前の部屋のドアを開けた。悠はそっと部屋の中を除く。誰もいない。ティーを部屋の前に立たせておいて、次の部屋を見る。こんな調子で全ての部屋を見たが、どこの部屋にも人はいなかった。
「あれ~?誰もいないじゃんかよ。」
「社長の方に戻るか。3階はあったっけかな。」
「なかったんじゃない?じゃあティーちゃんが見たのってあっちの部屋にいるってことじゃん!」
「急がないと社長が…!」
ガシャン!
右の廊下の3番目の部屋から大きな破壊音が聞こえた。と同時に部屋の扉が勢いよく開き、真司のドール、しおんが吹き飛ばされたように出てきて、壁に叩きつけられた。
「しーちゃん!」
梓が顔面蒼白になりながら走り出す。
「梓!ダメだ!危ない!!」
梓は呪術者として完全ではない。呪力もまともに流せない梓がいま駆けつけたとしても、ほとんど意味を成さないどころか、足手まといになってしまう。
「梓!落ち着け!」
悠はドールも使いながら追いかけ、何とか梓を取り押さえた。しかし、梓は完全に理性を失っていて「しーちゃんが、あれが壊れていたら、しゃちょー、」とうわ言のように呟いている。悠は仕方ないと思い切り梓の頬を叩き怒鳴る。
「梓!社長だぞ!殺られるなんてヘマするわけないだろ!どうしたんだ!落ち着け!」
「あ…あぁ…しーちゃん…」
だめだ。仕方ない。
「ごめんな、梓。」
首に手刀を当てる。梓は意識を失い床に倒れ込んだ。凛華に梓を抱えさせ1階のホールに連れて行かせた。その間に悠と清涙は真司の元に駆ける。
「あぁごめんよしーちゃん…。あ、悠。ごめんよ、手伝ってくれるかい?少し手こずっていてね。」
「もちろんっす社長。」
真司がしおんをもう一度起動させ構えた。そして、そっと部屋に入った悠は清涙とティーを起動させた。そこに立っていた敵は25~30歳くらいの男で、きちっとした髪型にぴしりとしたスーツ。白い手袋を身につけた姿はまるで…
「執事…?」
「そうですよ。私はこの家の執事、サイトウです。全くご主人様がお出かけしている間にちまちまと…。面倒くさい限りだ。」
サイトウが使うドールは少女のドール。プロトタクトは耳に着いたピアス。悠は軽く笑い、挑発に乗るように言い返した。
「へぇ、そうかい。お前のご主人は随分とノロマだな?」
「…なんだと?」
「外の様子を見てみろよ。あぁ、それともお前が単純に庭の手入れを忘れていたのか?それだったら、お前は執事の仕事は辞めた方がいい。」
「黙っていればぺちゃくちゃと失礼なことを言ってくれますね。別に私のことはいいですが、ご主人様のことをノロマと言ったのは聞き捨てなりません」
サイトウは静かにドールを起こす。先程よりも強い光を放ったピアスは、サイトウの怒りをそのまま表しているようだ。
「お前もそこのスーツの男も、ご主人様が帰ってくる前に片付けておかないと。ご主人様の目にゴミが映るのは失礼にあたる。」
「その前に俺がぶっ飛ばす。」
窓の外では見たことも無いような美しく白い鳥が飛んでいるのが見えた。
はなちゃんです。
最後にでてきた鳥は以外に重要なので、この後全く出てきませんが忘れないでください。今回もにまちゃんから挿絵が届いたらまた載せますので…。載せたら活動報告の方で連絡します。
ちなみに勝斗は悠のお家でお留守番中です。訓練が終わるとすることが無いので家事に走っています。