12.
「今回の依頼は僕も行っちゃおっかなっ!」
「しゃちょーも行くんすかぁ?じゃあしーちゃんも整備っすね。」
2人きりの事務所で、真司と梓は話している。悠たちが帰った後にはもう日が暮れ、辺りは暗くなっていた。
「今回の依頼は厄介みたいだからね。悠たちだけには任せられない。それに、そろそろ‘‘あれ’’も限界でしょ?」
「あー、そっすね。多分、コードilはそろそろ。」
「悠はあんなに楽しそうにしていたけど、これを伝えるのはまだ早いかな。」
「遅くなれば遅くなるほど、ここのダメージは大きいっすよ。」
そう言いながら梓は自分の心臓を指差す。真司は悲しそうな顔をしながら頷いた。
✕✿T
「「「主!準備出来ました!」」」
「よし!行くか!」
戦闘服に着替えた3人をにっこりと笑いながら出迎え、指輪をはめ直す。悠はお気に入りのコートを肩にかけると、扉を開けた。
「おっ悠。おはよう!今日は僕もついて行っちゃうよ!」
「社長…。おはようございます。仕事は平気なんですか?」
「今日のために有給を取りました~。しーちゃんも整備してもらったから準備万端だよ!」
隣に立っているように見える可愛らしい少女は、真司のドールのしおん。もちろん意識はない。真司と手を繋いで立っているのは、真司が呪術を使っているからだろう。よく見れば、この間梓が凛華のために作ったドレスを着ていた。
「実はね、悠。今回の依頼はかなり厄介みたいなんだよ。だから!僕としーちゃんがお助けに来たってわけ!」
「一応僕もいるけどね」
真司の後ろから顔を出したのは梓。いつもなら凛華に会うと直ぐに出てきて口説きに行くのに、今日は何故か落ち着いている。
「よう、梓。今日はどうしたんだ?」
「おはよ、悠。どうしたって、何が?」
「凛華が見えてないのか…?」
「?
おはよう、悠のドールたち!今日も頑張って依頼こなしちゃってよ!」
おかしい。絶対に。悠は不思議に思いながら家の鍵を閉めた。
「依頼の場所はここら辺のはず…」
電車とバスを乗り継いで2時間程。着いた先には洋館。しかし明らかに人は住んでおらず、錆び付いた門に蜘蛛の巣の張った玄関が見えた。
「まぁ、いつも通りってとこっすかね。変な廃墟よりはまだいいっすよ。」
「主ぃ…。あそこ…」
恐る恐る悠の袖を引っ張ってきたティーは、洋館の2階の窓を指差す。悠はティーの指差す方向を見ると、誰かと目が合った気がした。しかし、すぐにその感覚は消え、なにかがいた証拠である揺れたカーテンだけが残っていた。
「ティー、何を見た?」
「黒い影が…目と思われる場所が一瞬光ったので、目を向けたらこちらを見ていました。」
「分かった。ありがとうティー。」
悠は落ち着かせるようにティーの頭をそっと撫でると真司の方を見た。
「うん。じゃあ入ろうか。悠、戦闘態勢」
「了解」
悠は指輪をぼんやりと光らせた。途端にドールたちの意識が無くなる。真司のドール、しおんも、武器である大きなナイフを構える。悠たちはギーッと大きな音を立てて開いた門の中に入っていった。
遅くなり申し訳ございません。はなちゃんです。
真司と梓の話していた「あれ」とは何なのか。洋館の中にいたのは、なんなのか。次回で全部分かります。嘘です「あれ」についてはもう少しお待ちください。次回は挿絵が入ります。真司+しーちゃんのキャラデザが分かるのでお楽しみに。
次回はもっと早く更新できるように頑張ります。(小声)